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第375話『まだまだ登るぜ!!』by海弟

思ったのです。

最近外道成分少なめだな……と。


世界解放のとこから引っ張ってくるの大変でしたが……あと三十話もあれば魔神編? も終わるはず!


読者「終わらないな」


はい、おっしゃるとおりでございます。終わらないと薄々感づいています。

ことの始めは――そう、僕と彼女が出会った時。

彼女はすごい力を持っている。誰にも触れることが許されない、しょうがないよね。人を殺すほどの力を持っているんだから。


何処で会ったかはわからないよ、どんな展開でそうなったかも。

その時僕は彼女の手を握ったんだ。どんな手よりも暖かい手がそこにはあったんだ。


それから――異世界のことを知って、さまざまな人種……文明、を知識として彼女に教わった。


そこで僕は海弟を知ったんだ。それから気になって気になってしょうがなかった。

海弟が異世界を渡ったのを見たときは嬉しかったよ。


自意識過剰かも知れないけど、この人は僕……いや、不思議な力を持つ……僕の隣にいる彼女にも敵う実力を持つに相応しい人物になるんじゃないか? ってね。

でも、彼女は言うんだ。この人は弱い、ってね。だからさ、見守っているだけだったけど会いに来たんだよ。

結構ピンチな展開みたいだったしちょうど良かったでしょ? あ、気絶していたか。


まあ良いや、ここまで言えばわかるよね?


「彼女よりも海弟、君は強いよね? ずっと僕のヒーローであり続けてくれるよね?」





……うーむ、何だか壮大な話だなぁ、と聞き入っていたんだが最後に何を言うんだキサマ。


「つまりコイツと戦え、ってことか?」


ナンナの背後にいる女を指差す。


「僕は必要ないと思うんだけど、ね」

「ほう。で、この女は何者だ。あと、お前はそこらにいる一般人なのか? 違うだろ」

「違わないよ。気づいたら彼女といた――そんでもって、彼女は……光っていう種族らしいよ」


……光、か。

クォンと同じ種族。アイツと最初に会った時は――確か愛のために世界を正すっ! とか壮大なことを言っていたな。

他人のこと考えやがれ。


さて、今回もこの光さんは、たぶんだが……愛のためにとかいう理由でやらかしてくれますよね?

口調的に気になる感じだったし。


「お前が一般人なぁ。まあ良いか、俺は忙しい。魔神とやらの力を拝みに行くんだ」

「……魔神」


ナンナの後ろに隠れた女の眉が動く。


「その力は、あるべき場所に収まっている。動かしてはいけないもの」

「俺は難しい話はわかんないんだが……魔王が魔神になるんだ。良いことだろ」


世間一般的には悪いことに思えるような気もするけど。

というか世間とはかけ離れているけど。


「馬鹿を言わないで! 魔神は――彼女は眠らせておかなきゃいけない、唯一の堕落した神――」


ハッ、とした表情になる。

余計なことまで言った、そういう風な感じだ。


普通に考えれば後半部分だよな。

魔神とは彼女――ナンナが言う彼女の言う彼女。


説明するときめんどそうだ。


まあ、その後にも気になることがあるが……魔神が堕落した神、というのは別に不自然じゃあないだろ。

しかし称号とか、そんな風に言っていた気もするが――


「手に入れなくてはならないのだ。私利私欲のために使うのではない、お前達の言っていることが本当なのはわかった。しかし、我もここで引き下がるわけにはいかない。見逃してはくれないか」

「そうだ。見逃せこの野郎。ナンナ、コイツに言ってやれ」

「ダメだよ。この話については……彼女が正論だ。魔神は危険なんだ」


どう危険なのか説明してもらおうか、と言おうかと思ったが無駄に長い説明をしそうなので飲み込む。

それに説明出来てしまったらこっちのペースが崩れる。


「魔神は危険? わかった、魔王が暴走したならば――この俺がブッタ()ろう」

「無理だ! 彼女でも――封印するのが精一杯だったのだから……」


背後にいる女を見て言う。

コイツは魔神と戦ったことがあるのか?


聞く前に俺の腕がつかまれる。


「行くぞ」

「魔王……その台詞は俺が言うべきだろ。じゃあなナンナ。忠告は無視するからそのつもりで」


魔法陣の上に乗る。

これで諦めてくれたら良いのだが……まあ追ってこないだろう。

俺達が聞く耳を持たないことはわかってもらえたはずなのだから。





これで五十九階。次は六十階だ。

薔薇のお化けみたいなのを倒し一先(ひとま)ず休憩をする。


「敵が強くなってきているな」


地面は硬いので塔の壁に背を寄せて言う。

その隣で同じ格好をしている魔王が「そうだな」と呟く。


こちらは大して苦にしてなさそうだ。

俺としては大有りなのだが。


「次の階で今日は休もうぜ。そろそろ魔力も尽き掛けなんだよ!」

「珍しく後衛に徹していたからな。それも良いだろう、ただ昨日より効率はよくなっている気がするがな」


それはそうだ。俺の適応能力をなめるなよ。

魔王が剣を振るう中魔王を狙い魔法を撃てば魔王が避ける初期の頃に比べだいぶ上達してきているのだ。


魔王が誘導し、俺の魔法攻撃に当てるなんていうコンビネーション技だって一つや二つ出来ている。

やはり自然と身に付くものなのだ。


「休憩ついでに、あいつ等の言っていたこと……どうするんだ?」

「我に聞くか。あの忠告はお前に言っていたことだろう? お前が降りても我はこのまま進むだけだ」


うーん、少し考えてみるか。


と、まあ普通ならなるわけだが、それも面倒だ。

俺は最初に何を決めた!


