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第365話空腹とおんぶ

何でこんな話書いているんだろう。

姉妹強調した話を書く予定だったのに……。

見よ。どんぐりを口の中に含むリス!


いえいえ、両頬を殴られたせいで腫れているだけですよ。

はは、はぁ……。


家族なんだから良いじゃないか。

そりゃあ繋がりの薄い方とは言え可愛い可愛い息子を殴るか普通っ!!


殴るな。あの性格だし。


摩りつつ縫い目も(あら)く、手作業で作ったことがわかるような服を着た勇者を後ろから眺めつつ歩みを進める。

川を越えたところ、というだけあってやはり植物が豊富でさっきから見たことない動物ばかりを見る。


魔物と動物の違いなんて把握できていない俺だが襲ってこないヤツは全部動物ということで良いだろう。


「ああ、あの動物達が食われるのだと思うと……やりきれないなぁ」


それが彼等の宿命だ。さあ歩みを進めろ、海弟。


さすがにそれで騒ぐ俺じゃあない。

命が重いのはわかるがそれは自分のものだけだろう?


自分の命の重さしか自分にはわからないものなんだよ。

殺しをした奴が感じるのはただの恐怖。目の前で虐殺される風景を見てしまった奴が思うのも恐怖。


のほほんと危なげなことを考えつつ進んでいると何かにぶつかる。

シュリの背中だ。


「腹減った」

「餓死しろ」


しかし俺の行く道を塞ぐとは良い度胸だ。

コイツには何かしてやらねば。


「……案外思いつかないな」

「何が?」

「知るか。思いつかないものは思いつかないんだよ。良いからどけっ!」


拳を振り上げる。

俺の拳は百万馬力なんだぞ。


「む、無理……」

「しょうがない。倒れろ」

「……はい」

「踏むが我慢だ」


さて、障害物クリア。


「って、ちょっと待てぇっ!!」


いきなり起き上がるシュリ。

そのせいで次の一歩が踏み出せず思わず鳩尾へ踏みつけ攻撃。


「うえっ」

「おお、ごめんごめん。痛みで声も出てなかったな、今」


目が泳いでいるシュリを視線の端に留めておきつつ連中を見る。

何と、見捨てられた。


先へ進む奴等に魔法をぶちかましてやろうかと考えたがある事に気づく。

というか何故さっき気づかなかったんだろう。


「魔界じゃ、魔法使えないはずなんだけどな……」


魔族は魔力のコントロールというものをしない。

そのせいか魔力が常に体外に溢れさせている状況になっているのだ。全ての魔族がそうならば、やはり世界一つ単位で魔力が溢れていることになる。


そうなれば俺は魔法を使えないわけだ。まず体外に自分の魔力を出してから俺は発動するからな。

他の奴等のように体外に出た瞬間に魔法に変わる……なんて芸当できないからだ。というか俺だけ異常なんだけどな。


「……ふむ、この森が……魔力を吸っているのか?」


いや、だとしたら逆の意味で魔法を使えない。

魔力が吸われては魔法を発動する前に吸収されてしまう。


「偶然魔力が薄い、ってだけ……か」


今はそれで納得しておこう。


思考を終え目の前の現実に目を向けることにする。


「水で腹を膨らませることだな」

「うげぇっ。ひでぇよそれは」

「知ったことか。お前良く太らないな、コレで」

「へへっ、体質ってヤツだよ。しかし水か」


考えながらも水を飲み始めるシュリ。

ああ、それで良い。


「膨れないだろコレ」

「頑張れ」


とりあえず妥協してもらい動いてもらう。

前の集団は見えないがこの道は真っ直ぐだ。大丈夫、すぐ追いつく。


「走るぞっ!!」

「ちょ、いきなりかぁっ!?」


その(とい)(とう)はない。

少女よ、走れ……天を目指してっ!!



よーい、ドンッ!!


競争相手はすでにぐたぐたなのだが前の集団目指し走る。


後ろを向けば何とか追いついてきている模様。

ならばフルスロットルだ。


「『林我』第二『風軽』」


風と皮膚が摩擦するのがわかる。

それ以上に、筋肉が限界を迎えていることもわかる。


疲れのせいか体が重く感じる。

付いてきているか後ろを確認するが、いない。


「いないっ!?」


どすんっ


一度止まり周囲を見渡す。


確かにいないな。

というかどすんっ、って音が気になるぞ俺は。


下を見れば土塗れのシュリさんが。

不正は許さんぞ、テメェっ!!


「自分の足で走れ」

「あ、あれが走るって言うか!? 捕まっているのでこっちは精一杯だったんだぞ!?」

「君なら出来る。明日は逃げたりしないんだ、自分のペースで走ると良い」

「良いこと言っているんだろうけど場面違うだろ。ったく、おんぶ」


脈絡もない!?

おかしい、何故いきなりおんぶになった。


しょうがないのでシュリを背中に装備する。

少し重い程度だがさっきよりかマシに感じる。というか聞こえてくるたぷんたぷん、って音はシュリの中の水の音か?


「カウントいくぞっ! 三」

「二」

「一」

「二」

「三」

「四」


はじまらねぇ……。


というか、一の後はスタートかゼロと言ってくれ。

二じゃあやりなおし。いや、終わりのないカウントになるぞ。


「走るからな」

「おうっ。行っちゃってくれ」






数分後、そこには疲労する海弟と空腹で仲間達に介抱されるシュリの姿があったとさ……。


ふふ、何だよ……コレ。


海弟は意味のわからないところで意味のわからない名言を残していきます。

それは海弟自身が意味のわからない行動ばかりしているからです。


説明すら意味不明だな。


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