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第3話魔法使いとその試練

 説明し終わった後、俺はなるほどと一つ頷き今度こそ忘れないように頭に刻み込む。彫刻刀とかをイメージして脳内に刻みこむと何だかグロいことになってしまったので頭を振る。

 っていうか俺は記憶力はいい方だと思っていたのでショックだ。この色魔(かげる)め。俺の記憶力を混乱させるとは……。

 まあ許そうじゃないか。……特に理由はないけどさ。


「一つ質問をいいか?」


 影流が言う。ここは俺達四人しか居ないので誰かに聞かれにくい。この馬車を守っているのは信用できる部下……ってのが国政をやる奴の考える事だろうからもしも聞かれていても大丈夫だろう。俺も父親が現在の政治家だからわかる。


「何でしょう?」


 影流の隣を陣取っているファンが言う。

 真剣なように見えるのはきっと影流の顔が真剣だからじゃなくて影流に話しかけられたからだろう。つまりファンは影流大好きという事だ。

 何だか世の中の男子と言う性別が俺の味方をしてくれている気がする……。そう、俺なら殺れる。


「海弟、目の焦点があってないぞ」

「待ってろ影流。もう少しで神は下りてくる」


 さあ俺に力を!!


「おーい……ちょっと痛いかも知れないが」


 ゴツッ


 あっ、神よ!! 何処へ行ってしまわれるのですかっ!!


「く、あと少しだったものを」

「……俺がこの世界に来た後かはわからんが少しの間真っ白の空間にいたのだがどうなっているんだ?」


 俺は悔やみつつ会話の内容にに耳を傾ける。

 真っ白な空間……。ここに来るときにそこを通ったって事か? 確かに光の中に取り込まれたな。そこの事だろうか?

 けれども俺は森を見た気がするな。


「あ、私も」


 影流の言葉に青空が賛成する。

 ははは、俺だけ仲間外れですか?


 そんな悲しみを余所(よそ)に話はどんどん進んでいく。酷い!!


「あの、その話本当ですか?」

「ああそうだが……何かあるのか? 少し気になってな」


 なんか興奮するファン。顔が少し赤くなっているのが色っぽい。……不埒な事を考えた拙者を誰か斬ってくれ……。

 と、まあ冗談を言ってみたり……いや、思ってみたりか。

 俺はそんなに覚えれないので適当に聞いておくことにした。


「この世界では魔法が使えると言いましたよね」

「ああ」

「魔法使いはある条件の下成り立ちます」

「条件?」


 条件。

 それがどんなものかはわからないが、この世界の人間じゃないと魔法は使えないんじゃないだろうか?

 俺には関係ないだろう。影流と一緒に飛ばされてきたわけだし。俺が最初に飲み込まれたはず何だけどなぁ。


「その条件とはこの世界に産まれた時見る世界の光景です」

「何なんだその条件は?」

「はい、その条件の下(生まれた時)そこで起こっているべき事を想像するのが魔法です」

「想像」


 すいません。理解できない頭を持つお子様が一名紛れ込んでいます。

 少し簡単に説明していただけませんでしょうか? え? ダメ? そんなこと言わずに。

 ……いや、俺は理解しなくてもいいんだがこの世界じゃ魔法使いがわんさかいるんだろ?

 少しくらいはマジメに聞いて後は忘れればいいじゃないか。


「そうです。なので残念ながらお二人は魔法が使えませんね。異世界から呼び込むと同時に同じ現象が起こるというのは確認できましたが」

「そうなのか」


 この世界では魔法使いが貴重……というのは昨日の夜説明された通りだろう。

 その理由は生まれた時に見える光景なんて覚えている奴なんかいないからである。だが、極稀に使える者がいる。偶然、というか奇跡を起こす者。それが魔法使い。ドラゴンなども使えるが、産まれた時から記憶力がいいためそれでみな使えるという説が有力だ。


 二人は落ち込んでいるようだが俺は話の要点を適当に聞いて噛み砕いて解釈していただけなので何の話かわからない。って言うか冷静に考えろ。魔法が使えたとして魔力ってのが俺達にあるのか?

 対魔法使いの話は話してなかったのだろうか? あんまり覚えてないが別に魔法が無くてもこの世界が成立している限り勝つ方法はあるだろう。魔法がある時点で人間の発達方法が変わってくる。

 ……いやぁ、漫画って役に立つなぁ。


「んで、二人とも落ち込んでんだ?」


 魔法の話してたから魔法が使えないとか言われたんだろう。

 現にそんな感じの言葉を聞いて何か考えた気がする。


「お前聞いてなかったのか?」

「えっ、まあ……うん」


 そんなに重要な話だったのだろうか?

 まあ魔法に憧れる気持ちはわかる。

 ファンタジーの楽しみの一つは剣と魔法だからな。

 そして現在わかるのはファンの視線が痛いということだ。寒さすら感じる。この世に魔王が居るとしたらコイツだ。すでに復活していたとはこの魔王め!

