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第343話『何でこんなことになってるんだろう』by審判係

この兵士メインで一話作ってしまった……何てこった。

まあこういう人間も必要ってことですね。うんうん。

「一回戦目、えーと……そちら側からは誰がでるんですか?」


審判なんて同期の兵士達とふざけてやった模擬試合でしかやったこと無いけどたぶん大丈夫だよね。

うん、きっと大丈夫だ。僕には出来る、とにかく頑張ってみること、それが大事。


「…………」


場に広がる沈黙。

あれ、ルール決めたのそっちなのに決まってないの!?


視線で『お前行けよー』みたいな事が三分ほど続き、ようやく出てきたのはその視線の送りあいに参加していなかった大きめの帽子を被った……人。

兎に角人だ。女の子か男の子かわからない。人間かもわからないけど人型をしているからたぶん人なんだと思う。エルフとか魔族とか、そんなことは無いことを望む。

そしてあいつの武器。僕は知っている。特殊魔法『(とう)』を使う魔法使いだ。

たぶん今回は魔法道具をいっぱい仕込んできているに違いない、攻撃手段が一つバレているんだからそれぐらいやっていて当然だ。


「こっちからは誰が出るんですか?」

「……私」


綺麗な人……では無くてエルフの国の代表さんだ。この人は国王ではないようだけどその後ろの人が国王なんだろうな。

老人、老婆、うーん長く行き過ぎた生物は雌雄すら忘れると……何かに書いてあった気がするけどその通りなんだなぁ。

にしてもエルフに花があるのは若いうちだけなのか。メモメモ。


「とりあえず形式的に……名前は?」

「エコン」

「……にょ」


……ん?

にょ、しか聞こえなかったけど。それが名前?

裏の世界にはおかしな名前の人がいるんだなぁ。


「えーと、にょさん所属している組織名とかは――」


びゅんっ


ありますか? 言う前に何かが目の前を横切る。

いや、あのにょって人が何かを投擲したんだ。


数本の髪の毛が散るのを見て少し後ずさりつつ飛んでいった先を目で追う。


……何が飛んでいったのかわからないけど、けどね。

壁が粉々になってました。分厚い壁なのかまだ外は見えないけれどもすごい威力だ。


「にょ、違う。あにょ、それ、名前」


……大して変わらないと思います。

けど逆らったら怖いから言い直そう。


「あにょさん、所属している組織とかはありますか?」

「…………」


無いのかな。

まあ良いや。これで形式の通りに進めることが出来る。


「妖精の国代表、エコン。対するは――」


エコン様のほうを見て叫ぶ。

そして今度は反対側を見て再び叫ぶ。


「無所属、あにょ。試合を開始するっ!!」


無所属では無いんだろうけどまあ何も言わなかったし良いか。


と、僕が余所見をしている間にもう戦いは始まっている。

様とか付けると話しにくいからここからは取っていこう。スピーディなバトルなんだ。


エコンは手袋? のような物を発光させそこから生み出した矢を弓に番えあにょに向かって放つ。

話は聞いている。あの手袋は魔力を物質化する魔法道具なのだそうだ。


さすがに自由度の高い武器だ。放たれた弓が空中で増殖する。手元に無くてもそういうことは出来るらしい。

僕は実はアインさんちの向かい側の家の息子だったりするから武器の効果は頭に入っている。


そして、強化されたこの魔力を物質化する装置(手袋)は……。


さすがに避けられないと思ったのか大きなローブがかさばる音とともにしゃがみ込む。

だが甘い。僕は知っている。


宙に舞う矢が炎へと変化していく。

そう、そこまで魔力を変化させることが出来るのだ、この手袋は。


それを見たあにょは……固まっている。

いや、違う。何だ……詠唱?


魔法のことは良くしらないが帽子が小さく揺れている、発音すると同時に起きた揺れでそう見えるんだろう。

そして、炎があにょへ直撃する。


「っ、熱い」

「……何らかの魔法を使っていた。確認できる限りでは……特殊な魔法で……服を燃えないようにした?」

「あたり」


どうやら当たりらしい。

鋭い勘を持つエルフだ、じゃなくて。


「防御の魔法ならわかるんですが……服を燃えないようにする魔法? 確かにそんな魔法があることは聞いたことがありますけど、そんな魔法を習得しようとする人なんて……」

「審判うるさい」


味方なのに注意されてしまった。

いや、今は審判。中立的な立場の人だ。


ただエコンの表情を見て少し察する。

自由度が高くなった分コントロールするのが大変なんだろう。これはかなりの集中力を使っているに違いない。


「うっ、うぅぅ……。うぅー」

「おい、こりゃあ……でるんじゃねぇか。あのショボイ技」

「地味に効果的、そう言ってあげなさいよ」


何だか敵側が騒いでいる。

ショボイ技? 何だろう、まさか爆発?

いやいや、そんなこと出来たら……って、ん?


