第387話魔法と花壇に咲く花を見つめる迷子
さーて、現在進行形で困っています。
何を困っているかって? ふっはっは、秘密です。
「今回はご苦労。魔王は現在この城で療養中なのだが、今日中に魔界へと戻ると言っていた。あと、海弟にも用があると言っていたな。あとで会ってやれ」
影流が俺達に向かい言う。
あの夢から目覚めて、気づいたらこっちの世界にいたのだ。腕の中には何もなかった。
どういうわけか知らないが、魔神の奴が何処かに捨ててきたということはないだろう。と、なると自分の意思で消えたか。
「……用事の内容ってのはわからないが、後で行っておく。それで、今回俺達頑張ったよなッ!」
「頑張ったよ! シュクリは物凄く頑張った! よね?」
「おう、頑張ってたな。うん。というわけで影流の王様、わかっているな?」
「影流の王様って……。まあ良い、給料に上乗せってことで」
「待てぃッ!!」
給料に上乗せ? ば、馬鹿な!
「俺は! 俺は――」
「はい、王様に迷惑をかけないようにお願いしますね、元隊長。それではワタシ達はこれで」
「うむ、下がっていいぞ」
首を掴まれ広間の外までレラに連行される。
何だ、俺はまだ要求を伝えてすらいない!
「レラッ! お前な、命張って――」
「では、ワタシは自分の部隊へと戻りますから」
「私達も戻りますか、ね?」
「う、うん……」
……何か冷たいな。
去っていく後姿を見て思う。
残ったのはシャンとシュクリだけか。
「酒でも飲みに行くか?」
「ええー、シュクリはお酒飲めないから別のところが良いッ!」
「お前等未成年……こっちじゃ関係無かったか。まあ良い、俺も用事というヤツを思い出したら解散だ!」
「用事?」
「うん、用事だ」
不思議そうな顔をしていたが、無視し二人を置いて歩いていく。
さて、久々に青空にでも会いに行こうか。
☆
「……鬼じゃ、鬼がおるぞ」
「どうしたの海弟? ねぇ、私の顔に何か付いてる?」
……笑顔が怖いですよ青空さん。
早速部屋の外へ出ようと扉に手をかけるが、開かない。
何だか知らないけど、開かない。
「何で!?」
「海弟は覚えているかな。ふふ、痛かったぁ」
……?
「あ、本気で忘れてるっ!」
「い、イエイエ、オボエテマスヨ?」
……視線が痛いです。
「まあ良いや。ちょっと付き合ってくれないかな?」
「……本当にちょっとで終わるのか疑問だが、まあ良い。付き合ってやらんことも――はい、お供します☆」
☆
「……えーと、ここは?」
城の近く、城の周囲に囲まれた壁の内部にあるその施設は賑やかな雰囲気で周りが彩られている。
見たことあるようで見たことないもの、俺の頭の中にある記憶の一部がピコンピコン鳴ってるが、思い出せそうで思い出せない。
うーん、ここは何処だろう。
「わからない? えーと、黒板とか、椅子と机。ほら、あそこに先生もいるよ?」
「ああ、俺の中にある風化されし記憶の内容がわかったよ」
最近学校に顔出してないな。どうしよう、コレはもう勉強で追いつける気がしない。
戻る気に一向にならないのだが、高校ぐらいは卒業したいので未来の自分に頑張ってもらうことにしよう。
「何処かで聞いたな。魔法学校、だっけ?」
「その通りっ。学園長の青空です、よろしく!」
「……うん、そのノリを大切にな。で、俺は何をすれば良いんだ?」
青空を見てか知らないが周囲にここで勉強しているのだろう子供達が集まってくる。
一応俺は騎士の格好をしているし、警護していると思われているのだろう、誰も俺を咎める者はいない。
俺の知り合いがいたら笑顔でちょっとこっち来いと殺気駄々漏れの表情で手招きするであろう。
「あっ、隊長!」
「ほうら、来た。殺気は感じないが――」
ん?
隊長? そう呼ぶのは、現在では俺の部隊の奴等のみ。
つまるところによりますと、えー……俺の部隊の奴等がいるのか? ここに。
「青空さん?」
説明プリーズ。
「えっとねぇ、教材運んでほしいなぁ、とか先生とかやってみてほしいなぁ、とか?」
「説明になってないッ!! 前半は良いとしよう、しかし後半はぁ――!?」
何者かに後ろから殴られる。
「隊長、王妃様に向かって何という口の利き方……」
「ん? イリアか。さっき声を掛けたのもお前か?」
後ろを見て誰もいない事を確認して言う。
コクリと頷いたところを見ても、ここ等辺には他の隊員どもがいないことを察することが出来る。
「まあ、癖だ。お前は持ち場に戻ってろ。何をしているか知らな――」
『せんせーっ!』
『先生王妃様だよーっ!』
「こらこら、あまりはしゃがないように」
……あるぇ? うーん、悩めるところだ。
「海弟、説明いる?」
「勿論さッ!」
コホンっ、と咳を一つすると説明を始める青空。
「魔法学校には本部であるここと、支部であるいくつかが国中に存在します。いずれは大陸中に作ってもらう予定だけどね。でね、支部のほうのお手伝いを海弟がいない間に彼女達にしてもらってたわけ」
「ここは本部だよな? 説明にもあった通り」
「うん、支部のお手伝いが終わってから暇らしいからこっちで先生してもらってたの」
……唖然。
さて、唖然タイム終了だ。その間一分。イリアに殴られて現実に戻ってきたわけだが、ここは隊長も先生しないとダメ?
