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第384話『決めたことやるのは小学生にだって出来る』by海弟

たぶん、決着は着いたのだと思う。

けど、それで終わらないのがこの物語ッ!

俺は……どうすれば良いんだ、魔神。

お前の望みを叶えれば良いのか、それとも……いや、お前に聞くのは間違っているのはわかっているんだ。


『……迷ってるの?』


そうだ。

俺は、お前の味方でいる。それは間違っていることなのか?

こうして、お前の目的を果たす先に……お前の苦しみしか待ってないのならこのままのほうが良いんじゃないのか?


『……あなたは、悲しみを一度背負ったよね。わたしの悲しみを。どう感じた?』


どう感じた、って……違和感があったな。

体が拒絶してるのがわかった。日常で受ける以上の精神的なダメージがあったんだろうよ。


心と体が無理やり引き裂かれた、そんな感じだ。


『それが、永遠に続くのと。ずっと一人ぼっちなのはどっちのが良い?』


……決められない。

どっちも辛い。俺は他人に頼りっぱなしだし、考えても答えは出てこない。


どうしたら良いかわからないんだッ!!


『……悲しみは……乗り越えることが出来る。孤独は、乗り越える事が出来ない。わたしはそう思うよ。色々考えたんだもん、これも一つの答え……、わたしの中のね』


それで、どうしろって言うんだ。

お前がずっと悲しみを背負い続けるのなら、俺のやることに意味は無いだろうッ!


『わたしが、あなたの勇姿を見て感動して……ちょっとだけ成長するかも、悲しみを乗り越えれるだけの力をもらえるかも知れない』


……何て言うか、俺好みだ。

はいとYesの二択を迫られているんだ、どっちを答えようと同じだろう。Noと答える俺だが今回だけは俺の流儀無しでやってやる。


お前の悲しみ、俺が背負ってやる。


『……え?』


俺がソイツを乗り越えて、楽にしてやるよ。

お前の記憶に――お前の能力も詰まっているんだ。何より戦術は多い方が良い。


『……もう一度、壊れても良いの?』


お前に心配される筋合いは無いッ!


『……ありがとう、ありがとうありがとう……』


三回じゃ物足りないな。あとでその百倍だ。


『ふふっ、あなたは悲しみを乗り越えられる。チクチクって痛い心を、爽快に吹き飛ばしちゃうぐらいの力があるの。わたしの背負ったそれを……吹き飛ばしちゃってよ!』


ぐっ、痛いな。


体中を駆け巡る激痛。違和感から生まれるそれは、俺が耐えられるようなものではないのだろう。

だが、記憶を自ら受け入れる――ペットが死んだ、そういった悲しみから無実の男が死刑を受ける悲しみまで。

戦争が起こるごとに、だろうか。定期的に大量の悲しみが流れ込んでくる。

そのたびに体が揺れ、激しく嘔吐する。


「っ、何が起こってるの!?」


声、たぶんヒカリのものだ。まだトドメを刺していなかったのか。

考える余裕をくれるとは、敵としても考えものだぞ。


「く、クハハハハハハハハッ!! 良いねぇ、世の中醜いものさ。だが、それはそれで面白いッ!!」


剣を鞘へと戻し、ヒカリを見据える。


「真実は悲しみと共に――記憶と悲しみ心へ仕舞い、闇に沈んだ醜さ拾う……」


何も無い空間から闇の塊を救い上げる。


「この手に残る醜さを――己のものに変えていくッ!」


闇を一振りする……その行動に意味はない。

ただ、そこにあるのは破壊。


地面に亀裂が走り、ヒカリごと地表から消し去る。


「っ、力量に差が――ッ!!」


ヒカリは翼を使い空へと逃げようとするが、甘いッ!!


