第389話『ドリーム・ザ・SUKESUKE!!』by海弟
サブタイについては反省しています。
ただ、今後も同じような事を繰り返します(人はそれを反省していないと言う)。
「うわぁ、服がすけすけ~。どうしよー」
「何やってるんですか?」
「いやな、男の夢だよ」
あの時、あの時目潰しを食らっていなければ……!
ぷるぷると震える肩をシスターさんに優しく掴まれる。一度教会に戻ったのだ、俺が何故連れてこられたかは不明。
「……人間の、クズですね」
おっとりした口調の声が教会内に響く。
……笑顔で言うな。
だが、まあその答えに会ってすぐ行き着くとは中々見所がある奴だ。
「ようし、気に入った! お前、名前は? いや、そんなものはどうでも良いよな。今から神の敵のツラを拝みに行こうZE!」
「は、はぁ?」
「マヤ……借りてくぜ」
「どうぞー」
よし、了解は得た。
さあ行こう、魔神の元へッ!
シスターさんの手を握り教会の扉を蹴り――ん、開かない。
「あ、それ引いて――」
「我が道を阻む壁、いや扉は許さぁぁぁぁん!!」
無理やり蹴り開けると外へ出る。
「ひ、ひいやぁぁぁぁ~~~!!」
無意味に悲鳴を上げるなシスターさんっ!
☆
「魔神、キサマに見せたい者がいるッ!」
「あっ、海弟。戻って――へ?」
「ま、魔神って何? えーと、何これ気持ち悪いっ! 動いてるし」
マネキンこと魔神、いや魔神ことマネキン?
どちらでも無いな、うん。
兎に角、神に使える女とマネキンに憑いた魔神の対面だ。
いやぁ、面白そう。
「……海弟ー、これとこれとこれ買ってっ!」
「あるぇ、無視かよ。まあ良い、というか下着いらないだろお前!」
「様式美ってヤツ、大事だと海弟の心で学びました……」
俺の心の中で? しょうがないな……と、甘やかしてはダメだ。
「服だけで良いだろ。何ならTシャツ一枚でも良いだろお前」
「さすがに恥ずかしいよ」
「なら現状の裸を許すな」
「開放感が気を紛らわしてくれてるの」
なるほど、逆に……おかしいだろうそれは。
何だ、俺の心の中からコイツは何を学んだんだ。
「……連れて来ておいて放置ですか?」
背後から聞こえる声には確かに殺気が篭っていた――ので笑顔で振り返る。
アレだ、宥めるんだ。
「いやな、コイツは魔神なんだよ。ほら、悪の化身」
「真っ白なんですが」
「心は真っ黒ってヤツさ」
納得がいかない様子だ。
くっ、この展開はお望みじゃあないんだぜ。現実は非常ってものだ。
しょうがない、魔神自身に名乗らせた方が手っ取り早いッ!
白い体の人形ことマネキン魔神を指差す。
「自己紹介だッ!」
驚いたようで仰け反る魔神。表情無いから大きなリアクションはありがたいな。
「……いや、名前……ないし」
「ん? ああ、そうか。なら俺が今――」
何だこのじっとりした視線は!?
魔神か、魔神からなのか? 馬鹿な! 目は無いだろうアイツ!
「――俺のネーミングセンスは最悪だとか思ってないだろうな?」
「いや、そんなことは無いけど。それよりも、魔王に会いにいかなくても良いの?」
「優先順位を考えようぜッ! いや、待てよ……」
シスターと魔王、これも良いんじゃないか?
何が良いかわからないが、兎に角試してみる価値はある。
「と、言うわけでシスター。魔王に会いに――いないぞ!?」
何処に行ったアイツ!
周囲を見回すと、野次馬にまぎれて見える赤い髪の少女の声が……。
うん、アレじゃないよね。
「野次馬の数多くなってないか?」
「面白いから良いんだよ、うん」
余裕あるなコイツ。と言うか俺に似てきてないか? 無いな。
まあ、店員の戸惑ってる姿とか確かに面白いから良いか。
「よし、今日は混んでるみたいらから服はまた今度にしよう」
「……虐殺のハジマ――」
「血に濡れた服を着たいのか?」
「……」
……理解力のある魔神で助かる。
さて、シスター攫って城へと戻るとしよう。
「と言うか完全に見えなくなったんだが……」
「あの女のことか?」
「うむ、既に攫われてるとか無いよな?」
……お前が珍しすぎるからいけないんだ。この人だかりじゃあ様子を確認できない。
小さいマヤを連れて来るべきだった。大人の間をするすると通って探しに行けるのに。
「いや待てよ、アイツの名前って逆にすると山に……今はどうでも良いか。兎に角探すぞ。名前知らないがッ!」
『待て待て待てぇーいッ!!』
俺達が二手に別れて探し始めた直後、声が響く。
「何だ!? テロか、テロなんだなッ!」
「いや、ただの強盗なんだが……」
「そうか――」
強盗という男は野次馬の中心、つまり俺のところまで来て喋っているわけだが……浅はかすぎる。
「――死ねッ!!」
「うぐぇ!?」
魔神の持っていた服の一つで首を絞める。
今はお前に構っている暇は無いんだよッ!!