「俺も用事があるんだけどなぁ」
「それじゃあ、明日からで良いよ。用事優先!」
おお、それは助かる。
「で、先生はいつまでやるんだ?」
「今魔法に詳しい先生役を募集しているから、うーん……一ヶ月ぐらいかなぁ」
「青空、一ヶ月後にまた会おうッ!」
「それは酷いよ!」
「と言うかですね。名前を呼び捨て――」
「お前はうるさいっ!」
イリアは黙ってなさい。
「……明日には戻ってきてね」
「わかってるわかってる。アレについては俺が悪かったしな、ビタンッと」
「物凄く痛かったんだからね! それじゃあ、えっとイリアさん。この後も頑張ってね」
何だか堅苦しい動きで「私のような者に声をかけて頂けるなど、ありがたき幸せっ!」とか言っているのでケツを蹴り早々に退散させる。
「青空、この町で人形を売っている店とか人形師のいるところとか知らないか?」
「えっ、そういう趣味が……」
「無いから。まさか死体に入れておくわけにもいかないし……」
「へ?」
きょとんとしている青空を捲し立てて何とか場所を聞き出し急いで部屋に戻る。
「……うん、銀貨がギッシリだな」
俺の給料なのだが、食事は食堂に行ってタダ飯だし宿だって取らなくて良い。
町の散策なんてこともしないし、で金は溜まる一方なのだ。ここらで一気に使うのも良い。
「魔神、テメェの体を見に行くんだ。テメェが気に入ったのを選びやがれ」
『テメェ、って……。まあ良いんだけどさ、声に出さないでくれるかな』
それもそうだ。俺だって一人の時じゃなきゃ声にだして心の中に巣食う魔神さんとお喋りなんてしたくない。
心の中の会話で十分。
さて、魔神の能力の中に洗脳があるのはご存知の通りだろう魔神。
『……わたしの能力なんだけど』
慌てるな。俺が説明しているんだ。
『慌ててないけど』
でだ、人形にも心はあると言うだろう。つまり、人形を媒体にお前を現実に生きる者として存在させてやろうと言うわけだ。
心優しい俺からのプレゼントだ、この先も募る悲しみはあるだろうが俺の優しさを踏みにじることはしないように。
『別に、海弟の心の中でも良いんだけど。何だか面白そうな物いっぱいあるし、これとか』
おおう、それはトラウマ!
触るんじゃないッ! お前は人形で良いんだよ。俺が言うんだ、間違えない。
「さて、行こうじゃないか」
銀貨を袋へ詰め込み町へと繰り出す。
確か、この先の橋を渡ったところにあったはず……。
「……迷った!」
なんて事だ。こんなことになるなんて!
ただ焦るな俺。
こういう時は周りの人に聞けば良いんだ。
きょろきょろと周りを見渡し性格の良さそうな人を探す。
しかし周りにいるのはゴツイ服装の男ばかり。汗臭い臭いで通路が充満してるぞオイ。
「俺を癒してくれるのは、この花壇の花だけだぜ……」
『気持ち悪い』
魔神よ、その突っ込みはあんまりじゃないか?
心の中で言い争っていると声が掛かる。
「花が、好きなんですか?」
珍しい、女性の声だ。
さっきの汗臭い男どもは相変わらずだが俺に声をかけてきたのは女性。
これは、運命というヤツか!
『あなたは運命というヤツを信じているんですか?』
現在進行形で信じても良いかも知れないと思い始めている。
おっと、そこのお嬢さんを待たせちゃ悪いな。
「大好きだ、ここは暑苦しい男ばかりだからな」
この瞬間、俺に殺気がこの空間を満たしていくのが目視できる能力が俺に発動したらしい。
今後は言動に気をつけなければ。
「えっと、道案内……よければしましょうか?」
「え?」
「大声で迷った、と言ってましたし……」
その瞬間――
『迷ったーっ!』
『カーッ、仕事場までの道のり忘れちまったぜ』
『俺なんて自分の家までの道のり忘れたからな!』
『あっ、お前家に連れ込もうって魂胆だな! 俺だって自分の家の場所忘れて迷子になってるんだからな!』
――という声があがった。うぬ、見苦しいのぉ。
「それじゃあ案内頼もうか。この町で一番腕の良い人形師の居る場所、わかるか?」
「……えと、こっちです」
顔を赤く染めくるりと俺が通った道を戻っていく女性。
……うーん、アレだな。頬を染めるということは一目惚れならぬ迷子惚れといヤツだな。
迷子になってよかったー。
『迷子は格好悪いから、気づいてね』
さいですか。
青空さんとの絡みは久しぶりだNE☆
根が優しい青空さんだから良いものの、今回の戦いを経て海弟の他人イジリが魔神級になりましたね。
作者はこの作品内では、天地を創造した神を創造した人物に等しいですからね。
勿論海弟と言えど――そういえば天地を越えたことが一度だけあったようななかったような。その時は性別の壁さえも超えましたし、うん気にしない。