第378話魔神の力と玉座
Lendolさんを見習ってみた。
……まあ、うん、アレですが。
これ読んだあとに彼(?)の作品も読んでみてくださいな(何で自分が言ってるんだろう)。
全部読めばどれを見習ってみたかはわかるはず……。
「どうした勇者! 動きが鈍いぞっ!!」
俺の動きにワンテンポ遅れる勇者を怒鳴りつける。
「あんたが蹴ったからでしょうがっ!!」
『むごごーっ!!』
「……蹴った?」
「忘れてる!?」
『ふごごごっ!』
まさか、悪は無限、正義は有限……ってな。
ほら、覚えてないものさ。悪いことはしても忘れることで俺は清らかな心を持っているのだ。
ちなみに体はけがれまくっているだろう。
「まあ良い。はやく火の魔法を付けろ」
「わかってるって」
『ふぼぼっ!? ぼばーっ!!』
「うるさいぞ。今から炙りを開始する……というか開始している」
「宣言通りにやるものどうかと思うぞ、海弟」
「言うな、魔王。やると言ったからにはやったりやらなかったりするのがオトコだ」
いや、それが人間だ。
どっちでも良いや。中身が気になるのだよ!!
「生身だとすれば何を食べてきたんだろう。壁?」
「床でしょ」
「思うに素材は同じだろう」
『ぶぼっ! ぼぼぼぼっ!!』
いやぁ、暖かいですなぁ。
硝子龍の方はと言うと――白の剣の圧倒的パワーの前に一瞬で消滅するという変態的な死にかたで終わった。
というか勇者はここまで一人でこの塔を登ってきているのだ。それを出来てもおかしくはない。
「というか魔王も出来たんだろ」
「いや、能力が封じられたとお前が言ったから武器の能力も使えないかと思ったのだ。どうやら武器の能力は封じられていないらしいな」
「ほお、試してみよう」
発光する剣、名づけてして『発光剣』を取り出す。
この名前で呼ぶのは今回が初めてで今回が最後だろう。
剣の特殊能力である発光を使ってみる。
すると何故かはわからないが、いつもより数倍輝いて見えた。
「そうか……うん、わかった。命の輝きは儚いんだな……」
コイツが死ぬ、その合図だろう。
そんなことを思っていると光が消える。
「今までありがとうっ! ここで眠れ――」
「待ちなさい。魔力を入れれば戻るし、第一切れ味に影響ないでしょ」
そういえばそうだな。
すまない、お前の亡骸はこの手に収めておくことにするよ。
いつか復活させるからね。光る能力はなかったほうがマシに思えるからいつになるかわからないけど。
「あ、溶けている」
「溶けている?」
勇者の視線の先を見れば騎士が溶けていた。
いよいよ中身が! と思いきや中は空洞で何も入っていなかった。
「……スカか」
「ちっ、惜しい」
「基準がわからん」
干からびたスルメが入っていたら合格だったのに。
まあスルメは元々干からびているんだけどな!
「まあ良い。ここからは魔王、お前だけで行くんだ」
塔の中央を指差す。騎士を倒したことにより魔法陣が出ているはずだ。
「待て、おかしいぞ」
「どうした魔王?」
中央を見る。魔法陣が現れていない。
変わりに男が立っていた。六十階で会った男だ。
『いやはや、九十九の試練のクリアおめでとうございます。そして、百個目の試練なのですが――』
コイツと戦え、とかか?
ひょろっちいからすぐに倒せそうだな。
『力、そのものに受け入れられる相性診断をしてもらいまーすッ!』
「なん――ふざけているのか!」
『アハッ、良いアクションです。最高です。しかし、ふざけてなどいませんよ?』
「……力に受け入れられる、とは何だ? アレか、力そのものに意思でもあるっていうのか? それと魔王、落ち着け」
手に入れたかった力が目の前にある、なのにこの道化師みたいな男はふざけている。
わかるぞ、その気持ち。主に道化師のほうの気持ちがわかる。焦らすのって楽しい。
『勇者サマでしたね? あなたは勿論、論外です。必然的にその息子サマも……と、言いたいところですが。大変言いにくいのですが、適性はあるようで』
「おお、俺はいつの間にか悪の化身になっていたのか!?」
「納得がいくわ」
「うむ」
……二人して何を言うか。
俺はな、虫は殺すが人は……うん、正義の行いをする素晴らしい人間なのだぞ!
『では、塔の頂上へごあんなーい!! 勇者サマは入り口へお帰りください、アハッ』
俺と魔王の目の前に現れる魔法陣。
えと、これは俺も乗ったほうが良いのか?
「俺は適性があろうと辞退したいんだが……」
『ノンノン、辞退するのは自由ですが……帰れませんよ? 良いのですか? 一生ここで暮し続けるのですよ? 楽しいことなんてなーんにも無いんですよ?』
「……わ、わかったから。行くから。魔王、悪いが一緒に行かせてもらおう」
「なに、遠慮することはない」
うむ、寛大なり魔王。そなたに天下を授けよう。
蟻を率いてお菓子集めに精を出せ。
何処の天下だ、それ。
どうでも良いか。
目の前の魔法陣に入る俺達。
勇者はと言うと――いない!? 帰ったのもう!?
