第396話『全員が頑張れば良い。俺以外の』by海弟
久々にサブタイで外道的台詞を吐く海弟。
「今日は足腰が痛いんだよ。ついでに喉も」
ギルド内部、お茶と一緒にお茶を飲んだり……ええい、今日だけリティと呼んでやろう。
リティと一緒に優雅にお茶を飲みながら愚痴を吐いたりしている。
「うん、それはお前が悪い」
「そうか? そうだな、楽しかったからいいじゃないか」
「生徒さんにとっては悲惨だったと思うがな。それより、そろそろ……作戦会議の時間だ」
夜なのに頑張ってるなぁ、とか思いつつお茶を口に含んで手を振る。
俺はここで待機して――うわおっ!
「馬鹿っ。熱いだろうが!」
顔にお茶が全部掛かったぞ。
「お前も付いてくるんだ。お前のために作戦会議の時間を夜にしているんだぞ?」
「はっは、俺は作戦などに縛られず自由にや――」
「団体行動というものを覚えろ。行くぞ」
服の襟を掴み俺を引きずっていくリティ。
着いた先はゴツい扉の部屋だった。
「……こんな部屋あったっけ?」
「金庫になっている場所だ。冒険者ギルドと銀行の二つの施設がくっ付いてここまで大きくなっているのだからな」
「そ、そうだったのか」
なるほど、冒険者が得たお金をその場で預ける事ができる……というのも便利だな。
だとすると冒険者専用の倉庫とかもあったりするんだろうか。
このギルド施設は色々なものがくっ付いてそうだからありえる。
「や、遅くなった」
扉を閉めて先に集まっていた騎士らしき男たちに片手をあげて挨拶するリティ。
俺をやっと解放してくれたので部屋から出ることにする。
「……鍵か」
団体行動というものを一つ実践してみることにしよう。
俺もリティの後を追い揃った面々に挨拶する。
とりあえず昨日見た顔ばかりだ。かなりの腕を持つ奴ばかりが集まっているのだろう。
「彼等は傭兵と、城に残っていた騎士の一部だ。他の騎士は……捕まっている。中には死んでしまった者もいるだろう」
「そうか。敵討ちに幅が広がってよかったな」
何か睨まれた。
「ストレスはお肌に悪いんだぞ。まあ良い、俺の名前を知ってる奴もいるだろうが改めて……。異世界から来た救世主海弟だ!」
「今のところ何の役にも立っていないがな。それでは、会議を始めよう」
一言余分だ。後ろじゃなく前の。
椅子はないので立って会議するわけだが、今の状態からごろつき達を倒す手段があるとも思えず意見はまるで出ない。
議題を変えようとも、今の状態を維持するための方法しか提案されない。
まるで進歩のない状況だ。
「……毎日少しずつ倒してはいっているが……元々がこの町の民なだけに、心が痛む。一気に本拠地へ攻めるというのはどうだろうか!」
『ダメだ。そんなことをしたら、我々の命だけではなく、捕まっている奴の命まで……』
リティと傭兵らしき男の問答を聞き俺も一つ提案してみる事にする。
「要するに、捕まっている仲間を解放し……敵の親玉やっつけて、外で自由に暴れまわっている馬鹿どもに粛清を与えればいいんだろう?」
昨日のことを思い出す。
数だけは揃っていて、でも実力は大したことなかったごろつき共。
その答えは王家の者が死に、敵に味方したこの町の人々たったという事だ。
「……そう、だが……」
出来ないだろう? という視線が周囲から俺に注がれる。
「まず、仲間にすべきは……この町の人々だ。そうすれば城の中に奴等を閉じ込めることが出来る」
「隠し通路などがあったら……?」
「そりゃあ、俺が塞いでやろう」
『鏡』を出口に貼り付けておけば絶対に出ることは出来ない。魔法だろうが剣だろうが許容量を越えなければすべて反射するのだから。
