第346話『あ、ある意味自爆に見えるな。ち、違うけど』by海弟
奇跡? なにそれおいしいの?
海弟大ピンチっ!!
「ええい、避けるなっ!!」
「無茶を言うな。本気の勝負で避けるなと言われて――」
「俺はマジメに討論しに来たんじゃないっ!!」
「だったら最初から――」
「うるさいっ!!」
くっ、強さから喋っている言葉まで、何から何まで俺の及ばない次元だ!!
視界を奪ってやれば簡単に近づけるんだろうが俺の今取れる手段の中で視界を奪う方法を使うと俺まで見えなくなるから用意には使えないのだ。
と言うことはつまり相手を倒して動けなくするしか方法は無いっ!!
「炎よっ!!」
俺の手のひらに出現する炎。
それを発光している剣の腹で相手に向かって打ち込む。
体が魔法で強化されているおかげか通常ではありえないスピードで飛んでいく火の玉。
「これでどうだっ!!」
俺も成長しているのだ。
過信は禁物、相手はボスだ。第二形態とかあるかもしれない。
と思い剣を両手で構えなおす。
すると俺の目の前に火の玉が飛んでくる。
やはり第二形態かっ!!
剣を使いなんとか防ぎきる。ってこの感触……。
「跳ね返された!?」
「反射する魔法。便利だよねぇ」
そう言ってきらきら光っているベールを俺に見せてくる荒野。
「なるほど、世界の支配者の力を使えば魔法道具だって自由に生産できるってわけか……」
対策をされているとは……。
しかし、だ。
俺はそんな事に気を取られている暇は無い。
「くそっ、もっと早く気づいていれば……」
金持ちになれていたのに。
悔いが俺の心を支配する。くそぅ、俺に入るはずだった金の恨みここで晴らすっ!!
どうやら俺のホンキを見せる時が来たようだ。
すっ、と右手を天にかざす。
「何をするつもりだ」
「ふっ、いくぜっ!!」
円形の鏡、大きさは俺の身長ほどあり薄いがこれでも俺の新技だ。
結構強いっ!!
魔力を付加させた鏡を相手に向かい投げ込む。
円を象った鏡より連射される炎。その速度はさっきよりも早く、効果範囲が広い。
つまりそんなきらきらじゃあ防ぎきれないって事だ。
「はっはっは、終わったな荒野っ!!」
「思いっきり悪役だな。お前は」
おもむろに剣を手のひらに出現させる荒野。
な、何かカッコいいっ。
「はあっ!!」
その剣を縦に一振り。その風圧か、はたまた込められた魔法によるものなのかは知らないが一瞬にして打ち出された炎、更に鏡までが粉々になる。
こんな物まで生み出すなんて卑怯だ!! 何だよ世界の支配者って。
元世界の支配者が言える台詞じゃあ無いけど。
「和解しないと言うならば、殺すまでだが。大人しく殺されたらどうだ?」
「心配するな。俺はお前に負けないっ」
さあ神でも悪魔でもはたまた学校の先生でも良いから勝つための手段をこの俺に授けてくれっ!!
全ては神頼み。
俺の頭の中に住む神と悪魔と学校の先生(仮)が話し合いを始める。
これが終わるまで俺は時間稼ぎをすれば良いわけだ。というかいつから学校の先生(仮)は俺の頭の中に住み着いたんだろう。
それと(仮)って何だろう。
「そっちがチート級の道具を使うならこっちは伝説級の武器で相手をしてやろうっ!!」
まだ発光している剣を鞘に仕舞うと白の剣を鞘から抜く。
その刀身の白さは何にも勝るだろう。まさに美しさの象徴。
あんな勇者に使われるべきではないと俺は今まさに思うわけでありますよ。
「……ついに出される俺の本気に怯えるが良い。怯えたところで許しはせんがなっ!!」
まあ俺の目の前で自滅してくれるんだったら良いけど。
「望むところだ。お前の終わりに相応しい戦いをしよう」
「売り言葉に買い言葉。ふっ、不良の喧嘩程度の浅知恵しか持たないお前じゃあ俺は倒せないっ!!」
何だアイツ、頭に手を当てて『コイツはもう手遅れだ』とでも言いたそうな視線を送ってきているぞ。
しかし今がチャンスっ!!
「光よっ!!」
剣の力により集う光。
その光は何よりも強力、そして圧倒的なのだ。たぶん。
今までの攻撃よりも格段に早さが違う。そんなレーザー光線が俺の魔力をごっそり持っていく。
が、一撃でも当てれば勝てるっ。
「何か、忘れてないか?」
……ん?
複数放たれる光の放射線。そしてその行く手を遮るかのように存在するきらきら。
……ええと、まさか?
いやいや、光の魔法だよ? 最強なんだよ?
