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第339話『この時がやっと来たぞ!!』by海弟

やばい、最後のほう自分でもドキドキしてるのわかる。

だからか文章がいつもよりむちゃくちゃな気がする。

城の食堂から一歩外では壮絶な戦いの傷跡が残っている。

いや、今もなお傷は確実に増えていっている。兵士も少なからず集まっているのだが海弟がやられた姿を見て完全にやる気をなくしたようで逃げ出している者すらいた。

自分等にあれ以上の戦いが出来るかと言えばそうでは無い。一般兵士の集まりなど一瞬にしてやられる、全員がそう思ったのだろう。

勝てる確立はゼロだ。今戦っているエコンですら敵と戦っている意味に疑問を覚えている。


「さぁて、トドメと行こうじゃねぇの」


強化されていた体が元に戻っていく。

いや、逆なのかも知れない。戻る一瞬、その一瞬だけ痛々しげな表情を浮かべていたからだ。


すぐさまあくどい笑みを浮かべる男。

大剣を振りかぶり目の前にいる気絶している海弟にめがけその一撃を放つ……瞬間。


『やめだ。剣を戻せ、もうそいつは障害でも何でもない雑魚だ』


何処からともなく声がする。


「……あぁ? っと、荒野様じゃあねぇか。と、言うと?」


姿は無く、再び声が響く。


『そいつは世界の支配者、その力を放棄した。つまり、オレの目的は達成されたわけだ』

「それは良かったですね。出来ていたらの話ですが」

『……あの(おんな)か。そうだな、少々梃子摺(てこず)ったが気づけば早かったな』


二、三歩歩みを進めるクォン。その手には串焼きが握られている。

後ろを見れば勇者とゼッカス代表が茣蓙(ござ)に座りお茶を(すす)っている。


「……やはり」

『ふっ、お前達が執務室として使っていたあの世界。まさかとは思って調べてみたら小賢しい真似をしてくれているじゃないか』

「……この短時間で? 無理でしょう」

『出来ない事は無いさ。入念な下調べもしてあったからな』

「…………」

「はいはーい、私達にもわかりやすいように説明してくださーい」


手を上げて大声を上げる勇者。能天気なものだ、などと余裕をもって静観していられるものもいないのでその発言はそのまま受け取られる。


「……特殊な空間、それは歴代の世界の支配者が拠点としてきた場所でした。世界の支配者が拠点とする場所、つまり世界の支配者にとってそこにいるからこそ出来る特殊なことがいくつかあったんです。その一つに『支配者権限の誘導』というものがあるんです。一言で言うならば『世界の支配者の座を(ゆず)る為にある能力』ですね。通常ではあまり使われないものです」

「まとめると?」

「敵側にそれを使われてしまったわけです。海弟は今、世界の支配者という座から降りている状態、つまり優先的に世界の支配者になるのはその能力を使った――」

「敵ってわけね。……ったく、私の息子は何をやってるのやら」


視線を無残に転がっている海弟に向ける。死んではいない。


その場にいる二人が溜息を吐くと、勇者が二人の敵に向かって言う。


「とりあえず今日は帰ってもらえないかしら? 後からその特殊な空間ってのにお邪魔するわ、勿論私の息子が」

「はっ、好きにすると良いぜ。俺には関係ねぇからな」

「…………」


エコンと対峙していた敵の姿が消える。

それを見てか男もその空間から消える。


「……とりあえず傷の手当、そっちのエルフと馬鹿息子を連れてきてくれない?」





……生きてる?

まさか、俺は気絶して……あの状況から察するに死んだんだろう。

と言うことはここは……? 天国では無いよな。天国に行けたのなら俺は復活しているはずだ、何たって知り合いに物凄い神様がいるわけだし。

ならばここは地獄というわけか。なるほど、通りで目の前に鬼のように怖い顔をした母さんが座っているわけだ。


……母さん?

えーと、何で母さんが地獄に?