「俺は魔神とやらの力を見に行くんだ! それ以外に選択肢はないっ!」


人生の中で選択肢などたくさん出てくるだろう。

その中で一番良いものを見抜く力なんて誰も持っていない。けどな、自分が一番だと思う選択肢を選ぶ権利はあるんだ。


だから俺は最初に選んだコレを貫き通すのみっ!


「何かヤバイことが起きそうなら魔王を盾にすれば良いし」

「ならんぞ」


いや、なれ。


「さて、休憩終了。ダッシュで魔法陣まで行くぞっ!!」


五十階は植物系で統一されていたからな……六十階からは何系で統一されているんだろう。





足元の魔法陣の輝きが薄れる。

そういえばコレも転移魔法の一種だよな。珍しい……とか思いつつ視界の中にいない敵を探すために首をまわす。


「うん? いないぞ、魔王」

「かと言って……魔法陣もない。このまま通らせてはくれないようだがな」


うーむ、何かある……ということか。

何があるのだろうか。


ちらりと魔王のほうを見る。最悪の展開が浮かんだのだ。


魔王と戦い、勝ったほうが次の階へ進むという最悪の展開が。


張り詰めた空気の中――視界の隅になにやら光が映る。


急いでそちらの方向を向けば何者かが立っていた。

格好はレザーアーマーを着崩(きくず)し、腰に携えた一本の剣。一番特徴的なのが黒目黒髪と――まあ、何だ。

何て言えば良いんだ。


「勇者、か……」


そう、それだよ。何で母さんが!?


「へぇ、珍しいわね」

「んなこと言ってる場合か。何で居るんだよ」

「塔を登ってきたのよ。一日経ってもあんた等戻ってこないし、私が戻らなかったらみんなには帰るように伝えてきたから安心して」

「安心出来るか」


何て展開だよ。


「また、誰か来たようだぞ」


魔王が言う。視線の先には――何やら顔の見えない男性が立っていた。

顔が見えない理由としてはローブを着ているからだ。黒色のもので、明るいこの空間には似合わない存在のようにも思えるが、今回の敵なのだろうか?


『戦いたい、その欲望……お気づきでしょうか?』


お気づきでありません。


『彼女、勇者は魔王と戦いたいと望んでいる。対する魔王は――どうでしょう? 彼の気持ちは混沌としています。勇者に対し明らかな敵意を持っていません』

「何の話だ」


魔王が言う。


『わかりませんか? ここで【あの時するはずであった一戦】をしてもらうのですよ』

「なっ」

「良いわねそれ。乗ったわ、当然魔王は逃げないわよね?」


魔王のほうを向く。

断ったら、この先に進めないのだろうか……。勇者が塔の頂上を目指す権利が与えられる。そいうことなのだろうか。


「断らなかった場合、海弟はどうなる」

「そうだ。俺はどうなるんだ」


【あの時するはずであった一戦】の中には俺は含まれて居ない。

まさかここで脱落なんてことはないだろう。


『アハッ、彼には一人で頂上を目指してもらいますよ。勇者、魔王……君達に魔神を目指す資格はありませんもの』

「何だと?」

『この場にいる、ワタシ以外の皆さまは魔神の存在をよくわかっておりません。単なる巨大な力……そうお思いでしょう。けれども違います。彼女は意思を持っています。記憶という名の意思を。それを受け止めるには一度壊れたことのある心を持つ者ではなければいけないのですよ。わかりますか? そこの……海弟様?』


俺か?


……壊れたことのある心ねぇ。

確かに、その条件には適しているかも知れない。何度狂気に蝕まれたことか……、それに任せる俺もアレだがな。

かなり性格が変わったと自分でも自覚しているし。


「待ってくれ。一つ聞きたいことがある」


片手を上げて言う。

気になることが一つあるのだ。


『何でしょう?』

「いや、お前じゃない」


勇者の方を向く。


「おい、勇者! 人格そのものが吹っ飛びそうになったとか言ってなかったか?」

「ラララー、私は恋する乙女っ! 心なんて壊されたことはないのよーん♪」


そうですか。


納得したくないが、本人が言うなら仕方あるまい。

この男もそう言っているし。これ以上言っても無駄だ。


「魔王、勇者を倒せよ」

「わかっている」

「え、ちょっと!? そこはおかーさんの応援するべきじゃない?」

『では、次の階へ送り届ける』

「あ、そういや勝った奴はどうな――」


体か軽くなり視界が歪む。

遅かったかっ!





「……勝った奴がどうなるか、聞きたかったんだけどなぁ」


魔王が勝ったのならば、再び協力して戦えるかも知れないと望み薄の期待をしているのだが……。


「まあ、期待だけはしておこう」


望みに変わらなければ良いのだ。


ズズズ、という音。見れば――馬に乗った騎士の書かれた肖像が現れる。


「ええええええ!? 絵? 六十一階からは絵ですか!?」


楽勝だ。楽勝だぜ。楽勝だぜ、ヒャッハー!!


あの時の一戦……まあ、コレは自分が書きたかったから加えただけです。

勇者と魔王の一戦……どちらが勝っても利益はない。世界は既に救われたのだから。


けれども、勇者は貪欲なのです。

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