「差があるのは力量だけじゃねぇよッ!!」


瞬時に黒く染まった翼を生やし、空へ向かう。


気づいたのか後ろを振り向くヒカリ。


「飛べないはずじゃあ!?」

「馬鹿め。ハイパーモードである俺に酔いや恐怖など恐るるに足らず!!」


剣を鞘から抜き斜めに構える。

もうすぐ追いつく、というところで加速。

先回りし相手の行く先を塞ぐ。


「っ、何故……何でッ!」

「魔神は……悲しみなんか怖くないんだとさ。俺は、最初に決めた。魔神の望みを叶えるとッ!」

「彼女の望みはもう、悲しみを背負いたくないと――」

「知っているか? 五十歩百歩って言葉。お前が魔神を救いたいという気持ちと、俺が魔神の望みを叶えたいって気持ち。どっちも同じ気持ちなんだ。けど、性質が違う」

「……わかりません」

「テメェは本物の狂気を知らない。知ったかじゃあ何も出来ないんだよッ!!」


剣をヒカリへと投げる。

そのスピードはアイツに見えるギリギリだったのだろう。体が避けようと動いたが――遅い。


突き刺さり地上目指して落ちていく。


「……魔神の力、全部使って対抗するとあっけないものだな」


……頭の中が何だかスッキリする。

ああ、そうか。


「……悲しみなんて枷がなければ、俺は……魔神という個人はもっと強かったんだ」


何だか、笑えてくるな。


「ククク、クハハハハハハッ!! おお、日が落ちるな……良い夜になりそうだッ!!」


……少し、このままで居ようか。


空にとどまることにして、夕陽が完全に落ちるのを待つ――





笑い声の響く。

路地裏と呼ばれる一角に黒い剣を体に突き刺し倒れている少女がいた。


随分と高いところから落ちてきたせいか、血が飛び散っていたが気にするものは誰もいない。

第一に少女以外の誰もいないのだから。


しかし、この声は響いた――


「……何をしているの?」


息を呑む音が聞こえてくる。

少女のものか、この声の主のものかはわからない、が続いてきた声には優しさが篭っていた。


「このままだと、死んじゃう……。僕はどうすれば良い?」


姿は相変わらず無いままだが、少女は微笑む。

彼にしか頼めない、そんな要求を何度か頭の中で繰り返し彼ならと信じ口に出す。


「……あなたの、体がほしいです」





ふと、違和感を感じヒカリの落ちた位置を見る。

夕陽も完全に落ちお月様とこんばんはをして帰るところだったんだが……何かある。


『……うわぁ。すごい、すごいや!』


何処からともなく聞こえてくる声。

その方向は真逆。そちらを見れば月をバックに、空へ浮かぶ少年の姿があった。


少年と言っても、顔は抽象的で女かも知れないが胸がないのでそういうことにしておく。


「……あ、海弟。忠告を守らず魔神になったんだってね」

「……ヒカリ。違うな、外見から何から何まで違う」


どうなっている。

その疑問を問う前に相手が答えてくれた。


「ボクはね。彼女と彼が、お互いの足りないところを出し合って生まれたボクなんだよ」

「……なるほど。よくわからない」


彼女、彼。何処かで聞いたような気もするが……はて、何処で聞いたのだろう。

魔神の目的も叶えたことだし、俺も殴る以上のことが出来て一石二鳥。これから家に帰って優雅なバスタイムだというのに。


「誰だよ」

「……うーん、名付け親から忘れられるって寂しいな。ナンナで良いよ、そう呼んで」

「……すまん、名付け親? そんな名前知らないんだが」

「知らないの!? いや、覚えてないだけだよね」


お前がそう言うならそうなのだろう。誰だろう、脳裏にチラつくんだが影が薄すぎるせいか思い出せない。

ある意味わざと思い出そうとしていないのかも知れない。


「……まあ、良いや。ボクは海弟、君を超えたいんだ」

「ほお、ハイパーモードから一ランク落ちてスーパーモードの俺を倒そうと? 馬鹿め、俺はそんなに弱くは無いぞッ!」

「魔神とか、支配者とか、悲しみとか……それ抜きの戦い。しても良いよね?」

「勝敗は?」

「どちらかが死ぬまで、永遠に!」


……良いだろう。

戦後の疲労など感じさせない若々しい肉体を持つこのスーパー海弟が相手になってやろうじゃないかッ!!


さーて、読者の皆様ならわかっているでしょう。

けれども続くバトル展開。ヒカリさんは瞬間的に殺戮されると書いて瞬殺でしたが(違うと思う)コイツは何でしょう。


たぶんアレです。

女体化。

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