見事に反射される光。
それを見て俺は思った。
伝説だって……たまには負けたっていいじゃない。
「で、俺が大ピンチなわけ何ですけどっ!!」
ごっそり魔力持ってかれちゃってるし!!
『鏡』による反射。イエス、それが良い。
「よっしゃ『き――」
世界が真っ白になった。
それはもうすごく綺麗な白だった。
おかげで俺の魂まで真っ白になるかと思った。
ぎりぎり生きてるぜ、動けないがなっ!!
「さすがの耐久力だな。勇者に選ばれる者の子孫なだけはある」
勇者じゃないところが悲惨なんだよな。
うん、死に掛けてる人に追い討ちをかけないでもらえるかな。
「さて」
剣を振りかぶる荒野。
こうなったら這ってでも逃げてやる。
腕は? うわ、すごい。自分でもかつて見たことない方向に曲がってるよ。
何これなんで俺は生きてるの!? 世界の不思議っ。
そんな事してる場合じゃないよな。動けないんだから。
そうだ、時間稼ぎ。影流達が助けに来てくれるまで喋り続けよう。
「さ……いごに……。ひとつ、だけ……」
声がすっごい掠れてる。
これは長時間話せる自信無くなってきたぞ。
「聞こう」
「あり……が、とぅ」
ふっ、やばいよ。
ぅの辺で今力尽きたよね俺。
『とりあえず立とうか』
ん? 何これ。
誰の声……。俺の知らない奴の声だ。
頭の中に響く、何ていうか毅然とした態度でいる誰か。
そうか。遅い、遅いよ……遅すぎるよ先生っ!!
せめて俺が動けなくなる前に出てきてよ先生!!
『先生?』
あんただろ。あんた何だろう。
というか今の生返事は責任放棄かこの野郎っ。
『そういうことでも良いから立とうか。一度立てばきっと何でも出来るから』
……足は、やっぱり動かない。
どうしよう、治癒魔法なんて使ったらやっぱりバレるよな。
うーん、あ、そうか。荒野に頼めばいいんだ。
「お、れを……たた……くれ」
「良く聞こえないが。殴って殺してくれということか?」
思いっきり違う。そして剣を仕舞って拳を作らないでっ!!
『立てない?』
まだ居たか。どうしても立ってほしいならお前が俺を立たせてくれよ先生(仮)。
『あ、(仮)を付けられちゃったよ。あっはっは』
とりあえず地獄にいったら話し合おうか先生。
『時間が無いから手短に話すよ? 良い?』
ふ、地獄で殺しが出来るならば俺は真っ先に先生を殺すと生前である今誓おう。ここで誓おう。
って言うかダメって言っても話すんだろう? なら勝手にやっててくれ。
ああ、死ぬ直前に走馬灯のように頭の中に溢れる思い出。
家族の顔、親友の顔、それに友達の顔も……顔だけ覚えてる奴もいるなぁ。
死ぬ前に名前だけ思い出したい。時間をくれ時間を。
『と、言うわけだ。だから君なら出来る!』
……何の話?
『人の話を聞かないね君。そろそろ死んでも文句ないよね? そうだよね?』
えー、死にたくない。
『なら立て。今すぐ立て』
おお、無茶振りを――
俺の精神を抉るような激痛。たぶん荒野が殴ったせいだろうが何故か意識が遠のいただけで痛みは感じない。
『いたっ、痛いよ。何ていうか今なら体が二つに増やせそう』
妙な例えをするな。誰にだって出来るだろう?
あれ、出来無いっけ。まあどっちだって良い。
『良くない良くない。だからほら、立って。気合でいけるものだよたぶん』
うん? そういえば妙に足が軽いぞ?
薄目だから状況は確認できないがたぶん……いやいやそれは無いよきっと。
ほら、動く動く。
動く?
『君は世界の力をもらっているんだよ? まあ僕もその一部ってわけなんだけど。受け取っている最中に死なれたら困るからさ』
知るか。もう良い、立てるから立って逃げる。よし完璧な作戦だ。
『いやいや戦おうよここは』
死ぬから。
『大丈夫大丈夫』
根拠が――まあ良い。どの道背中からぐさっ、とされるだろうからやってやろう。
いくぞ、立つぞ? 三、二、一。
あれ立てない。
生き延びれないなこれは。
変な区切りでごめんなさいなのですが、まあこれ以上伸ばすと読むの面倒になりますし。書くの面倒にもなりますし。
あー、寒いと手がかじかむ。皆さんも気をつけ――
はい、話を逸らしてすみません。
んで今回の大ピンチなのですが、動けない状態という何ていうか金縛り程度にしとけよおい、というまあ一言で言うならば
『くそっ、詰んだぞおいっ!』
展開なわけですが、長々というのも面倒ですね。
一言で言うと
『次回でうまくまとめるから、たぶん』
海弟ならやってくれるさ。