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第348話海弟と影流のいない国

青空は頭と性格が良いってだけで平凡な子なんです。

だからやめてあげて。やめてあげてよエイラさん。

世界に色が戻り、三日。

城下からはピリピリした雰囲気が消え、いつも通りの日常が続いている……ように思える。


ただそこに住む住民の顔は暗いままだった。


……そんなわけで私、凪月青空は毎日会議で働きっぱなしです。


「さて、議題についてはすでにわかっていると思いますが……影流王不在の今、この国の政治機能の半分が滞っていると言っても良い。ここまでは全員わかっていますね?」


議長を務めるのはこの男。名前は……知らない。けどたぶん良い人。

城内の兵士やメイドさん達の入れ替わりが激しい今、この国が出来た当時から残ってくれている人の一人だからだったりするけどそれでも十分理由になると思う。

私は配られた用紙に目を向ける。内容はすでに理解している、影流が帰ってこないから大騒ぎしているらしい。ついでに海弟も帰ってきてないけど彼等の頭の中にはまるで入ってないんだろうなぁ。

優先的に王様の心配をするのはわかるけど私の中ではどっちも心配だったりするから、こういう会議に参加しても足手まといになると思うんだけど……。


形式的に一応、ということらしいので参加。


私に意見を聞かれるわけじゃあないのでだいぶ楽が出来ている。


「そして今、我々は反省せねばならないところがいくつかある。そんな暇はないのですが、一応思いついた限り言っていきましょう」


これは新しい話題……何だろうけど、ある程度は予想がつく。

王妃という立場上、机の上に倒れこみたい気分だけどそれもままならない。


「我々は影流王に頼りすぎていた!! 彼が優秀であるが故――」

「待ってくれんか」


私の視線は苦笑いをしている初老の老人に向けられる。

そういえば影流と仲良くしていたおじいさんがいたなぁ、と思い出しつつも海弟が嫌っていたおじいさんでもあることを思い出して私まで苦笑いを浮かべる。

私の第一印象は人当たりの良さそうな近所に住むおじいさんだ。一度話してみたいかもしれない。


「あまり自分を責めるのはよさんか」

「いえ、これは国問題――」

「知らん。年長者の言うことは大人しく聞いておくものじゃよ」


……何処と無く海弟に似ているような。

とりあえず海弟の苦手とするタイプは自分なのはわかったよ。


「……はぁ。話を戻しましょう。一人の兵士の話では突然目の前から消えた、とか。その兵士は実家に……突然転移されたとか」


そう。だから話がわからないんだ。

これじゃあ影流や海弟が何処にいるかわからない。そんな不安がここに国を支えるみんなを集めている。


「やはり順当に考えて、青空様が全権利を一時的に――」

「え」

「あ、いえ……」


すみません。影流に政治面はすべて任せきりで国の動かし方知らなくてすみません。


私も反省しているけどここにいるみんなも同じ気持ちなんだろうなぁ。

やつれているメンバーを眺めつつ、ずーんと重くなった雰囲気の会議は解散される。

三十分も集まっていなかった。


自室に戻れば、やわらかいベッドが私を迎えてくれる……のは良いけど何か物足りない。


「海弟の……せいかな」


顔が真っ赤になる。うう、恥ずかしい。

魔族の人も三日間の間に何度か訪れていたけれども、向こうも魔王が消えたとかで騒いでいるらしい。

だから無理を言って向こうの世界に帰ることも無理なように思えてくる。結局はそのせいで頼めなかったんだけど。


ふわふわな毛布に身を包むと目を瞑る。

まだ昼ごろだけど寝ちゃってもいいかな。





「おりゃっ」


……な、何だか知らないけど毛布を取られちゃった、みたい。

寒い、寒いよー。


「返してっ」


取られた方に身を投げると……そこには何もなく、床に落ちてしまう。

どうやら避けられた様子……お、王妃様に何をするの……。


思考をめぐらせるとやりそうな人物がすぐに見つかる。


「か、海弟!?」

「残念。はるばる来たのに間違えられてお姉さんかなしー」


……エイラさん、だね。

何でこの人いるの?


「あ、あのー」

「ああ良いから。宰相に全権託して来たから数年は大丈夫よ」


大丈夫じゃないと思うよ。


そういえばこの人、私を起こしに(?)毎朝私の部屋に突撃してきていたような。


「く、くるって連絡は受けてないですよっ!!」

「してないもん。と、いうかねぇ。集まるのは仕方ないのよね」

「へ?」

「私達も敵の子分と戦っている最中にこっちに無理やり飛ばされてきたわけよ」

「どういう意味ですか?」

「私も意味わかんないの。攻め込みにいった人全員戻ってきちゃったみたいよ」


戦っている最中に飛ばされたの?