『では、どうやって町の人々を仲間にするんだ?』
「脅――リティに任せる。奴なら出来る!」
「私か? ……今更言葉を聞くとは思えないのだが……」
「ならそれも俺がやろう」
みなさんお忘れだろうが『鏡』には変装能力が備わっているのである。
「これで包囲は完璧だ」
「色々穴があるように思えるが……」
何もやらないよりはマシだ。
「反論ある奴は俺と死闘を演じようぜ!」
……どうやら反論はないらしい。
「作戦開始は明朝の……日が昇ったときだ。それまで……そうだな、噴水のある広場! そこまで町にいるごろつき共を全員広場まで連れて来い!」
☆
会議も終わり何か妙な視線を背に受け部屋を出ると傭兵の一人が話しかけてきた。
『……名乗った方がいいかな?』
「そうだな、知り合いは多いほうが良い」
『ノッグだ』
ノッグね。
顔も確認し……よし覚えた。
「話があるのか?」
『でなければ話していないさ。本当にこの作戦でいけるのか?』
「成功させることが出来るか否か、それはお前がどれだけうまく立ち回れるかに掛かっている。全員がうまく立ち回れることが出来たら成功するのだから」
少々驚いた顔をしていたノッグだが、一つ頷くと片手を出してくる。
『君は良い奴だ』
「当たり前だろう」
握手に応じるとすぐにノッグは後ろへ向き何処かへ行ってしまう。
とりあえず、死ぬなよ、と死亡フラグでも投げかけておこうか、と思ったがせっかくなので見送る事にする。
「さて、リティに隠し通路すべてを教えてもらうとしようじゃないか」
あの姫様はまだ外に出ていないはずだ。
部屋の中を覗くと何やら考え込む様子でこっちへ向かって来ていた。
「おい、しっかり前を向いて歩け」
デコピンしようとしたら目に入ったが気にしない。
「っ、うぅ。か、片目が……」
「悪い悪い。とりあえず第三の目を目覚めさせれば大丈夫だ。それでリティ、隠し通路の場所教えてくれないか?」
何か睨まれた。
「……はぁ、そうだな。海弟、すべて教えるから……一つ、一つだけ私の望みを聞いてほしい」
「望み?」
「うん。私と代われ」
何だかわからないが衝撃を受けたリアクションをしておく。
そして同様した口調で言う。
「か、代われ……だと!?」
「お前が同様するとは珍しいな」
「演技だ。で、代われとは役目のことか? 全部出入り口を塞げ――」
「そっちじゃあない。町の人々へ聞かせる演説のほうだ」
……そっちか。
コイツもコイツで考えていることがあるのだろう。
真剣な顔で俺へ頼み込んでいるところを見てもわかる。
「良いだろう。任せたぜ」
「ありがとう。私自身、城を捨てて逃げたことを悔やんでいるのだ。その為にも……辛い役割を一つでも多く引き受けなければ……」
そんなものだろうか?
お前が一番悩んでいるのなら、それが一番辛い役割だと思うのだが。
「まあ良いさ。俺も強さを手に入れるために一つでも多く苦難にブチ当たりたいと思ってたんだ」
「……お前の気持ちはわかる。私も強さというものに悩んだ時期があるからな」
「じゃあ――」
「私の口からは教えれないな。いや、誰かに教えてもらうものじゃない、けれど……ヒントをやろう」
……ヒント?
そんなものがあるのか?
「実感というものは大切なんだぞ?」
「何だそりゃ」
答えず去っていくリティ。
「……まあ、まだ時間はある。朝まで仮眠――待て。まだ隠し通路の場所を教えてもらってないぞ」
周囲を見回すがリティはいない。
「逃げられたかッ!!」
探すしかないだろうっ!
大作戦開始ッ!!
というか自分でも書いてて意味がわからなくなってきました。
しょうがないので他の方の小説でも読んできます。