 青空は苦笑いしている。


「貴方ははそんなんだからダメなんです。重要な話は聞きましょう。その、影流様みたいに……」


 怒られた。

 何でだろう……俺に非があるように見えるか?

 そして最後のは何なんだ……。


 だがファンの話をもう一度聞いて納得。

 ……終わった時には呆れ顔をされた……。

 最初の方はマジメに聞いてなかったからなぁ。最後のほうは覚えてる部分が多かったけど。


「ああそれか。俺は森の中にいたな」

「「「えっ!?」」」


 三人の声が重なる。町で歌えば金を取れるレベルだと思う。美声って重なっても美声なんだな。

 って言うか、ファンなんか立ち上がってるよ。それに頭ぶつけてしゃがみ込んでるよ。魔王はドジっ子か。

 まあ驚く理由はわかる。

 二人も使えないみたいだし、ファンは異界人の魔法使いを見たのだから。だがなんか納得いかない。



 ☆



 そんな気持ちは知ってか知らぬかファンはこんなことを考えていた。


『異界人は転移と同時にこの世界人と同様の魔法使いたちの試練(マジシャンズオーディール)という現象が起こること。それだけで十分。そう思っていた。だけどそうじゃなかった。この目の前に異界の魔術師がいるのだ』


 それはなんとも言いがたい感情だった。そして、何か訝しげだった。


 ぐっ、と黙るファン。


「何? 何か不味いの? 魔法使いは殺されちゃうとか?」


 それは無いだろうという発言をし黙るファン本当だったらどうしようと余計焦る海弟。これが自爆というやつだろう。

 そして不安になる。

 そう完全にその時俺は阿呆(アホ)だった。


「いえ。異界からの人間召喚はこれが初めてなんです。それで魔法使いがいるとなると……」

「なると? 別にいいだろ」


 何故焦るかわからない。いや焦った自分がバカらしくなる。

 不安など核爆弾で吹き飛ばせ。……いや、こっちには無いか。


 安心からか別次元の馬鹿さの頭でそんな事を考える海弟。

 それを見たファンが怒鳴る。


「何を言っているんですか!! これは世界的大発見なんですよ」

「いや発表できないだろ? しかも世界的と通り越して《『異』世界的》になると思うぞ、俺達の立場を思い出せ」


 もっともであるそんな発言で黙るファン。

 そんな発表したら異界から来たことをわざわざバラしてなおかつ調べられて勇者の件はまったくの嘘とばれてしまう。

 心の奥底でバーカ、バーカと海弟が言っているのを知ってか知らずか少し落ち着く。


「はあ、もっともですね」


 なんかビミョーに敬語じゃなくなっているファン。こっちが素なんだろう。

 海弟に敬意など不要だと言うのは合っている。同年代……、人間であれば同じぐらいの年の少女に敬語を使われるのは海弟としても違和感がある。


「あっ、もうそろそろ着きますよ」


 意外と近い国だな、などとファンと海弟以外の二人が思いつつ窓の外を見る。

 二人というのは影流と青空のことだ。海弟は寝違えて首が動かせない……。

 動かないので海弟は魔法の話を聞いてどんな物が使えるか考えていた。話では魔力が高ければいろんなことができるらしい。最大魔力は現時点ではわからないが森のことを思い出してみる。


 俺が見たのは、森、湖、雨、雷、風、そして雷に当たって木が燃えていた。


 この場合風は見た出なく感じたであり炎は雷で出来た物だ。

 それで気がかりなのがもう一つ。

 ファンは魔法使いの中でも最も多く魔法の種類を使うらしい。聞いたのは、水、風、地、炎、闇、それにこれが特殊で『音』らしい。

 特殊は使える者が少ないので貴重だ。話では魔力が一定を超えると身に付くらしい。


 まあその話は後にして、嬉しいことにファンの話が本当なら俺はそれを超えることになる。

 簡単に説明すると俺が使える魔法は六つ。その効果は――


 森=回復魔法


 湖、雨=水系魔法


 雷=雷系魔法


 風=風系魔法


 火=炎系魔法


 光=鎮静魔法


 だ。


 光と闇は太陽と月どっちが出ていたかによるらしい。俺は空が晴れていて雨が降っていたので変な感じだった。一瞬だったが台風の中に居るような感覚なのに空が晴れているという矛盾した感覚を得た気がしたから確かだろう。


 まあこれだけじゃ同じ六個だが一定の魔力を得る事が出来ればそれに加え特殊魔法がある。特殊魔法は同じ物は滅多に無いその名の通りの特殊な魔法だ。

 その魔法は絶対魔法使いならに誰しもが持っているらしいが条件としてその一定の魔力が必要なのだ。

 俺はまだわからないが必ずあるのでこれで七個だ。

 ……ふっ、勝った。

 今現在じゃあ魔力量でも魔法の種類でも……異世界一のファンには負けるけど。


 ニヤッと不敵な笑みを浮かべながら馬車から降りる。


 俺が主人公か?


 そんな事を考えながら無骨な城を眺める俺がそこにいた。


手直ししました。

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