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第403話『ああ、帰りたくない』by海弟

眠い。

すべてを投げ出し走り出す……そんな十七の夜……。


やばい、帰ってからが恐ろしい。


町の酒場……と、言っても簡素なもので。木製の……一日もあれば出来そうな小さな酒場だ。

バーテンも一人だけで、酒の種類も少ない。


そこに俺達三人は集まった。

アレン君も、珍しくお茶の隣に座っていた。


「……海弟、お前に話しておきたいことがある」


ぐたり、と机に倒れこんでいるとお茶が言う。


顔だけを動かしお茶の方を見る。飲んでいるのは……酒だろう。

未成年だろうに、酒ばっかり飲んでちゃダメだぞ。


いや、俺のことじゃないので声には出さないが。


「城を取り戻してからの話だ。私は――復讐のために一度城を離れる。捕まっている人達の中には大臣もいるからな、一時的に任せるつもりだ」

「ほお、復讐ねぇ。大元を倒すってことか?」


コイツの父さんと母さんは現在城の王座でふんぞり返っている犯罪者の野郎に殺されたと聞いた。

一人は暗殺、一人は人海戦術の戦争に敗れ……確かにお茶には仇討ちをするだけの理由がある。


そして、その犯罪者を雇ったのが……エシヴァンという国の王。

圧倒的な戦力を保有する国で、シアホイルも大国ながら……それを上回る土地をこの大陸で保有しているらしい。


その王――名前や性格、容姿すら俺は知らない。

だが、そいつをお茶は殺すのだと言う。アレンは当然お茶に付いていくのだろう。


「お前は、強さを探していると言っていたな。ならば、私と一緒に来ない方が良い。私が今から……いや、復讐のために使う力は正しい力ではないのだから」


クソ真面目な表情で俺に告げるお茶。

ここは頷いてやりたい気もするが――俺の求めているのは力ではない。


「俺が欲しいのは正しさじゃないさ。名声でもないし、富でもない。一色に染まった……強さだ。正しい強さとか、間違った強さとか。関係ないんだ」


間違っているのなら正せば良い。

正しいのなら突き進めば良い。それだけの話なのだ。


青空との約束も、これ以上破る気にはならないし。

……も、燃やしたのは予想外ということで。うん、許してくれるはずだ。


一人で戸惑っているとお茶が席を立つ。


何をするのかと見ていると、急に着ている服を脱ぎだすお茶。

頬が赤く染まっている。


「っ、姫様!!」


必死にアレン君が止める――が、うっとうしそうに手を振るという。


「あつい。どけアレン、女の裸を見せてやるぅ!」


バーテンさんが困っているぞ、お茶。

とりあえず鼻の下が伸びていることは描写しないでおいてやろう。はっは、俺は優しいな。


「まあ、俺からも一言言わせてもらおう――」

「んぁ?」

「ボロ小屋で暴れるな」


椅子に座ったままお茶を蹴り飛ばす。

後ろにいたアレンごと酒場の壁に吹っ飛んでいくお茶。壁に衝突し、壁をぶち壊すと外へと転がっていく。

その衝撃かは知らないが軋むような音とともに斜めに傾いていく酒場……小さいが大丈夫だろうと侮っていたな。


バシャーンッ!!


外からそんな音が聞こえてきた気がするが、俺は忙しいのだ。

とりあえず、反対側も同じように穴を開ければバランスが取れるかも知れない。


そう思い剣を抜き反対側の壁に斬りかかる。

次の瞬間、大きな穴が木製の……薄っぺらい壁に出来る。


ちょっと穴が大きすぎてバランスが取れていない。逆の壁も壊さなければ。

既に少し壊れている壁のところまで短い距離だが走ると、剣で斬りかかる――のをやめて穴から非難する。


グッバイバーテン。


ズシャァァンッ!!