あっ、違う! 鎧を漁ってるよこの人!
転移ストープッ! 無理だね。
☆
風が吹いているためか目が自然と閉じる。
たぶん、ここが頂上なのだろう。今まで下へ下へと向かっていたが――異空間から脱出してどうやら現実へ戻ってきたらしい。
と、なると本物の塔の上なのだろうか?
『結界を張ります』
その声とともに風が消える。おかげで目が開けるようになった。
「……玉座?」
『はい、適性はあちらで調べられまーす。アハッ、検討をお祈り――』
「待て、一つ説明してもらいたい」
『……何でしょう?』
とぼけたように言う男。
こっちは疑問だらけなのだが一つに絞ってやる。
「今まで居た異空間、それとこの塔……どんな関係があるんだ」
『ああ、そのことですか。問題ないですよ、答えますよ、必要以上に明確にね!』
一々言葉を並べるな。
『この塔、そうです魔神の塔とでも呼びましょうか。そこには異空間を生み出す装置が生みこまれているわけですね! そうです、一階から九十九階までぎっしりと魔法陣と魔力で埋め尽くされているわけです。そして塔の内部に入った者を転移させ……異空間へ運ぶわけです。そこで九十九の試練を受け、ここで百個目の試練を受ける。それが百の試練の全て!』
「なるほどな。誰かが魔神の力を手に入れたらそれで終わりなのに、異常に手が込んでいるな」
「封印と言っていたぞ。そう言えば……」
ああ、そんなこと言っている奴もいたようないなかったような。
名前知らないから気にしなくて良いか。知っていても気にしないが。
「とりあえずお前は帰っていいぞ。腹減ったろ」
『おお、現在お昼ちょうどでございます! ぴったり! イッツアマジック?』
「HAHAHA、俺の体内時計は天性の才能を持っているんだぜ、イェイ!」
洒落のわかる奴だ。
「お前、将来リストラされたら俺の部隊で雇ってやろうじゃないか」
『アハッ、ありがたいです。でも、まあ……魔神の力を手に入れられたら、の話ですがね』
「魔王ならやってくれるさ」
『一応、期待はしていますよ』
そう言うと男の足元に魔法陣が現れる。
転移用の魔法陣だろう。メモしたいところだが今はやめておく。それ以前に紙を持っていない。
「魔王、乗ってみろよ」
「表現がおかしくはないか? 座る、だろう」
「画鋲とか置いてあったら痛いだろ」
「……そんなイタズラする奴はいないと思うが」
「前の前の前の前、ぐらいの挑戦者が自分に適性がなくてばら撒いていったかもしれない」
恨みという奴は怖いのだ。
それこそ画鋲をぶちまけるぐらいに。
やれやれ、といった様子で玉座に座る魔王。
数秒が経過する。
「……何もないみたいだが。故障か?」
「いや、違う。我の脳内に直接……」
おおうっ! 何てことだ、俺には結果が伝えられないというのか!
いや、魔王から聞けばいいんじゃないか!
HAHAHA、今日の俺はやけにアメリカンだぜ。
「ふっ、そうか。キサマの力は、誰も手に入れられない境地にある……ということか」
「その口ぶりだと魔王。失敗か?」
「そうみたいだな」
「ちゃんと脅しもかけたか?」
「いや、待て。おかしくないか?」
おかしくはない。
塔を壊して橋を壊さずと前々からずっと言ってきただろう!
言ってきてないけど。
「ふ、まあ良い。俺も挑戦してみるとするか。力を手に入れたら魔王、お前のためにも使ってやろうじゃないかァ! はっはっは!」
どすんっ、と椅子に座る。
『不合格』
「いきなり!?」
女性の声でいきなり告げてくる。
せめて焦らせよ。焦らして焦らして焦らして焦らして、合格させろよぉ!!
ダメなら焦らさず合格でいいから。
「ええい、この玉座破壊してくれる!!」
「ホントに脅しをかけているな……」
何を言うか。これは俺の怒りであり悲しみなのだ!
何故俺のすごさがわからない!
世界は泣いているぞ!!
『破壊はダメだって。壊したら次のチャンス無くなるよ?』
「裏切り者には死を――わかっている、お前は木製だろう? 薪代わりに使ってやるよ」
『……はぁー、うちの出番これで終わりかい。姉さんのことは頼んだッ』
「姉さん? 何だ、二つ目の声が出てくるのか?」
『あなたは合格です。はいー、壊されたくありませーん』
そう言うと玉座がその場から消える。
「必殺空気椅子ッ!!」
……ふぅ、何とか間に合った。
しっかりとした立ち状態になると周囲を見渡す。
「とりあえず魔王。合格らしい」
「……強引な」
はっはっは、知るか。
前書きのこと――覚えている人はいますか?
いますね、きっといます。
眠たいです。
さて、今回海弟と勇者のぶっ飛びぶりは大宇宙を超越していたので、シリアスへ持っていく準備をしておかないとなぁ(関連性ゼロですがね! まあ、着々と物語は進んでおります)。