第385話染まる光と輝く闇
さーて、長かった……。
けれども、まだ終わりじゃないのですよねぇ。
何が続くのかって? まあ、本編読んでからってことで。
「弱いッ!」
「チッ、お前が桁外れなだけだッ!!」
二度三度、目の前で光が点滅する。
目で見たことをそのまま伝えるならば、その説明が正しいが――これは剣戟だ。
闇に紛れ、攻撃を俺は何度か行っているがそれら全てが防がれ……なおかつ反撃までもらう結果となった。
「……残念だなぁ」
「何が残念だ。戦いはまだ始まったばっかりだッ!」
「そう。始まったばかりなのにもう終わっちゃう。残念だなぁ」
……終わる?
まさか、俺が今ここで倒されるとでも?
「……終わらねぇよ。何か必殺技でも隠しているのか?」
「特殊魔法『連』」
特殊魔法!?
使えないはず……いや、塔から外に出たんだ。もう使えても不思議はない。
何が来ようと防ごうと『鏡』を発動させ俺とアイツの間に出現させる。
「……光よ」
声と共に俺へ向けて光が放たれる。
「反射だッ!!」
鏡へとぶつかった光を見て叫ぶ。
しかし、反射しない。
「……なん、何で!?」
「『連』は連続の連。つまり、自分の使った魔法を二重三重に積み重ねる魔法なんだよっ!」
つまり、あの光は通常の光の二倍三倍の力を持っている……ということだ。
ただでさえ桁違いなのに……馬鹿かオイ!!
「だが、俺だって魔神の能力をすべて見せたわけではないッ!」
「……ボクは、魔神の力のすべてを知っているんだよ? 意味ないって」
「何だよそれッ!」
魔神の力のすべてを知っている?
把握している、ってことは俺は……お前に勝てないと?
「馬鹿な。俺は強くなった、魔神の力を手中に収めてッ!!」
「だから勝てないんだよッ!!」
目の前にある鏡が割れ、光が俺へと降り注ぐ。
身を削られる感覚――ありえないほどの威力を体全体で受け止めている……。
「ぐ、グゥゥゥァァァアアッ!!!!」
目の前が真っ白になって、体中に痛みが走っていて……兎に角頭の混乱とともに俺は気絶した。
☆
……路地裏だろうか?
体中がヒリヒリする……どうやら死んではいないみたいだが。
上半身を起こそうにも力が入らずうめき声しかあげることが出来ない。
……ああ、どうしよう。
目を瞑ると車が走る音が聞こえてくる。
複数あることから察するに、大通り近くの路地裏にでも落ちたのだろう。
誰かに見つかる前に移動しないと……でも、動かないしな。
『……ねぇ、勝ったんだよね』
……魔神か。
『あの後さ、わたしは安心して寝ちゃったんだ』
それは良かったな。まあ、安心しろ。
ヒカリの奴は倒した。押し付けがましい偽善をお前に行う奴はもういないってわけだ。
『……でも、何でそんなにボロボロなの?』
…………。
『……答えたくないなら良い。だけどさ、わたしの戦いで傷付いたのなら謝るよ。でもさ、海弟が海弟自身の戦いで傷付いたのならわたしは謝らない』
……それは、当たり前だろ。お前のせいじゃないんだから。
安心しろ、お前のせいじゃない。俺のせい、俺の責任だ。
『じゃあさ、何で自分の戦い方で戦わないの?』
……お前。
ふっ、見てたなコイツ。そうか、俺は引きずってたんだな。
ヒカリとの戦いは、魔神の戦い。アイツとの戦いは、俺の戦い。
俺の、俺自身の戦い方で挑まなくちゃ通りになってないよな。
……もう一度寝てろ魔神。その頃には、終わっている。
『……そうさせてもらうよ』
……。
…………。
……クク、クハハハハハハッ!!
「この勝負、勝つ」
翼、黒く染まった翼を背中へと生やすと空へ向かい飛ぶ。
俺の、俺自身の……魔神の力を借りない俺の戦い、そう決めたせいか浮遊感を感じ気持ち悪くなってくるが、我慢だ。
星の光に紛れ、空に輝く光を見つけ、加速する。
そして、右手を突き出し殴りかかる。
「俺は、俺だァァァァァッ!!」
確かに、息を呑む音が聞こえた。
だが遅い、反撃してこようと、防がれようと、俺はこの一撃を絶対に当てるッ!!