「あれ……いない」

「おー、出たよ。姿を消す魔法っ!! いやぁ、覗きの為だけにある魔法だと俺は思うんだけどよぉ、戦術に組み込むたぁやっぱすげぇ奴なのな」

「あの、僕一人じゃ解説しきれませんし誰か向こう側の解説してくださいよ」

「んじゃあ俺がしてやらぁ」


ありがたい。

こっち側の知識が僕はあるけど向こう側の知識は無いんだから解説のしようが無いんだ。


「特殊魔法『刀』」


声が近くから響く。あにょの声だ。

近くにいるのか? と周りを見渡すが見当たらない。

その代わりにエコンの服が切り刻まれて血が滲んでいる姿を見つけた。『刀』が直撃するとあんな風になるのか……って、どうなってるんだ?


「そぉだ。姿を消す魔法に当たったら強力な特殊魔法。そいつがあにょの武器ってわけよ。弱点はだな――っと」


半身を逸らす解説員。

何だ?


「弱点言ったら殺されるなこりゃ。んじゃ、そっち側の奴の解説頼もうか」

「あ、はい。と言っても特に動きはありませんし……」

「あぁ? アレの何処が動きがねぇってんだよ。魔方陣だよな、俺は見たことねぇ形だな」

「え?」


エコンのほうを見れば見事に砂鉄で繋がれた魔方陣が完成していた。

なるほど、そういうことか。見事に魔方陣のデメリットを消したなぁ。


「説明しろよ」

「そうでした。砂鉄というのは磁石、というか磁力に吸いつけられる性質を持っているんですね、異世界の人が言ってました」

「あれが砂鉄って事か?」

「そうです。そしてあの手袋には魔力を物体に替える力があるんですね。パワーアップしてかなり強力で凶悪な域に達していますが。そして魔力を魔法陣の形の磁石に変えて……」

「ほぉ、でもよ。そのまま磁石の魔法陣ってのを使った方がはえぇ気がするんだけどよぉ」

「本当にそうでしょうか?」

「あ?」

「砂鉄、あれはエコンが持参したものです」

「ああ、取り出してるの俺は見てたしな」

「そしてエコンは現在遠隔的に魔力を操作できます。自分のだけですが」

「それで?」

「磁石は自分の魔力から出来ているでしょう? と言うことは磁石の魔法陣と魔法陣発動の為の魔力、二重に使うより砂鉄をすいつけてその後に磁石を魔力として扱い魔法陣を起動したほうが魔力の消費が抑えられると言うわけです」

「ほぉ、なるほどなぁ。考えてるわけか。オメェ魔法に詳しい……というか実践慣れしてんのか?」

「理論的に考えるのが好きなだけです。最近は冷静に判断するということを覚えました」


海弟様のおかげで。


まあそんな話も中断して戦いに目を戻す。

どんな魔法が発動されるんだろう。実は僕もわくわくしている。

僕は魔法を使えないけれど、魔法を見るのは好きだ。だから色々と詳しいし魔法が使えるように日々妄想の中でトレーニングしたり……ああ恥ずかしい。


「オメェ手で顔隠したりして何やってんだ。審判だろ、試合見てろよ」

「最もです」


試合に集中することにする。

……ってあれ。

いつの間にエコンはこんな毛むくじゃらの怪物さんになったのかな?


「……召喚魔法だなこりゃ。俺の専門外だ、そりゃあ見たことねぇわな」

「残念ながら僕もです」


お互いに顔を見合わせる。


「ここで登場ディティお姉さんっ!!」

「おおっ」


確か海弟様のお師匠様。

何かと迷惑を働く人だと聞いてるけどアインさんと組んで魔法武器を作った人とも言われている。

と言うな何故ここにこの人もいるんだ?


「紛れ込んでここまで来たわけですが面白い試合ねこれ。しかも召喚したのは上級悪魔、召喚条件も容易じゃないんだけど……あの子やるわね」

「悪魔……そうか」


僕が解説する必要はもう無さそうだ。ちょっぴり寂しい。

というか何でみんな雰囲気をぶち壊したがるんだ。


「『刀』」

「巻きつくの攻撃」


巻きつく攻撃!?


スライム状になっていく上級悪魔。


「ああ、何だ。上級悪魔かと思ったらそこら変にいる低脳物真似魔物か。上級悪魔に変身できるほど教育するなんて……あの子やるわね」


さっきからこの人はあの子やるわねを言いまくってる気がするんだけど。二度目?


けど、これがお互いの本気なんだよな。

何て言うか――


「地味ですね。どっちも」

「地味だなぁ。こりゃ」

「地味ね。退屈よ」


……コイツ視点にしている意味はあるのか?

いや、無いと思う。そしてディティが出てくる必要も無いと思う。


まあ海弟の師匠ですし、これぐらいやってて普通か……。アクティブすぎるぞこの小説の登場人物のほとんど……。

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