第354話『魔王探し? ならば一つ条件がある』by海弟
白の剣と黒の剣の波状小説(こんな言葉あるか知りませんが)を書きました。
その名――宣伝はやめておきましょうか。自力で探してください。すぐ見つかるでしょうけど。
アレは魔法では無い……らしい。確かに、魔力は一切感じなかったし魔法では無いのだろう。
そして結果的に覚えるためには面倒なことを何度も積み重ねていかないといけないらしいので、まあ短くいうとですね。
「諦めようか。うん、面倒」
「言うと思ったよ。簡単なものじゃあないんだよね、彼女の使う技は」
「……彼女?」
右を見て、左を見て。上を見てみる。
残念ながら誰もいない。
「この場にはいないよ。あの……まあ良い、僕も説明は面倒なんだ」
「ふむ、それならそれで良いんだが何しに来たんだ?」
「ファンとして海弟のピンチは助けなきゃっ! とね」
「なるほど、ならもう良いから帰れ」
「それは酷いんじゃないかな?」
確かに、お礼の一つでもしよう。
「ありがとう。そしてさようなら」
「もっと酷くなってるって気づかないのかな?」
丁寧にしているだろうに、なんてことを言うんだ。
今にも崩れかけそうなテラスから中に移動すると背を向けて歩き出す。
「んじゃー、さようなら」
「ええっ、言っちゃうの!? 僕の正体気にならないっ!?」
「ならない。生きとし生ける者すべて嘘を一度はつくものだよ」
今の状態と何の関係もない一言だが。
部屋から出ると、アイツが出てこないように扉を閉める。
「さて……寝るか!」
もう夜だし、今日は疲れた。
☆
朝、違うな。
時計を手繰り寄せ時刻を見る。やはり昼か。
ちょうど十二時を過ぎた辺りを刺している針を見て布団の中から出る。
「……今日は学校休むかっ!」
「その前に学校が休みだと気づかない辺りお前らしいな」
「お邪魔してまーす……、勝手に入っちゃったけど大丈夫だよね?」
「大丈夫じゃない」
どうしてパジャマ姿で起きて早々影流達と会わなきゃならないんだ。
布団で防壁を作り身を丸めて全身ガードする。
「とうっ」
影流の一撃で一瞬にして崩れる防壁。
「ああ、もう。わかった、起きよう。今日は休みなんだろう? 良いだろう、聞くだけ聞いて寝てやろう」
「本心が最後の方に出ているぞ」
その眼光には逆らえず……しぶしぶ二人を部屋の外に出し騎士スタイルに服をチェンジする。
どうせ向こうに行く用件なのだろう、だったら最初から着替えていた方が利口というものだ。
合図をし二人に入ってもらう。
「んで、何の用だね」
「魔王探しだ」
「……ん、えーと?」
「魔族より協力依頼を受けてな、各部隊から色々と引き抜いて捜索部隊をこちらから出すことになった」
「ほぉ」
「で、異世界を渡れるお前の力は何かと役に立つだろうということでその隊長を命じようと思うんだが――」
「その前にだ、何で魔王がいないんだ」
そこから話してもらおうじゃないか。
二つの剣を手に取り一つずつ腰に着けていく。
俺の剣の方の紐が少し長くて装備しにくい。二人でやった方がやっぱり早そうだが……しょうがない。
「白の剣だけにしとくか」
呟きオレの剣を鏡に仕舞う。
発光する剣なんて夜店で売ってるちょっと高価なヤツだけで十分なんだよ。
「ああ、そうだな。そうだった」
「簡潔に説明しろよ」
「そんなに簡単な問題でも無さそうなんだがな。世界の支配者戦のあと、各自自分の家へ転移されただろう?」
「そういえばそうだな」
「だとしたら、魔王は?」
「自宅にいる」
場所がわかってるのに捜索部隊を出すなんて馬鹿馬鹿しすぎるだろう。
「その自宅の場所がわかれば良いんだけどな」
「……ええ」
それを俺達に探させるのか!?
魔族よ、自身の力で努力するべきだろう……と俺は他人に言えないからしょうがない。
「引き受けるよ。物凄い嫌だが」
「安心しろ。お前の気持ちを俺も理解しているつもりだ」
「ほお、では何だ。他の隊員達は全員美少女ばかりだとでも言うのか?」
「ふっ」
何とっ!!
「良くやった影流っ。さすがだぜ! さあ今すぐ魔界へ出発だっ!!」
「待て待て、まずは青空を見てみようか」
「ん?」
……修羅じゃ、修羅が見えるぞい。
「男の子なのはわかるよ。でもね、海弟……変な気起こしたら――」
「起こすわけないじゃないですか、ははは」
おかしい、何かおかしいぞ。
恐怖を背に俺は異世界へと向かうのであった。
海弟を殺す者。
青空が新たな力を手に入れたっ♪
海弟いじりが出来る唯一の人材となりましたね、青空。