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第398話演説と安心の入学

ブルーベリーのガムが好きな作者です。

俺は思うわけだ。

快適なベッドとは人の安心出来る空間そのものだと。


「と、言うわけで図画工作を始めます」

『せんせー、何がと、言うわけなのです――』

「材料は盗――もらって来たので一人一つ作りましょう。勿論、先生も作ります」

『せんせー、無視ですか!? 生徒の意見を無視ですか!?』

「はいっ、先生は教育方針を変えるつもりはありません。それじゃあ開始ー!」


ほら、見るが良い。

このクラスの……誰が不満を持ってそうな表情をしていると言うのだ。

そう、呆れているんだ! 不満を持っている生徒なんて一人もいいのさ。


「さて、手順は……適当でオーケー」


俺も知らないので教えようがありません。


目の前の材木と釘、更に金槌に目をやり一つ頷くとポケットの中にある鏡に手をかける。


「いやぁ、イメージを現実に反映できるって素晴らしい」


さて、最高傑作を作ろうじゃないか。


材料を全部鏡の中に入れ終わるとイメージする。

そう、完成したベッドの姿を。


俺の思ったとおりに鏡の中で動く材料達。金槌などなくとも釘は刺さるし触れずとも勝手に吸い寄せられ必要な部分に材料が宛がわれる。


ほんの数十秒で完成するベッドを見て一つ頷くと現実に引き出そうと鏡に触れるが……少し考えやめる。


生徒の駄作を引き立て役に抜擢してやろう。

はっはっは、完璧な作戦!


「さて、暇だな」


現在作成中の生徒に目を向ける。

やはり、と言うべきか小さすぎる物や大きすぎる物ばかりで統一されていないベッドが多い。


……うん、自己流を極めろ! 俺は口を挟まないぜ!


にしても暇だ。

……そうだな、今朝のことでも思い出していようか。





包囲は完璧、と言うか完全だ。

出ようにも全方向に鏡で出来た壁があれば出ることができない。

地下から出る? はっはっは、この鏡で出来た結界は地下へ貫通しているんだぜ?


つまり地下通路も使えない。何をしようとも攻撃は反射するしで相手はじわじわダメージを受けていくのだ。

まあ相手は王を殺したとか聞いているし、そこまでやる奴に精神的なダメージはあまり期待できないのだが……現状において相手は逆転の方法を持たない。


……そこまで考え顔を上げる。

石製の水を枯らした噴水があった。

少し湿っている部分もあるが水源が止められて……ん?