肉を裂く感触――それと同時に俺と相手の間に光が弾ける。
「ぐっ、やってくれるなッ!!」
吹っ飛んでいった相手を確認し叫ぶ。
だが、律儀に体勢を立て直してやる隙を与えるほど俺は甘くない。
「特殊魔法『鏡』」
魔力を与えた鏡を複数相手の周りに配置していく。
「次、水よッ!!」
鏡から発射される水。
それは吹っ飛ぶ相手へと直撃する。ダメージはないようだが、目的はそれじゃない。
「捕まえたつもり?」
「はっはっは、馬鹿かお前。光に匹敵するのは闇だけ、常識だろう?」
「闇は光に倒されるものなんだけどね」
「そんな理屈はお前の頭の中だけの常識だッ!!」
黒の剣を水流へと差し込む。
押されて流されそうになるが、そこは気合だ。握力だ。
「テメェが連なる攻撃を使うなら、俺は複数を合わせた攻撃をするぜッ!」
『鏡』を使えばこんなことだって可能なんだ。
「闇よッ!!」
水を伝い闇が相手へ向かい侵食していく。
しかし、それより前に鏡を闇が侵食しきる。が、今はまだこの仕掛けは使わない。
「くっ、体が……動かない」
「時期に息も出来なくなるぜ」
……そろそろ良いか。
相手が脱出を試みてか光が何度か水の中で光るが水の流れに合わせて闇は無限に供給されるのだ、対抗するしない以前の問題だ。
これなら次の仕掛けを使っても良さそうだ。
「闇の力は浸食。つまりは支配だ。テメェはテメェの思うところがあるんだろうがな、俺は俺の流儀を貫かせてもらうぜ」
黒の剣を手放し水流の中へと放つ。
下へは落ちず相手へと自動的に向かっていくという寸法だ。
そして、黒の剣を手放したことにより俺は闇をコントロールできなくなる。
闇に染まった水、闇に染まった鏡。暴走するそれらを見て叫ぶ。
「光なら爆発! 闇なら、何だと思う?」
「……吸収ゥゥゥゥッ!!!!」
全身が吸い取られる感覚に今頃陥っているだろう。そして、そこへ最後の攻撃だ。
「黒の剣……直撃斬り!!」
……相変わらずネーミングセンスがないと自分でも思うんだぜ。
だが、まあわかりやすくて良いよな。うん、素晴らしい。
「ぐ、何故……ッ!!」
落ちていく相手。
おっと、この下はちょっとした大通りになっているからな、ここで下に落ちられると俺が困る。
両手を使い相手を抱え上げる。
「……ナンナ、で良かったか?」
「……うん、その名前で良いよ」
どうやら喋ることの出来るだけの気力はあるようだな。
まあ、抵抗は出来ないだろう。これ以上の何かも無いだろうし。
「何で、俺と戦おうと?」
「……君は、ボクのヒーローだからね」
……ふっ、そうか。そうかい、面白い答えだ。
「だが、もう死ぬぞ? 今なら助けてやれるが」
「このままで良いよ。彼女も言ったから、私達が悪かった、って」
「達ってところがアイツらしいな。お前の行動は予想されてたみたいだしな」
「……そうだね。それじゃあ、そろそろ死ぬかもだけどさ、最後に……面白いことしてみない?」
「面白いこと?」
ほお、楽しそうだ。俺は自ら騒ぎに飛び込むのは大好きだからな。当然、答えはYESだ。
「ああ、答えは言わなくてもわかった。というかわかってて聞いたし。じゃあ、最後に……輝く闇へのプレゼント――」
……輝く闇、ねぇ。
似合わないと思うんだけど……って、眠たく……。
コレは。
「現実の夢……」
「ちょっとした能力なんだけどね。ヒーローの今後に期待している……けほっ、ごほ……っ」
辛そう、だな。くっ、俺もそろそろ眠気が。
「最後の夢だから、心行くまで――」
視界がかすむ。
お前の最後の言葉は聞いてやりたいんだけどな。残念だ。
それと、聞いているんだろう、魔神? 人目のつかないところへ俺とコイツを運んでやってくれ。
キサマッ! 読み飛ばしたなッ!?
はい、キチンと読んでくださった読者様のほうが多いことを信じ後書きを書きましょう。
海弟、現実となる最後の夢を見ます。
そう、これこそが次の章みたいなのの要となっちゃたりならなかったり。
そろそろ白の剣と黒の剣のことも紐解いていって良い時期かなぁ、とか思ったりしてますし。
というか学校壊滅状態に今回しちゃいましたが、どうしましょうか。
やっぱり騒動を一度起こしておくことにしましょう。そうです、魔神編が終わったらのびのびほのぼのが戻ってくるっ(たぶん!)。
はい、更新遅れてすみません。