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第395話『教師で大工な今日でした』by海弟

何だ、名乗らないのか。

恐ろしく疲れた。

しかし、一発で名前を当てられるとは……それほど俺の活躍を知ってくれている奴が多いのだろうと俺の武勇伝を語っただけで一時間目は終わってしまった。


「……授業の時間がもう少し長ければなぁ。な、思うだろ?」


近くにいた子供に声を掛ける。

表情を笑顔で固定しぎこちなく首を上下に動かす。


何だ、その意思に反するが仕方がない……とでも言いたそうな行動は。


俺が何かを言う前に教室の中から消える生徒。

追うのも面倒なので教師用に置かれている椅子に座る。


「……に、しても……次の授業はしっかりしないとな。えーと、教科書は……」


こっちの鏡に仕舞ったのだったろうか。

いや、こっちには入っていない。では向こうか? 違うな。


探しているうちに授業が始まる。生徒は全員着席しているわけだが教師まで着席しているというシュールな光景だ。

これじゃあ誰が号令をかけるのか。


そういえば学級委員というものがこっちの世界にもあるに違いない。


「おい、学級の代表的なのは前へ出ろ」


男子一名、女子一名が震えながら俺の前へ現れる。


「とりあえず、俺の代わりに授業は頼んだ」

『え?』

「すまんな、教科書が見つからないんだ」

『……はぁ』


呆れたような声を出す男子の方。


うん、こんな教師じゃあ頼りないよな。


自身の教科書を教卓に広げ、俺の代わりに授業的なものを始める学級の委員。略して『級の』。

何処を取ったかはわかるまい。


さて、その間に俺も教科書を探さなければ。

俺が仕舞った場所を忘れるなんていうのも珍しいな。


「……ああー、教科書何処だ」

『あの、先生……』


暇そうな女子のほうが話しかけてくる。

何だ、俺は暇じゃないぞ、とそんな表情で見ると俺の膝の上を指差す。


「……うん、ここか」


鏡をポケットへ仕舞うと教科書を持って立ち上がる。



「聞け、俺の生徒達よッ!!」


級の男である学級委員の授業が止まる。

全員が俺のほうを向き次の言葉を待つ。何だかすごいことやっている気もするが、関係ない。


年下はすべて下僕だ。

そう思い込むしかないだろう。


「教師の武器は何だッ! 知識か? 魔法か、それとも金か! 違うぞ、教師の武器……それは教科書だッ!!」


教科書を開き一ページ目の内容を読む。

ん、これは……。


「目次か。次」


二ページめ。やっとまともなことが書いてあった。


「魔法とは、この世界に産み落とされた瞬間に才能の有無が決まる……そんなヘンテコなものだ」

『先生、そこは僕が説明しま――』

「だがッ! 俺の体験談から言うに、才能ってのは上限がないんだよ! つまり、時間を掛ければ誰でも強くなれるんだ! わかるか、わからないだろうそうだろう。と言うわけで自習」

『ええっ!?』


さて、二時間目は自習となりました。

俺も勉強するとしようじゃないか。


「最初の方の基礎は俺は完璧だろうから、あとの方を読むとしよう」


お、魔法技術の応用のことが書いてある。


鉄の絵だろうか、そこに炎を当てると――次のページだ。

膨らんでいた。鉄が。


餅鉄(もちてつ)と言うらしい金属だ。金属は熱せられると体積が増えるそうだが……その膨らみが段違いらしい。

是非ともやってみたい実験――教材に混ざっていたりはしないだろうか。


「よし、次の時間は魔法の応用だ! 餅鉄を持ってくるから待っていろ!」

『それって最後の方に――』

「級の男は黙っていろ!」

『へ?』


教室から出ると教材の置いてあるだろう倉庫へと向かう。

くねくねと何度か曲がりやっと倉庫を見つける。


「ふぅ、ここだな」


倉庫の扉に手をかけ一気に扉を押す――が、ガシャン、という音がそれを阻む。


「鍵か。一度職員室に行かねば……」


面倒だな。


周囲は壁、細いので暴れられそうにもない。

つまり破壊活動はNGだ。


「学校全体が壊れたりしてな。はっはっは、さて……」


壊せないのなら突けば良いじゃない。


城門を壊すために戦では一点突破の如く叩きまくるらしい。

つまり槍だ。槍こそ扉を壊すのに相応しい。


「突くだけなら周りに被害も無いしな、さて……助走を付けようじゃないか」


二、三歩後ろへ下がり息を何度か吸う。

準備が出来ると体勢を前へ斜めに崩し走る。


右手で持った槍に左手を添えて扉の中央を狙う。


「ていりゃぁ!!」


海弟は門破壊のスキルが上達した!