足元に道路と違和感がないように蓋のされた部分が見える。

そこを開くと蛇口のような物があった。


俺の来た方向から噴水の方へ向かう水道管……だろうか。それに似た物がある。


「ほう、これが止められているんだな」


これからお茶の晴れ舞台なんだからな、これぐらいの華やかさがあっていいだろう。

水の止められた噴水というのもアレだ。


蛇口を回していく……が、水は一向に出ない。

回す方向が逆なのだろうか? と逆に思いっきり回してみるも出ない。


「……ん? 水源が枯れて――」


ずっと、水源があるだろう方向を眺める。


城があった。俺の鏡に包囲された城が。


「……はは、鏡は地下を貫通しております」


うん、水道管まで遮っちゃったんだな。

そのせいで水が出ていない……と。


お茶に怒られるな、これは。


「……リティ様と呼ぼう。気分の良い時に言えばきっと許してくれるはず――」


安直だがそれで良い。


その時、水のない噴水のせいで反対側がよく見えるわけだが、その方向から鮮やかな服を着て剣を持った女性とそれを守る形で走る男性が見えた。


「来たか。というか、何で剣を持ってるんだ? 傭兵共は何をやっているんだ」


囮というか、ここまで連れてくるのはアイツ等の役目だろうに。

ちなみに太陽の光に反射し、赤く光る剣が見えたのは気のせいだろう。


俺も反対側に回り二人を待つ。

欠伸を我慢しつつ、しばらく待つとリティ様とアレンがにこやかに軽快なステップで俺の元へ辿り着く。


「……何か怖いんだが……」

「いや、何……赤いドレスを着ていてよかったな、と思っただけだ。お前に怖がられるのも嫌だしな」


剣が赤く光ったのは気のせいだ。決して、人を斬ったわけじゃあ無いんだ。

きっとアレだよ。夕陽……朝日だけども、それが赤いのさ。異世界の太陽は真っ赤な光で照らすんだなぁ。


剣以外は何で赤くないんだろうね。うん、全く謎だよ。


「長々と話をしている暇は無いぞ。そろそろ、足音が聞こえてきた……」


チラリとリティ様が後ろを向く。


俺も気づかなかったのだが、数人を鎧などを着込んだ先頭に、間を空けて暖かそうな服を着た奴等が何十……何百もの大軍を作りこちらへ向かってくる。


「……こうして、足の速い傭兵だけが生き残ったのである」

「う、うん……数人にこうも群がるとは予想外だ」

「……姫様、向こう側からも」


何!? と、後ろを向けばそちらからも何百もの似たような奴等が走ってくる。


「はっはっは、これは……貴重な体験が出来るな」

「笑ってる場合じゃあないだろリティ様」

「……様?」


気にするな。アレだ、謝る伏線だ。

と、そろそろ離れてないと危ないな。アレンには離れるように言っても無駄だろうし……リティ様を守る奴が一人もいなくなったら危ないんはリティ様なのだ。


リティ様と言うのも疲れてきたな。しょうがない、お茶様と呼ぼう。


「どちらも変わらない気もするがな。それじゃあ演説聞いてるぜ、頑張れよ!」


路地裏目指し走る。

返事は無かった、が待ってくれと言うような奴じゃあないことはわかる。


路地裏に入ると入り口に人がジャンプしても届きそうにない高さの鏡を作り進入禁止区域を作る。

声は……上からも届くしアイツの持っている鏡からも聞こえてくるだろう。


「ふっ、どう(なび)くかな……。まあ従わないのなら脅すが」





ちょうど水の出る辺りだろうか、面積の狭いそこに立つリティ。

ちなみにアレンのいる、噴水から一番近い場所である隣からもパンツは見えないので安全面は確保されている。

防御力は一万人集まった一般人の攻撃力よりも高い。


「狭いからな、高いところへ立ちたい」

「……行動してから言わなくても」

「お前は反対するだろ――いや、お前も男の子だからな。少し期待したのだろう。うむ、見せんぞ」

「そうですか」


扱いに慣れているアレンはそれだけ言うと、迫ってくる両方の軍団を睨む。


「もう一分もしないうちに流れ込んできます」

「楽しみだな。演説の内容は考えていないが」

「……姫様には才能があります。成功しますよ」

「お世辞なら言わなくてもいいのだぞ? と、一分もないが内容でも考えるか」


ブツブツと単語を呟くリティを一瞥すると、アレンは頭の中でカウントする。

そのカウントの秒数が十を切ったときにリティに警戒するように伝える。


傭兵達はと言うと、それぞれ手馴れた様子で人ごみに紛れ――というか転び、人々に踏まれていく。

その踏んだ人々こと反乱軍っぽいのはと言うと、今まさに自分と大軍がぶつかろうとしているのだ。

訓練された兵士でもなければ突っ込もうなんてことは思わないだろう。自然にスピードは緩まっていき……自然と広場に広がっていく。


