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第404話『死なないんだぜ?』by海弟

ここんとこサブタイが手抜きです。

その分本編に爆笑ネタが詰まっていると思って……読みましょう!

「……ついに、この時が来た。我等がレジスタンスでなく、王国軍という名を取り戻す時が……。傭兵のみなは、この国のためによく頑張ってくれた。これが君達にとって、良い経験になることを祈るよ」


息を吸い、再び口を開くリティ。

ここは月明かりが照らす城の城門近くだ。城が鏡に包まれてから……何日経っただろうか。

最近内容の濃い日々を送っているからな、忘れた。


「……では、作戦開始だ。見張りは配置につけ! あとの者は私に続け!」


ミラードームとでも言おうか、それに向かいリティが突っ込んでいく。

リティと鏡がぶつかる前に人が数人通れるぐらいの横幅の穴を鏡に開ける。そこから侵入していくリティ、あとに続くのは騎士達だろう。

一部の傭兵も……お、ノッグも行くのか。


「……ふむ、全員行ったな。アレンの姿は見えなかったが、リティのスカートの中とかに隠れてるんだろう」


そこまで人の視線を嫌ってはいないと思う、だが……こう妄想したほうが確実に面白い。


全員入ったのを確認し俺も中に入る。

松明の光がいくつか固まっているのが見える。先行していった奴等が城門目指して走っているのだろう。


「さて、と」


城にはゴツいならず者共がいるはずだ。

正直言って、騎士達に任せておけば大半は片付けられるだろう。


ならば俺は戦わなくても良いじゃないか、という結論に一度は辿り着いたわけだが――


「――突撃あるのみ、という何者かの囁きが俺には聞こえるんだ」


さて、どうする? そうか、うん。

突撃か。


「炎よ!」


小さな火の玉を目の前に出現させる。

通常の、普通の魔法使いならばこんなことは出来ないが、俺には出来る。


俺が前へ進めば一定感覚を保ち前に進むし、後ろへ戻れば後ろへ。

右へなら――と、まあこんな感じの超便利な火の玉だ。略して『超玉(スーパーボール)』でどうだ。


うーん、でも火もいれたいな。『超火玉(スーパーフレイムボール)』だな。

ファイアーじゃないのは俺のこだわりだ。フレイムのがカッコいいぜ。


「と、言うわけでだ。かなり出遅れた感があるが行くぞ『超火玉』!!」


やばい、口に出すと思ったより長いぞ『超火玉』。

何だか面倒だ。

次から『THT』と呼ぼう。あれ、何か表情に見えないかコレ。


「……ええい面倒だ。火の玉で良いじゃないか」


案外しっくりくるものだな。


城内に入ったのか、松明の明かりが全く見えなくなってしまった。

そう、俺は完全に出遅れた。


「……む、むぅ。こうなったら、壁を登るしか――」


城門は常に開いた状態で、その先にある門を睨みつける。

それも開かれているわけだが、隣の壁を見てほしい。


そう。登れないんだ。

梯子でもなければ石が積み上げられて出来たあの壁は登れないだろう。


「……ちっ、しょうがないな」


扉から中に入ることにする。

まず出迎えてくれたのは数人のごろつきの死体。偶然出くわしたのだろう、手には割れた酒瓶を持っている。

武器の類は見当たらなかった。


城内は薄暗いので、敵の存在に気づかずに背後からガバッ、とやられてしまったのかも知れない。

情けないぜ。


「ま、不意打ちは成功らしいし。俺も一安心だ」


城内の地形はすべて把握している。

入ってすぐは広間になっていて、右側の部屋の扉を開いた先に上へ(のぼ)るための階段があるのだ。

一階に人の気配はないし、そのまま二階へ向かっても大丈夫だろう。


先に行った奴等が開いたのか、広間を先へ進んでいったところにある左側の扉と右側の扉。両方開けられていた。


「うん? リティは犯罪者共を一掃する気なのか?」


こちらも流す血が多くなりそうだ。


左側の扉はスルーし右側の扉から部屋の中に入る。

それほど大きな部屋ではないが部屋の奥に螺旋階段がある。

