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第379話魔神と悲しみ

シリアス、かな。海弟はぶっ壊してくれるので意見くれた人に従い退場させることにしました。

一瞬、瞬きをする一瞬のうちに世界ががらりと変わってしまった。

魔王といたはずなのに、ここは夜霧に満ちた神秘的な世界へと俺はさらわれてしまったよう……いや、その通りなのだろう。

俺はここから帰る方法を知らないし、第一に犯人がいるからだ。

犯人がいるのに罪はない、おかしいだろう?


「……こん、ばんは」


俺の目の前にいる人形みたいな少女が掠れた声で呟くように言う。

いや、本当に人形なのかもしれないという気さえ起きてしまうほど生気がない。


「お前が魔神か?」


挨拶などしていられるか。

少し戸惑った様子の少女を無視して顔を近づける。


「……違う、と思う。わたしの正体は神だもの」

「神?」

「そう、世界の支配者に唯一見限られた神」


喉が通ってきたのか声がはっきりしてきた少女。


……世界の支配者。

ここでその言葉を聞くことになるとは思わなかった。


「俺のことか?」

「……何を、言っているの?」


違うらしい。俺が世界の支配者になったことすら知らないようだ。

そうなると、俺がなる前の支配者なのだろうか。


「クォン、って名前知っているか?」

「……そうか。わたしのことは、誰も知らないと思う。一番初めの支配者としかわたしは出会ったことがないもの」


なるほど、ならば俺を知らないのも納得だ。


「それで、お前は何の神なんだ? 俺が会ったのは物語の神……だけか」


うわ、少ない。


「悲しみ」

「……悲しみの神?」

「そう、彼女には魔神と呼ばれていた。確かに、わたしには似合っている……」


長々とした話が始まろうとしている……止めなければ!


