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第363話始めての戦闘

初めて? と思う人もいるかも知れませんがこのパーティで戦うのは初めてなのでこのサブタイでOKです。

森。表現するならそれが適している。

何故ならば、木々を生やしたその空間は林と呼ぶには濃すぎたし、華麗な装飾の一つもない森だからだ。

と、まあ説明しているがさすが魔界というべきだろう。普通の森に見えるのに何処となく禍々しさを感じる。出来るならば進みたくないところだが魔物程度で怖気づくのは俺の背中で丸まっている妹の方だけである。


「ちなみに姉の方はずぼらである」

「ず、ずぼらって何よ!! あんたの方がだらしないっての」

「はん、俺はいざとなった時に役立つ男だから良いんだよ」


疑いの眼差しと共に妹の手を握り俺から離すずぼらな姉、略してずぼらーね。


「キクさん、案内は?」

「残念だが居ない。前人未到の森を突き抜けるというのも面白いものだろう?」

「そこに面白さは感じないな」


前人未到? 魔王が突破しちゃってるじゃないか。

この先に魔王の家があるという時点で前人未到ではないのだよチミ。


俺の中の面白センサーの反応は一よりも低くゼロよりも少し高いというところで停滞中である。

ならば一以下ゼロ以上、つまり動くのも面倒なところである。


「森を燃やそう」

「住んでいる動物はどうなる。少しは考えろ」

「どうせ肉食系魔物に食われるんだから少しぐらい丸焼きでも良いだろ」

「いや、意味わからないぞそれ」


ったく、しょうがないので普通に進んでいくことにする。


いつでも敵に襲われても良いように細心の注意を怠らず進んでいくこと数時間、まだ森を抜ける気配はないが何やら水の気配。

キクさん部下Aは耳がいいのか「この先に滝があるようです。そこで休憩しましょう」と提案していた。俺も歩くのが嫌になってきた頃だし、休むのも良いだろう。


歩くこと数分、これぞ秘境の神秘……そう言っていいほど神々しい滝に俺は出会う。

その他数名も何も言わずに数秒じっくり眺めていると、はっとしたようにキクさんが俺の肩を揺する。


「水辺に魔物がいないか確認してきてはくれないだろうか?」

「んなの部下にやらせろよ。いたら一人じゃ危険だろ」

「可愛い部下にそんなことはさせられるか」


……可愛い部下ね。


童顔の魔族の男を睨みつける。

はっはっは、君には死刑がお似合いだ。ある日突然殺しにいくから待っていろ。


そんな人生の楽しみを見つけたことによる笑みを浮かべながら水辺へ魔物がいるかどうか確認していると――水の中に映る影が俺に近づいてくる。


「ん? ……んー」


魔物だな。


それはゆっくり近づいてくると水面から顔をあげる。

それだけでもかなりの水量を俺に浴びせることとなった。


特徴としては硬そうな鱗。更には長い胴だ。

水の魔法を使いそうな外見をしている。


「いたっ! 魔物いたっ!」

「見ればわかるっ!! お前達、いくぞっ!!」


部下に声をかけるキクさん。俺の部隊の奴等も俺の周りに集まってくる。

幸いなことに相手は一体。大丈夫、勝てる戦いだ。なんなら俺一人でも良いぐらい。


「あの魔物は……水のあるところで戦っては不利だな」

「こちら側としては初めてみる魔物なのですが、どのような特性を持っているのでしょうか?」

「ああ、あれはだな――」


などと後ろで副隊長等の話し声が聞こえてきたが関係無い。

水のないところで戦えば良いんだろう?