ここから一気に一番上の部屋まで行けるらしい。


……うーん、俺が城から出る時は遠回りして城から出てきたわけか。

近道しなかったから見つからなかったのだろうか。だとすれば敵も相当間抜けだな。


「こりゃあ親玉のところまで一気に行けそうだ」


他の奴は一階一階地道に攻めているのだろうが、リティは違うだろう。

アイツなら最上階にボスがいると狙いをつけて……攻めるに決まっている。


「俺も行くとしますかぁ!!」






ゼェゼェハァハァ、なんていう暑苦しい声が近くから聞こえてきます。

さて、誰のものでしょう。


一番、俺。二番、俺。三番、俺。

正解は俺でした。


「そりゃあ近くから、聞こえる、よな……」


脳内に酸素を送れー。


螺旋階段が思ったより続き、最上階まで来るのにスタミナのほとんどを使ってしまった。

こういうところで戦闘するRPGの主人公とかは馬鹿じゃないの? と今すっごく言いたい。


「と、兎に角だ。この扉を開けばボスとのご対面だ」


ん? 扉が閉まっている? リティは来ていなかったのか?

まさか、仇がいるのに仇を討たない奴が何処にいるというのだ。


少し思考しつつ、息を整えていると背後から足音が聞こえてくる。

敵か? と思い後ろを向いたがどうやら違うらしい。顔に見覚えがあった。


『っ、海弟か! 敵かと思ったんだが……』

「俺は最初からお前だとわかっていたがな。それよりも、だ。お前一人か?」

『人手が余ってな。姫様の手伝いでも――と。余計だったかな?』

「さぁな。ここにリティが来ているかどうかすらわからないし。ほら、扉が閉まっているだろ」


背後を指差す。


『では、我々が先へ行くか?』


それは不味いだろう、とは思ったもののリティの悔しそうな顔は見たいので行ってみようか。

仇? はっは、知った上で行くのだよ。


仇の仇は仇です、と言うじゃないか。つまりはごちゃごちゃなので考えない、と言う意味だ。


ノッグの実力は知らないが、二人いれば死ぬことはないだろう。

そんな思考とともに、扉を開く。


やはり、と言うべきか薄暗かった。

ここだけは明かりがあってもおかしくはないのだが……何かがおかしい。


一歩、二歩と中へ入っていく。


「……親玉はいなかった、のか?」

『普通はいそうなのだが――ッ!!』


素早くノッグが動く、その先――何かが光るのが見えた。

それは俺へと近づいてくる、間に合わないか――ッ!


目を瞑ることはしなかった、だからこそ……最悪なものを見てしまった。


白いタイルだろうか、それが敷かれた床へ赤い液状のものが広がっていく。

俺の……血。違う、痛みがない。


床から視線を上へと動かしていく。


……ッ。


「ば、馬鹿野郎ッ!! 何で庇った!」


ノッグが、避けようともせず俺の目の前に立っていた。

こんな展開はお望みじゃないんだけどな……やってくれたな。


『……ちっ、戦いに慣れてないなら、先に言え』


こちらを見て言うノッグ。

慣れていない? まさか、俺が――


「気配は消したんだけど、おかしいな」


声が聞こえる。

平坦と、のっぺりとした……冷静な声音。

ある意味では狂気そのものだ。


その声のおかげか、俺も冷静さを取り戻しノッグの体をもう一度確認する。

鳩尾辺りから剣が貫通していた。背中から見える剣の先端が少し動き――引き抜かれる。


苦しそうな声とともにノッグが倒れる。


「……あ、終わりか」


ノッグで隠れていたのだろう。青年だ。

派手な……ピエロのような衣装に身を包んだ青年。俺と比べれば少し年上だろうか。


「……何でバレたんだと思う?」


男が聞いてくる。


「お前が弱いからだ」


即答する。


「でも、君は気づかなかったよね? だから違う理由だと思うんだ。一度、倒れてるコイツと会った事があるんじゃないかなぁ、って。だから、気配を断っててもバレたんだと思うんだよ」

「……一度、会ったから?」

「そ、一度目は効くけど二度目は効かないってのはこういうのが原因だと思うんだよね。慣れ、みたいなものかな」


気配に慣れた、そう言いたいのか?