リティのいる噴水はと言うと、余波か何かでドレスの端がひらひらと舞っているがパンツがチラっとなる様子は今のところ無い。


群集が落ち着いてきた頃、リティは叫ぶ。

アレンのおかげか、噴水へ近づく者はいなかったが全員がリティを見ていたのは間違えないだろう。


「聞けッ! 貴様等は愚民と呼ぶに相応しい、そんな愚かな人々だ」


一喝すると、そこ場から一歩も動かずに身振りはせず、手振りだけ……演劇でもしているかのよう胸に両手を乗せ目を瞑る。

その姿は悲劇のヒロインのようだった……ちょうど雲で隠れたのか光が遮られなおさら人々はそう見えたに違いない。


「私は、今……本当に呆れているよ。エシヴァンは滅びる。私が滅ぼす、なのに……何故この国の人々はエシヴァンに味方するのか? と、疑問に思う」


その言葉からは自信ではなく、怒りが感じられた。

心に沈んだ感情を一つ一つ引き上げるかのように続きを呟く。


「私の父親も、母親も……今、城に篭っている奴に殺された。一方は暗殺、一方は戦争で。仇が討ちたいんだ、その為の第一歩……親孝行を手伝って欲しいんだ」


リティ以外に音を立てる者はいない。

すっ、と空を指差すリティ。


「私を罵りたいのなら罵れ! 殺したいのならば殺せ! 拉致したいのならすれば良い。

けれども、それをする事によって、自分の価値が下がることを知れ!

私を罵れば私は貴様等を罵るし、私が殺されそうになれば反撃しよう、私を拉致しようものなら逆に監禁してやろう。

それで良いのなら、この状況が良いのなら! このまま犯罪者の仲間になっているが良い、私は貴様等の都合など無視するぞ。

私は、犯罪を犯す貴様等を無慈悲に"断罪"しよう。あくまで、この国の人間として!」


こほんっ、と咳を一度すると剣を引き抜く。

雲が晴れ……光が差す。


それを剣が反射し、血塗られた表面が露になる。


「……姫様」


アレンが声を掛ける。


「ん? 何だ」

「……いえ、手入れは大切です」


剣をチラリと見てから言う。


「そうか? 化粧とかは苦手なのだ。今日も逃げる時に付いてきた侍女に薄く化粧をしてもらっただけだし」


ぷいっ、と顔を背けるアレン。コレ以上の会話は不要と思ったのだろう。


「ほお、遮る必要ないじゃないか。意外に収まるものなんだな」


声が響く。そちらを向けば不敵な笑みを浮かべる少年がいた。人々から離れた場所にいる少年にリティは手を振るが――無視される。

むっ、としたが彼は彼なりに考えているのだろう……と思い気を落ち着ける。


「"虐殺"なら手伝う、って言いに来ただけだぞ?」

「"虐殺"ではない。"断罪"だ、それも大規模な」

「はっはっは、それじゃあ俺は効率を考えて火の準備でもしておこうかな」


穏やかな雰囲気が場に流れる。

しかしそれは一瞬のことだった。


『と、言うか。このままじゃあお前達はそこで笑っている二人に殺されることになるんだぞ?』


全員がそちらを見る。一人の傭兵が立っていた。

場に流れる沈黙、それを作った本人はと言うと萎縮している。


次の瞬間、全員が土下座した。


「文化の壁って意外と薄いんだなぁ。この場合許さないのが適切な判断か? ここは広いし暴れられるぞ」

「許すのが適切だ。顔をあげてくれ。私を、私の意見を肯定してくれてありがとう。何も、罰を無くすことはできないが……少しでも軽くしよう。今の私には君達が必要だ」





うん、朝から強烈な土下座を見たから眠気スッキリなんだよな。

もう昼だがまだ土下座おメメスッキリ効果は続いている。


『せんせー、出来ましたっ!』

「誰が椅子を作れと言ったよ。それも足が長いぞ、オイ」


長さを間違えたんだな、うん……許せる範囲だ。


『せんせー、出来ましたっ!』

「お、コレはもうベッドじゃないな。別の芸術だ」


思いっきり剣です。


『せんせー、出来ましたっ!』

「うん? これは踏みつければいいのかな?」


ただの木屑じゃないか。


俺も悪いが生徒も悪い。そんな楽しい学校にあなたも来ませんか?

入学費は向こうの世界の千の書かれた紙一枚でオーケーです。


もちろん、交通費は自費負担です。




……さて、もう放課でいいか。


注意、この学校には美男美女しか入学できま――


そんな学校はありません。



それと、アンケートにご協力してくださーい。

その価値に値しない小説だ? はっは、脳内妄想(無限のお花畑)でカバーは常識だろう?


ああ、それと年が明けましたね。この小説的にはどうでも良い作者です。

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