「俺が引き付ける!! あとの奴等はどんな武器使うのか知らないが――兎に角相手にダメージを与えることだけを考えろ!!」


体を『林我』で強化し、更に白の剣ではなく俺の発光する剣を鏡の中から引き抜き構える。


「そらぁぁぁぁぁああああ!!」


横殴りの一撃を相手の胴に叩き込む。

水の上をすべるかのように後ろに吹き飛ばされる魔物。斬らずに吹っ飛ばす……更に俺の剣の刃を痛めるという最高の作戦により逆方向の岸にあがる魔物。


「逆側の岸へあげてどうするんですか……。攻撃がこれでは届きませんよ」

「え、でも遠距離攻撃――」

「戦争をするためある軍に、傭兵みたいな遠距離攻撃をする人間などいません。ましてや今回は近距離攻撃中心の編成を組んでいるわけですし」

「……聞いてないぞ」

「紙、受け取ってませんか? 我々には届いているのですが」


……紙。紙……ああ、キクさんの名前が書いてあったやつか。

次回からはこういう紙にも目を通すとしよう。


「んじゃ、ここはあたしに任せてもらおうか」


そう言って川に手を当てるシャン。

まさか……。


「凍えろっ!!」


声音と真逆の――思わず息も白くなるような冷たい空間に一気に森が変貌する。

その原因は一つ。川の水が氷へと変わったからだ。


「へっ、やってくれるなシャン。行くぜ野郎共っ!!」

「おーっ!!」

「いっちょやってやるわよ!」

「お、お姉ちゃん待って!」


溜息がいくつか聞こえてきた気もするが……気にしない。


案外水を失った魚というのは弱く、数人でフルボッコしていると簡単に力尽きた。


「案外簡単だったな」

「まずね、いきなり斬りつけるところからおかしいんだよ。聞いているかい?」

「キクさん説教はあとだ。小川のせせらぎでも聞きながら――」


……凍っています。


「こんな寒い空間に用はないっ!! 休みなどいるかボケっ、行くぞ!」

「いや、みんなは思い思いに休んでいろ。まずは……コレに説教するのが先だからな」


うふふ、と笑うキクさん。

やべぇ、こいつぁやべぇよ。


「五分コースの地獄と一時間コースの天国、どちらが良い?」

「五ふ――一時間で」


五って言ったときの悪魔のような笑みときたらそれだけで常人を殺せると思うんだ。





天国コースのくせにかなりの疲労を伴っているのは何故だろう。


キクさんの仕事の愚痴を永遠と聞かされるという作業なのだが思いのほか俺の苦痛へと変換されている。


「さて、お昼もここで食べるとして君はどうするんだ?」

「向こうで食うよ。寒いもん」

「チームワークというものを大切にしろ。食事ぐらいみんなと食べたらどうだ」

「食事ぐらい?」

「船の中では部屋にこもりっきりだったじゃないか」


……ああ、そういえばそうだな。

しょうがない、俺もここで何か手ごろなものを食べるとしよう。


鏡の中をまさぐりながら何か無いか探してみる。

すると意外なことに普通の手作り弁当が出てくる。鏡の中の物は腐るということがないのでそこら辺は安心だが……味の方はどうだろう。


一口、たまご焼きを食べてみる。


うん、うまい。大丈夫だ。

毒見を自分でやるなんていう行為普通は自分でしない俺だが何故か入っていたこの弁当に救われたということで許してやろう。


「にしても、空気が良かったらピクニック気分なんだけどな」

「こちらとしては困るな。緊張感を持ってくれ」

「あるよ。十二分にな」


こちらも岩に腰掛けているキクさんが言う。食べているのは……何と表現していいものか。

まあ食べ物だ。見たことないものだけど。


「食べるか?」

「いりませんともさ」


もぐもぐむしゃむしゃと食事の時間を過ごしていると背後に何か気配を感じ後ろを振り向く。

これは……妖怪の一種だろうか。


黒髪で大胆に顔に影をつけ(ていうか顔が見えない)更には乞食さながらの空気を醸し出してくれている。

一見すれば女性とわかるが人間には見えない。


「霊界へ帰ろうか」


笑顔で告げる。


「殺すわよ」

「弁当あげるから許してくれないかな」


殺気。


いかに俺と言えど妖怪と戦ったことはない。

勝てるかわからないのならばやはり平和的解決しかなかろう。


「当然っ!」


ばっ、と髪を掻き揚げると俺の弁当を奪い腹に数秒で収めてしまう。

満足そうな顔を俺に向けてくれるその女性だが、もうわかった。


「笑えないオチはいらないぞこら」

「は、母親の頭を――」

「威力倍増っ!」


ぐりぐりー、とやっていると再び背後に気配。

振り返ればキクさんがこちらの様子を伺っていた。


「知り合いですか?」

「コイツは――」

「勇者です」


ざわめきが魔界の森に広まった――


勇者が出てきた……。くっ、文章に気を使っているが海弟と勇者……お分かりだろう。文章壊滅の兆しが作者には見える。


ま、まだ負けていられないぞっ!!

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