「彼女は――」

「あいっさー、ほいっさー。よっ! ほっ!」


俺の俺による魔神の長話阻止のための踊り。

なんだか意味が二重する部分があった気がするが気にしない。


「何、しているの?」

「いや、あれだ。急に踊りたくなったんだ」


踊りをやめて魔神のほうを向く。


「さて、魔神の力とやらをもらおうか」


利き腕である右手を差し出す。


「……もらう? そうね」


黒っぽい光へと魔神の体が変化していく。

そいつは俺の周囲に集まっていき俺の体に吸い付くように動き、俺の体中を真っ黒に染め上げる。


「わたしがあげるのはわたしの記憶とわたしの能力だけ。あとは少しだけ力を強めることが出来るぐらいかな」

「ほお、魔王が求めているのはその能力とかいうのの一つか……」


あるいは複数、約束しちまったからそれだけは守らないとな。

数年放浪して約束を忘れたととぼけるのも良いが。


「それでね、海弟――」


この時、俺は何故俺の名前を知っているんだ? という疑問で俺は頭がいっぱいだった。


「――魔神は何度でも復活するんだよ」

「ふっ、そうだな。俺は魔神の力を受け継ぐ……ッ!?」


体中が熱い。物凄い違和感が俺を襲う。

ありえない、記憶。そうだ、それに近い。


何かが迫ってくる。狂気でさえも怯えて消え去る人格を壊す何か。

記憶に近いそれは俺を――俺の人格さえも消し飛ばしてしまう。


怖さなんてものじゃない。恐怖なんてものじゃない。

鳥肌が立つ程度のものとは違う、完全で完結な悲しみ。


後悔などする合間も与えられず続けざまに振って沸く悲しみは俺の心へと直接入り込んでくる。

聞きたくないものが聞こえ、見たくないものが見えてしまう。


「あなたも耐えられなかった。当然、だよね。わたしの背負っているものは重過ぎるもの」


その言葉とともに、俺の周りにまとわりついていた闇は消えた。

いや、体内に入ったというほうが正しいかもしれない。


それと同時に、違和感は消え……俺の人格は粉々になった。





魔神の塔、頂上では魔王が一人突っ立っていた。

下部は大きな魔法陣で敷き詰められた異空間発生装置だというそれは魔神の封印された大変危険な場所でもあった。


ここからでは見えないが、地上では海弟の部隊連中が帰り支度をしている頃だろう。

勇者とも合流しているはずである。


「あの勇者が、ここでの話をすべて語る……はずがないからな」


しみじみと呟いていると、地震とは違う……何かが足元を揺らす。

魔力の動きが活発化していっている。魔王はそれを感じ自ら足場を捨てる。


「と、待て。ここは物凄く高い――」


言う前に落下が始まる。

そして、魔王が最後に見た光景は漆黒の翼を一対持った少年が天高く飛んでいく光景だった。





悲しみの神、彼女が背負う悲しみは……溜めに溜められた人々の悲しみの全て。

一人の人間に耐えられるはずのないトラウマなのである。彼女は確かに特殊な力を持つ神だった。けれども、心はただの少女なのだ。

支配者に生み出され、心を与えられ、役割をもらったただの少女だったのだ。


そんな彼女が人の悲しみの多さに耐えられるはずもなく、狂気に支配され……それすらも超え人格を破壊され、粉々にされ、消え去る頃……彼女の中に残っているのは力だけだった。

恨みではない、悲しみではない……特殊な気持ちで……理由で彼女は動いた。


魔界に降り立ち闇の魔法を手に入れ暴れた。悲しみを生む知性のある生物をすべて殺してやろうと。


しかし、無理があった。

支配者の下で何をしようとも無駄。無意味。


魔神の封印という結果に終わったその事件。

第二幕、第三幕もそれ以上の回数あった大きな事件。


その最終幕が今、開かれた。





遥か上空に少年のものと思われる高笑いが響いている。

悲しみの神の、背負うものに押しつぶされ……心を削り取られ……体を乗っ取られた哀れな少年だ。


「今度の媒体はオトコですか。体がないから確認のしようがありませんでしたが、名前で気づくべきでした。あの玉座も役に立ちませんね」


笑いをやめると呟く。

本当にイラついているようだった。ころころと感情が変わる様子に愛くるしさなどなく、本当に邪気を放っているかのような気味の悪い光景だ。


「彼女には……やってやられて、わたしから全てを奪って来た彼女には……今回こそ死んでもらわなければなりません」


喜びも、恐怖も感じられない声音で呟くと何も無い空間から剣を引っ張り出してくる。

黒の剣、魔王の持つ剣だ。


それを見て微笑する少年。


「……悲しみは生まれます。人がいる限り」


ヤミの彼女が持つものは、悲しみ……それに邪悪な力、少年の体だけである。

ヒカリの彼女が持つものは、愛しき人に、正義の力。


これだけ、これだけなのだ。

世界をどちらも背負ってはいない。今、この世界に支配者はいない。


「悲しみの無い世界! 悲しみを持つ人間がいない世界! それがわたしの理想郷……」


闇を振りかざし、世界を変える。

彼女は魔神。





まるで戦場。

まるで虐殺。


戦闘は行われている。魔族の力はそれほど弱くはないのだ。

しかし、対等ではない。魔神へのダメージは限りなくゼロ。闇に近いその攻撃では魔神にダメージは与えられない。

対する魔神の強さは比べ物にならないほど強い。


「魔族は強いよ。心も強い、今もなお変わらないんだね。安心した、わたしの望む世界はここなのかも知れないな」


人間、とふと頭の中に浮かぶ言葉。

彼らは弱い。体も心も。


「アハッ、人格を三つに分けて、一人を案内役、一人を門番、一人を本体に……。ヒカリの封印も完璧ではない、証明されちゃったねぇ」


塔の方を見れば、山崩れを起こしたかのような、土砂崩れの光景がある。

異空間にある本体を、魔法陣の中から自力で引っ張り上げたのだ。そのせいで魔法陣は暴走……塔の破壊へと繋がった。


「でも、もう一度来てくれるってわかっているよ。人間を、もう一度殺しに行けばね……」


悲しみを背負った彼女は、ヒカリと呼ばれた少女に挑戦する。

何度目かもわからない、それゆえにこだわりを持つ戦いを……。


魔神=悲しみの神


この設定はゆずれねぇ。

それと、いくつかのエンドを考えているわけですが……うん、大変だ。

海弟は外道ですからね。最後の最後でぶっ飛んだことするから……。


あれですよ、もっと熱血してほしいわけですよ。


……これ以上書いてたらネタバレしそうな勢いなのでここらで後書き終了。

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