「い、いいのかぁ。連れだった女は人だかりの外でオレの仲間に捕まってるんだぜぇ」
「だからと言って拘束をやめる俺ではないのでした。さて、これで良いか」
「な、何じゃこりゃあ!?」
両手両足を服で縛り、靴下を最後に頭から被せて終わり。
「片方余ったからお前の腹の上に置いていってやるよ」
さて、人だかりの外だと言っていたよな。
あの男が単独犯とはやはり思えない。つまりは仲間が本当にいるのだろうことは予想できる。
騎士の俺を動けなくすれば楽にカツアゲ行為が出来ると思っていたのだろうが逆に捕まりあの状態だし。
場所を聞き出してやろうか、と思ったが何か『ハァハァ』してるので触れずに置いておく。
こうなったらどうしてくれようか。
影流の名を使い野次馬共を解散させる、というのも一つの手だが後で怒られそうだな。
いや、人助けのためと言えば影流は許してくれる、きっと!
「オルァッ! 影流王直属部隊の隊長である俺の話を聞けッ! 今すぐここから解散しろッ! でなきゃ全員ここで斬るッ! 斬って埋めるッ!」
予想通り、歓声を上げながら去っていく野次馬達。
何だかただの脅迫になった気もしなくは無いが、良いか。別に。
「……野次馬の外の方の奴等は悲惨だなぁ」
俺の声が聞こえなかったようで逃げ遅れたのだろう、踏まれたのか足跡がいくつか付いている奴が見える。しかも屍のように動かない。
「……おい、魔神さんですよね? 聞こえてますかー?」
ぐったりしている魔神の肩を揺する。中央にいたのに何でコイツは巻き込まれてるんだ?
しかし、早速壊れたりしてないだろうな。
「……何か吐きそう」
「口が無いだろ。さて、コレでだいぶシスターの奴が探しやすく……ん?」
やけに地面が柔らかいな。と言うか揺れてるな。
地震か?
「こ、こらぁっ!! 退きなさいっ! 今すぐ汚い足を退けなさいぃ!」
「おや、下の方から声がする」
「……海弟、ふざけてる? そこにシスターって人いるよ」
お、本当だ。
お前柔らかいな。
「さて、揃ったところで――」
「ごめんなさいの一言も無いの?」
俺の言葉を遮るとは生意気な。
「俺が謝るのは俺が悪いときだけだ。はぐれたお前が悪い」
「踏んだのはあなたが悪いでしょうっ!」
「踏まれたお前が悪い」
周りを見れば酷い有様だが、みんな大人だ。
ということは自己責任というわけでありまして、俺は見てみぬふりをしても咎められません。
お前は成人いってないみたいだが神に祈りが届かなかったということで。
「行くぞシスター。お前の敵に会いにッ!」
「敵など作った覚えはないのですが……」
「俺が作っておいた」
「その調子で自分の敵を増やしていってくださいね」
語尾にハートが付きそうな感じの声なのだが頬を抓らないでくれます?
「まあ良いだろ。お前も魔王には用があるはずだ」
「無い」
「よし、帰れ」
☆
「さて、ホントに帰っちゃったわけだけど?」
「とりあえず、あとで教会を襲撃しに行くか。まずは魔王に会いに行こう」
「一人で襲撃はやってきてね」
そう言い俺の後ろに立つマネキン野郎。
「……」
「……何だ、どうした」
「こういう時はおんぶするべきなんだよっ!」
「お、おんぶ? よし、良いだろう。お前とはここまでのようだ、さようなら」
「何か酷い方向に話を進めてるんだけど」
寄りかかってくるなッ! 重いぞお前。
「……とりあえず、一歩だけな」
「意味無くないそれ?」
「一歩分お前は得するんだから文句を言うな」
さーて、俺のでかーい一歩で城まで行くとするかな。
うん、この場で一つ謝りたい。
自分は海弟という男を侮っていました。すみません。
何故謝るのかって? 構想を作っている最中のことです。
作(脳内)「ひゃっはー、海弟はこのまま闇の道を突っ走るぜぇ!!」
構想を途中まで練り上げる――しかしッ!!
作(脳内)「何だ、このクソ展開は……、いつもそうなのだけれど作者自身でも面白くないとわかるレベルだぞコレは!」
そう、これは昨日の夜……更新が終わった後のことでした。
そして今日、気づいたのです。
作「海弟は光と闇に囚われてるような男じゃあない」と!
これに気づいたおかげでサクサク構想を練り上げることが出来ました。
ありがとう脳内海弟! これ以上作者の頭の中を侵略するのはやめてね!
と、言うわけで次の騒ぎの始まりと終わりの辺を書いたらそっち優先で更新します。
つまり、海弟は一ヶ月の教師体験をせずに――はい、青空さんの言うことは絶対でしたね(いつからかはわかりませんが)。
ああ、次の章的なものになるのはいつだろうか。