やったね!


「さて、中へ入れたな。扉は粉々だが」


きっとあの扉は最初から破壊される運命にあったのだ。

そうに違いない。


倉庫の中は殺風景で……どの道具にも布が掛かっていて光も少なく例のブツを見つけるには時間がかかりそうだ。


「燃やせばわかる何事も」


ダメか。


地道に探すとするか、時間はたくさんある。


近くにあった布の被った箱を調べてみる。

中にはたくさんの魔法の書かれた本が……一通り読んでみたが新しい発見はなかった。


「よし、何か疲れたから戻るとするか」


本を一冊読むのに何か気力を全部使ったな。


来た道を戻ること数分、ある事に気づく。

周囲には人の生活しているような跡は無く、かなーり不味い状態だ。


「……迷った」


こういう時こそ『鏡』だろう。

ポケットの中に手を突っ込み鏡を取り出し何処へと転移しようか思い浮かべた――その時視界の端に何かが映る。


「うん? 誰かいたな、そっちを通った方が早く帰れそうだ」


城に転移してからもう一度学校へ行くのにはかなり時間が掛かる。

そのまま進み道を曲がる。


何も無かったが、しばらくは一本道になっているので走っていけばさっき見た影に追いつくだろう。


別に急ぐこともなく廊下を走ると道が左右にわかれる。


「……これは、どうしようか」


右と左をゆっくりと確認する。


「ふっ、俺の勘は百発百中だぜ」


腰から剣を抜き床へと立てる。

勘は百発百中なわけだが、今回はコイツに頼るとしよう。


「はっは、百発百中でも外れることはある。それっ」


剣から手を離すと前方へと倒れる剣。

運が悪かったな俺。


「壁を壊さないといけないなんて。また青空に怒られる……」


崩壊する壁を背に図書室のような場所を突き進む。

たくさんの本があることは良いのだが、本の数は城の中にあるものより多いだろう。


「マイナーなヤツから……メジャーなのもあるな。おっ、向こうの世界の本もある」


おお、もうこっちの世界と向こうの世界の言葉の翻訳本が出てたのか。

向こう世界の会社が作ったものらしい、何かすごいな。


俺は覚えるのに苦労した経験がある。

師匠に叩き込まれ……一日で習得したこっちの世界の文字。


うん、思い出深いものがあるな。


今でも赤く染まる文字達を思い出すことが出来る。


図書館を抜けると再び通路に出る。しかし俺は直進しか許されていない。そのせいでいくつか本棚を倒してきたが大丈夫だろう。

誰かが直す。俺以外の誰かが。


「怒られるなぁ、さてと……破壊っ♪」


壁を破壊し突き進む。

どうやら教室らしい、すぐ近くにいた生徒が何人か俺のほうを向く。


「や、どんな授業をしてるんだ――」

「どんな登場してるんですかっ!」


ずかずかと歩み寄ってくるイリア。どうやらコイツが担当しているクラスらしい。


生徒達の落ち着きようを見て関心しつつ、今にも斬りかかってきそうな形相のコイツを宥めると俺自身の剣を仕舞う。


「壁は意外に固いんだよな」

「そんな話は聞きたくありません。それに、自分の担当するクラスは――大体予想がつくので聞きません。というか子供達に悪影響です……」


あなたの存在が、とぼそりと語尾に聞こえた気もするが聞かなかったことにしよう。

例え真実だろうとそれを俺は拒み続ける。


何故なら性格は変えられるのだから!


無論、現在変更の予定はありません。


「それではアディオス、イリア! また会おうッ!!」


黒板ごと壁を破壊し次の教室へと向かう。

後ろが騒がしいが気にしない。


「ん? 何だ、隣が俺のクラスだったのか」

『あの、先生……。何しているんですか?』

「迷子になったついでにお前達全員に補修を受けてもらう事にした」

『はい?』


そう、補修だ。壁を直そうじゃないか。


生徒達が不憫すぎるので、美少女転校生を投入してやろ――はい、すみません。

これ以上カオスな状態にはしたくありません。


それと海弟の第四魔法計画が始動しました(作者の脳内で)。


それと、白の剣と黒の剣のアンケートを新しくしました。


前のアンケートのURLが壊れたパソコンを直した影響で消えました。一つ前のはあったのですが、パスワードを忘れたので中が見れません。

たぶん、目次やらこのページの下にやらあると思うのでよければアンケートに答えていただけると嬉しいです。


微妙な質問ばかりですが……。

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