「薄目開けてるのはわかってるわよ」

「……うーん、良い朝だ。母さん、今日の朝ごはんは?」

「そうね、とりあえず窓の外を見たら?」


……夜ですね。


「深夜二時ぐらいかしら? ここまで私を待たせるとはやってくれるわね」

「俺のせいなのそれ!? っていうかここ何処!?」

「私の部屋。で、あんたが寝てるところが私のベッド」

「……ああ、助かったの……信じられないっ!!」


傷のあった場所を摩ってみる。痛くない!


「私に感謝しなさい。傷跡も無いわよきっと」


じゃあ……母さんが助けてくれたのか?

いや、ありえん。息子が命がけで戦っていても優雅にお茶を飲んでそうな母親だぞ?

しかしまあ生きてるなら良いか。余計なことは聞かないでおこう。


一度欠伸をし、気分を完全に切り替えてから顔を叩くと母さんに聞く。


「……で、状況は?」

「最悪。敵側が世界の支配者の座に座っちゃったらしいわよ」

「え? でも俺が……あっ」


そういや今まで溜まっていた世界の力と引き換えに世界の支配者の座から降りたんだった……。

まあいくつか疑問もあるけど目的は一つなんだ。


「相手を倒せば良いわけだから、乗り込めば良いのか?」

「その前に海弟、あんたの強化からでしょ?」


……手も足も出ませんでした。


ベッドから降りてそばにあったゴミ箱にいくつか割れている鏡を捨てると同時にあの戦いを振り返る。


「短時間で埋まるような差じゃなと思うけどな」

「数よ。数を揃えてタコ殴りにすれば良いのよ」

「確かに、こっちは数で勝ってるけどそれ全体にそれなりの実力がなきゃダメでしょ?」

「……何とかなるわよ、きっと」

「何だか物凄く不安です」

「まあこっちは数で攻めるの!! 良い? 各国の王様達には勇者様命令で押し切ってやったんだから、これは決定事項なのよ」


勇者様命令って何だよ。


ピシッ、と目の前に突きつけられている指を退かす。


「俺の頭の中で解決してないことがいくつかあるけどさ……その……一つだけ聞いておきたいことがあるんだ」

「ん、じゃあその一つだけ答えてあげるわ」


その他の質問は答えてくれないのか。まあ元々放置するつもりの疑問達なのだけれども。


「……勝てるかな」

「はい?」

「あいつ等に勝てるかな……、俺達」


俺らしく無いと思うけど、誰かに後押ししてもらいたい。

そんな気分なんだ。


「んー、あー……私は戦わないからわかんなーい」

「……え?」

「やっぱり女の子が剣を持って戦うっておかしいと思わない? ね? だから私は――」

「つまり俺を言い包めて全てやってもらおうと?」

「……この白の剣を持っていきなさい。これで光の力があなたの味方になってくれるはずよ」

「否定しないのかよ!! まあ一応もらっておくけど」


白の剣を受け取るとやっと自分の剣のことを思い出し首を動かす。

ベッドから少し離れた平べったい机の上にあるのを発見しその剣も手に取る。


「……ちょい手伝って」

「しょうがないわね」


母さんに手伝ってもらい見事装備が完了する。

右に白の剣、左に今までの剣を付ける。


「……ああ、言い忘れてたけど」

「え? 何?」

「出撃準備はすでに整ってるわよ」

「……それはどういう意味で?」

「中庭に行けばわかるわ。それじゃ、私はここまでということで」


なし崩し的に廊下に追い出される俺。

……ああ、何か恥ずかしいな。

あんなのでも俺の母さんなんだなぁ。ちょっと甘えちゃったじゃないか。


「まあ良い。中庭に行くぞっ!!」


再び気分を改め廊下をずかずかと歩き出す俺。

俺の予想が正しければ――


「ふっ、やはりな……」


目の前に広がる人の数、数千は余裕に越している。

見れば魔物も混じっている。


この大軍が俺の味方なんだよな。……久々にワクワクしてきたぞおい。

白の剣を手に入れた海弟。

そして勇者の命令により動いた各国の兵士、それに魔族、魔物達。


次回から始まる大きな戦い。うまく書ききれるのか兎桜!!

さすがに次回ぐらいは見直ししてから更新しようか。

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