そういえばそんな話も聞いたことあるかも。兵士の数名しか話していなかったから信憑性がないとかで……。


「あれって本当だったんだ」

「あれ? まあ良いけど、青空ちゃん夜着じゃないのかぁー。残念」


その一言余分だよ。


「怪しげあ手つきでこっちに迫ってこないでくださいっ。影流は帰ってこないんですけど」

「知ってる。何やってるのかしらねぇ」


ちらりとこっちを見てくるエイラさん。

な、何かな。


「一緒にくる?」

「へ?」

「面白いことしに行くのよ。一緒にくる?」


あ、怪しい。

物凄く怪しい、付いて行ったら……あわわわー、ってなるよね。


「い、行きませんっ!!」

「ありゃー。ダメ? ファンちゃんを元気付けにいこうと思ったんだけどなぁ」


え?

……そういえば最近姿を見てないかも。


「王様いないと不安なんじゃないの? メイドさん達が噂してるよ」

「私聞いてない」


……何で?


ま、まあ善は急げだよ。


「うー、洋服がくしゃくしゃー。着替えたら私もいきます!」

「ほう、やはり来ますか。じゃ、着替えを手伝い――」

「一人で出来ます」


この人も王様、この人も王様。


気を落ち着けるのに一苦労だよ……。





「おっじゃまっしまーすっ!!」

「ああっ、勝手に入っちゃ不味い――ってあれ?」


私の視界にはこの部屋にいるはずのファンが映っていない。

と、言うことは部屋の外なのかと言うとエイラさんの言うことが嘘とも思えないからないと思う。


「隠れてるのか。ふっふっふ、逃げられると思うなよ小娘」


目つきが……。

いや、海弟と同じく一々反応していたら身が持たないかも。


「さて、まずはこの壺の中から――」

「います。ここにいます。だから触らないでください」


顔を赤くしてベッドの下から現れるファン。


「へぇ、よし。壺の中にいるんだなー」


今度は私とエイラさんの目にしっかり映っている、はずなんだけど。

何で壺の中を探るのエイラさんっ。


「ほう、ほうほう。なーるほど、乙女の純情よのー」

「ひゃっ、や、やめ……」


……あ、ちょっと可愛いかも。


「い、いけないよ青空っ。それはダメっ」


壺の中に再び『何か』を仕舞うと部屋にあるソファに座って会話が始まる。

何ていうかエイラさんが一方的に話しているだけなんだけど。


「その時、何ていうか光るおっさんが現れたのよ」

「見間違えでしょう」

「そう、私のお父さんだったの。あっはっは」


……お父さんを見間違えないで……。


ただ、いつもの調子を取り戻してきたのか普通に会話を続けて数分。(なか)ば無理やりファンを外に連れて行くエイラさん。

私がいる必要なかったかも。


着いたのは中庭。

何だか知らないけど案山子が一つ立っている。


「あとは疲れを発散させるだけっ。さああの案山子に向かって全力で魔法を打ち込んでっ」

「一ついいですか?」

「何かな?」

「何がしたいんですか」


それを聞いた途端、心臓の辺りを抑えて倒れこむエイラさん。

前方向に倒れて大丈夫なのかな。手とかついてなかったけど。


「あ、あの。エイラ……様?」


言うときは様付けが礼儀、ということなのでこうなんだけど……言いにくいような。

相手が守ってないのにこっちが言うのも何かおかしい気もするけど、一応王妃様だから守らないといけないよね。


よろりと立ち上がるエイラさん。


「大ダメージ食らったように見えた?」

「見た感じはそう見えたよ」

「なら良い。ファン、君は私の心に多大な傷をつけた。なので――」


案山子の方を向き、指を指す。


「元気出して働きなさい」

「あの……」

「余計なことしてるのはわかってるけどさ。勇者ちゃんの仲間だからさ、ファンちゃんは」


……うるうる。


戦う女、ここにありって感じだね。感動物なんだね。


「それじゃあ私はこれで部屋に帰るかな」


ああ、私って必要ないなぁ。


人は何かを犠牲にして何かを得る。


自分はこの文章にもう一つ付け加えたい。


『人は何かを犠牲にして何かを得る。

 ただし自分の持ち物の中でやってくれ』


海弟に兄弟じゃなくて青空に姉妹をくれてやれば良かった。

反省してるよ青空さん。

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