意味はわからないが、気配という単語を持ってこられたのなら俺の負けだ。


俺は気配を探るのが不得意だからな。


……ま、今は関係無いか。


「あ、こいつ治すの? 良いけど、そんな余裕あるの?」

「ある。『鏡』」


俺とノッグの周りにドーム状の鏡を出現させる。

攻撃はすべて跳ね返る、だから――


「効かない?」

「な――」

「遅いッ!」


細身の剣が俺へ向け突き出される。

コイツは強い。俺が認める。


俺以外の誰がここで認めるのだ。いないだろう?


「やっぱりお前だったか!」

「あ、バレて――ッ!」


気づかれたか。


横へ飛ぶ男。

男の居た場所の床にボコリと穴が開く。


視界を動かし敵の動きを確認する。

鏡のドーム内には……いない。


「ノッグ、悪いが治癒は後になりそうだ。あとリティ、呼びづらいからお茶と呼ばせてもらうぞ!」


鏡を消し広間の四隅に大きな炎を出現させる。

これで広間全体を見ることが出来る。


「視界を確保しても、だめ」


背後――ッ!


抜刀すると同時に背後にいるであろう敵に斬りかかる。

寸前に、悪寒がよぎる。


「しま――」

「逆だよ」


……ったく、無茶するんじゃなかったな。

正攻法じゃあ全く力が出ないし。


しかも死亡? はっは、冗談じゃあない。

ああ、でも……どうしよ。間に合わないな。


「待ていッ!!」


その瞬間、声が響く。俺のじゃない。男のでもない。

しかし剣は止まらない。数センチまで迫る。


……心臓を突かれたら人は死ぬの?

答えはNOだ。


血が吹き出る、今度こそ俺からだ。

だが――それと同時に男が吹っ飛ぶ。


俺が蹴った。


「俺は生きるぞ。心臓を突かれようが、首を斬られようが!」

「心臓の位置は逆だ」


……ん?

誰だ、俺の台詞を遮ったのは!!


そちらを向けばお茶さんじゃないですか。後ろにアレン君もいる。

と、言う事は……えっと。


「下で肩慣らしをしてきたんだ。さて、二人の負傷者を出してしまったな」

「今すぐゼロにするから待ってろ」


自分の体から剣を引き抜き治癒を開始する。

うん、数分掛かるねコレは。


「待てよ? 『鏡』」


魔力を与えた鏡を出現させる。

それを俺を囲むように配置して……鏡を使った重複回復始め!

完治!


使った鏡の数……八枚。

治癒の魔法を使った秒数……一秒。


「……俺の治癒は更なるパワーアップをしたのだった。おっと、ノッグ待ってろ。死んでようが地獄から引っ張ってきてやるぞ」


ちらりとお茶のほうを見る。

俺達のほうなんて見ていなかった。視線は男、あのピエロのような青年に向けられている。


「……はぁ、脇役プレイで強さは手に入れられるのか?」


その疑問は虚しいな。

うん、考えるのはやめよう。治癒だ、回復役だ。ヒーラーだ。

……はぁ。

ノッグ死亡。


……すみません、嘘です。


さて、ボス戦です。中ボス戦か。

まあどちらにせよ、少し伏線を回収しておかないと……。


海弟のミラードームに何故遮られなかったのか……謎ですねぇ。

……え? 何でそんなことが出来たか、なんて考えてあるわけないでしょう。

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