背後から聞こえてくる音とともに地面を揺らす衝撃が走る。

間一髪だったな。





ぽたぽたと、道路に落ちる水滴を眺めつつ前にいるお茶のあとを付いていく。

どうやら川に落ちて酔いが冷めたらしい。醒めた、か。お茶お茶と呼んでいたから間違えてしまった。


「んで、どこに向かっているんだ、スケスケお茶」

「服が透けているからとそう言うな。くっ、何でこう……好奇の視線に私が耐えねばならないのだ」


俺のほうを睨むお茶。

異世界では友人にはこういう挨拶をするのです、と言って逃れることが出来るだろうか。


異世界に興味あるらしいし……。


「ところで、海弟……。お前は、本当にそれで良いのか?」


表情を和らげて俺に言うお茶。

あの話の続きだろう。アレンはいないのだが、仕切りなおしということだろう。


周囲には少ないながらも人がいる。

こんな揉め事を広めたくはないのだが、コイツは気にしないらしいので俺も気にしないことにしよう。


「ああ、例え間違った真実だろうと。それに強さがあるのなら、ホンモノの真実に出来るものさ」

「強さそのものが間違っていると、そうは思わないのか?」

「それは俺が判断することだ。他人の目は気にしないさ」


誇れるものなら光だろうと闇だろうと、俺が担いでやる。

世界の支配者だろうと、魔神だろうと、その望みを背負ってやるのが俺だ。


今もいろんなものを背負っているから手っ取り早く強さを手に入れなきゃならないんだ。

えり好みは出来ないさ。


「……いい加減なんだな」

「寛容と言ってくれ」

「ふ、仲間を川に落とすような奴が寛容なものか」


まだ会って間もないと思うんだけどな。

アレか、運命とか信じちゃうタイプか?


「酒を飲むなら酔わない程度にしろ、ってことだよ」


あ、もうデマ言うの無理っぽいな。


「そういや、何もしてこなかったな」

「何だ、何かしてほしかったのか」


むっ、とした表情になるお茶。

お、怒らせたか……?


「男として情けない答えをするのだな」

「そりゃあ、紳士ですから」

「……少しは自分に自信を持って方が良いぞ」


コレ以上自信はいらないだろ。


「意思と心は別物だ」

「どうしてわかる」

「私には、私の母から受け継いだ……特殊な力があるからな、わかるんだよ」


そういえば、あるとか言う話だったな。

確か予知能力……コイツには自分の未来が見えているのか。


……ん、待てよ?


「お前、予知が出来たんなら母親の暗殺のこととか――」

「言うな。……この話は、城を取り戻してからにしてほしい。少し休んだら攻めるぞ、作戦は伝えた通りだ」

「あ、ああ」


確か、出入り口の一つを解放し、そこに戦力の半分を投入する……だったか。

残りの半分と俺達は城の中を攻略していく、という作戦だ。酒を飲む前のお茶から聞いた。


何だかやる気が起きないな。


歩みを止めてお茶の背中を眺める。

この世界に来て、気になることだらけだ。いつも外道を突き進んできた俺だからこそ、こんな展開はお望みのそれじゃないんだよな。

問題を問題と捉えずぶっ壊し、助けられるものを踏み潰し、俺のためだけに進んで行く。


「……はぁ、難しいものだ」


もうこうなったら城ごと仇とやらをぶっ壊しに行ってやろうか……。

ダメだな、それじゃあダメなんだよ。俺の、俺だけの……強さが欲しいんだ。


望むのなら進まなきゃいけない。


「……自分の強さ、お茶の仇、青空との約束。どーするんだ、俺は」


ったく、全然楽しくない。

全力をぶつけられる相手――これを探すってのも、加えといても良いかもしれないな。


ちらりと視線をめぐらせ、路地裏の一つに視界を固定する。


「……案外、近くにいるのかも知れないが」


おっと、お茶に置いていかれそうだ。


こっちの世界の海弟はマジメっぽいですねぇ。

ボケれるところはボケてますが……。無意識のとこもあるのが海弟なのですがね。

HAHAHA、作者にとっては案外どうでもいいことなのでスルーだぜ☆


ま、こっち書いているほうが楽しいというね。ファンタジーしたい季節です。


さて、自分から一つお知らせがあります。

現在寒い季節ですね。一応言っておくと冬です。寒いです。


……一言にまとめるとですね。

家の中は暖かいので活動報告にも書かずに寝ちゃう可能性大です。

ってことです。


外側より内側ですよね☆ というわけで、一息ついた瞬間に襲ってくる睡魔に作者は勝てないです。誰か必勝法を教えてください。

ヘルプミー。


さて、おやすみなさい。

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