第356話『最強の箸使い……か』by海弟
素朴な疑問、何で海弟はハーレムにこだわるの?
回答は後書きでっ!
目の前の料理が数分にして消えた頃、自己紹介が始まることとなった。
まずは隊長から、ということで俺から挨拶する。
「今回隊長を務める諷詠海弟だ、が気軽に隊長とでも呼んでくれ。俺は堅苦しいのは嫌いだからな」
「王との会話で命知らず、ということは各自認知していると思います」
言った人物を見れば、そっぽを向いて俺の顔を見ないようにしている。
何て奴だ。俺は不敬罪を恐れてはいないが不敬罪の理不尽さは知っている。
「よって死刑だ」
「飛躍しましたよ、隊長様っ! け、剣を抜かないで!」
健気な少女のおかげで命拾いしたな。
ちらりとそちらを見ればいかにも貧乏そうな身なりの……おかしいな、これでも高い給料を受け取っている兵士の一人だと思うのだが。
……何か事情があるのだろう、と口を閉じることにする。
「んで、何でお前はそんな不格好なんだよ」
残念、俺の口は好奇心旺盛だったようだ。
苦笑いする少女。ふっ、聞いてしまった以上笑って誤魔化されるのは許されないんだぜ。
そう、いくらそれが綺麗な笑みだろうともっ!!
「さて、一から十の質問をするので答えるんだ、勿論拒否権はない」
「え、ええっ!」
「第一問」
色々あるがまず一つ目は決まっている。
「お前の名前は?」
「シュクリと言います! あ……」
いきなり立ち上がるシュクリ……だっけ? インパクトが強すぎて逆に忘れてしまった。
まあ『シ』と『リ』が名前の中に入っているのは覚えているので繋げて呼ぼう。
「それでシリ、第二――」
「何でそんな名前になっているんですかっ!?」
「良いじゃないか、格好に似合った下品さが何ともいえないぞ」
「悪い意味でですよねっ!? 思いっきり私をからかっていますよね!」
「さてシリ――」
「シュクリですっ。シュクリと言います! ……うう、視線が」
さて、シュクリだな。今回は覚えたぞ。
何、シリと呼びつつけてやるが。
「箸は危ないよね。だからおろそうか」
「ですね。シュクリとお呼びくださいな、隊長様っ!」
「おう、完全に覚えた。ちなみに残り九個の質問を終えるまでに俺の命が持つかわからないのでやめておく」
さて、次は誰に自己紹介してもらおうか。
ぐるりと見回すとちょうど右側にさっきのぷんぷん少女がいたので早速――
「ささ、準備は整っていますよっ! 皆さんも自己紹介しましょう!」
「そうだぞ、そこの」
「ワタシですか? 良いでしょう、上の名だけで良さそうですし簡潔に終えることにします」
「よし、良いだろう。五文字以内で終わらせるが良い」
「……え、無理です」
「よろしくな、え、無理ですっ!」
ごめんなさい、箸は危ないの。だからおろして。
何とか気を沈め自己紹介まで持ち込む。
「レラと言います。王直属、魔法部隊の副隊長をしています。正確には、していました。ですが、今回の任務も手を抜く気は――」
「長い。さて次」
「待ってください。まだ終わっていません」
「知るか。長いのは三分の一までカットが基本だ。お湯に浸れば伸ばすことも考えてやるが、無理だろう?」
「無茶なことを言いますね。まあワタシの名前はわかってもらえたでしょうし、性格もこんな感じなので――」
「さて次。そこでメシ食ってる奴顔を上げろ。食事の時間は終了だ」
箸は危ないからやめて。
持っている二つの棒、もとい凶器を奪い取るとそれで一人黙々と料理を口の中に詰め込んでいっている少女に向かい指す。
「ん、ふごごごっ! ふふぁぁっ!」
「何を言っているのか全くわからん。一度地獄に落ちるか?」
「恐ろしい、何故あなたが隊長に選ばれたのか全くわかりません」
「ふ、俺が優れているからに決まっているだろう」
と、乗せられるところだった。
危ない危ない、このままだと篭絡される日も近いような……殺られる前に殺る、この教えに従う時が来たのか。
「箸は危ないです。シュクリも遊んでいる場合ではないです」
「ふっ、どちらが本物の箸使いか……勝負しようじゃないか」
「その挑戦受けてたーつっ!!」
「ふごごごごっ。んくっ、あたしも混ぜろっ!」
「良いだろう。バトルロイヤルの始まりだ……」
今ここに俺達による最強の箸使いを決めるバトルが――どうやって決めるんだよ。
「やっぱりここは殴り合いか?」
「箸関係ないです。バトルロイヤル終了、箸をおろして」
開始間もなくして終了してしまうとは。
「さて、そこの名前は?」
「シャンリー、気に入らない名前なんだけどさぁ」
「知ったことか。うん?」
シャンリー、シンリー、心理。
こいつの一人称はあたし。
合体。
あた心理。
「……うん、面白くない」
「あたしのことはシャンって呼んで」
「オーケーだぜシャン。で、これだけのはず無いだろ?」
「あと二人います。けど、何処か行ってしまいました」
「見ていたのか?」
「はい」
何故止めなかったよ。
「お前等に一つ目の命令だっ! その二人を探し出し尻尾を引っ張ってでもつれて来いっ!」
「人間に尻尾は無いよ、隊長様!」
「そういえばそうだったな」
何と勘違いしたんだろう。
まあ良い、俺も探すとしよう。
「さあ行け野郎共っ! 見つけたら牢屋へブチ込めっ!」
「了解ー!」
「了解だぜ!」
「了……展開に飲み込まれませんよ。集合場所はここです」
「はいよっ。じゃあ行くぜっ!!」
俺は穴から、その他は出入り口から捜索を開始する。
「いやぁ、まだ直してなかったとはな」
おかげで風が吹いて寒いぜ。
ただショートカットできて結構便利なんだけどな。
「おーい……名前知らないや」
二人だったか。
なるほど、その二人は俺に名前を告げず逃げたわけだな。
「見つけ出したら目上の人に対する接し方というものを教えてやる」
まあまずは丸坊主だな。
これは決定事項だ。
捜索魔法みたいなものがあれば便利なんだけどな。
とか思いつつ、人気の少ない場所を選びながら探し回る。
「お、お姉ちゃんまずいよっ!」
「怖気づいたところで何も始まらないのよ。そう、打倒魔王っ! 今回の任務を受けられてラッキーだわ。ついでに復活した魔王を倒して――」
「おい」
「何、今準備――」
何だ、その表情は。
それに今回の任務、魔王。なるほど、鋭すぎるぜ俺。
「お前等だな。丸坊主の刑を受ける奴は」
「ま、丸坊主っ!」
とっさに一つに結んだ髪の毛を押さえる少女。
隣の少女は二つに結んだ髪の毛を押さえている。
「見たとこ姉妹だな」
「その通りだもん。私達姉妹なのよっ」
「血は繋がっていますっ!」
「天国に行けると良いな」
「何か怒らせるようなこと言った!?」
俺の白の剣が火を噴くぜ。
鞘から刀身を抜くと中段に構える。
「ここから九つの質問をする、全てに答えろ。拒否権は無い」
アイツに出来なかった質問を命と引き換えにコイツ等に答えてもらう事にしよう。
何かもうむしゃくしゃしているんだ。
その答え、聖夜はもうすぐそこだぜチェリーボーイ。
はい、下品でした。内容もアレですけどね。
やっぱり自由に書くのって素晴らしいなぁ!