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第333話新技と海弟

とりあえず海弟には隠された才能!? なんてものは無いので(それが許されるのは勇者だけだ!!)自力で世界という名の宝の山から強奪していってもらうしか無いんですよね。


さあ頑張ってくれ。

……新技かぁ。


ちらりと握っている剣を見る。


「新技かぁ」


うーん、いまいちこの剣のすごさがわからない。

大地を斬れる剣っ!! とか説明があれば良いんだが無いからな……。


素振りを再開し、頭の中で新技を考える。





ナンバー一


『剣を投擲して遠距離攻撃』


敵は俺と同じような人型。しかし魔物だ。

相手の武器は鍵爪のみ、攻撃にも防御にも優れてそうだが最も特徴的なのはその速さ。

ただ剣を振っているだけじゃあ攻撃は当たらないだろう。


そう、そういう時にこそ相手の予測しない行動、つまり剣の投擲だ!!


「てりゃぁっ!!」


ビュンッ、と風を切る音と共に剣が俺の手から離れ相手の眉間を狙って飛んでいく。

それを見て俺は勝利を確信……した瞬間、相手の体がぶれる。そう、距離が開きすぎていたのだ。

避けるだけの時間は十分すぎるほど相手に与えてしまっていた。


俺の手には武器は無い、相手は避けるのと同時に前に出てきている。

……ダメじゃん。





「動きの遅い相手にしか通用しないな。速い奴には近距離じゃあ無いと当たらないな」


素振りを止める。何とかこの剣に仕掛けられた魔法が何かわかれば戦術も広がるんだが……。

再び剣をちらりと見る。


そうだ、これはどうだろうか。


素振りを再開し、頭の中を一度空っぽにしてもう一度敵を浮かべる。





ナンバー二


『物凄い速さで敵の視界から消え不意打ち』


反復横飛びの要領で何度か左右に動く。

ふむ、これを極め……目の前にいる敵をにらみつける。


「さあかかって来いっ!!」


俺の掛け声と同時に走り出してくる敵の魔物。

そう、そのまま……今だっ!! そのまま右方向へ重心を傾け相手の視界から――って足がっ!!


ばたんっ、とそのまま倒れこむ。くっ、足が絡んで転んでしまった。


すぐに上を向く。


「バッドエンドにしかならないんじゃないかこれ」





素振りをやめる。

新技ってのも難しいな。


「……魔力がこめられているのはわかるんだけどなぁ」


この大きさ、そして武器そのものが放つ威圧感。

二人の匠が生み出した最高傑作と言ってもいいだろう。まあ形は何処にでも売っている普通の剣だけれども。


「そういやこの剣を使っていろんな戦いを生き抜いてきたなぁ。例えば……」


ほら、あれだよ。最初にこの剣を使ったのは……いつだったか。

もう覚えていないなんて相当昔のことなんだなぁ。


夜空を見上げる。俺は夜活発になるタイプなのだ、素振りは毎日この時間に済ませてその後眠っている。


「……学校、家、友達、どうなってるんだろうな」


混乱しているんだろうか? ろくに説明もしなかったからな。

大丈夫だと確信が持てないのは俺の知る限りで地球を滅ぼすだけの力を持つ馬鹿が数人頭に浮かぶからだ。


「あの宇宙人一家、馬鹿なことしてなけりゃ良いが」


短く溜息と吐くと真っ黒な空を見上げる。そこに散っている星は何だか俺の心を締め付ける。

何だか俺が小さいみたいだ。世界を意思一つでぶっ壊せる力があるのに……。


俺は世界をぶっ壊せるだけの力がある?


……ああ、そうか。今気づいたよ。


「世界をぶっ壊せるだけの力があるのに、なのに俺はたった一人の男に力負けするなんて」


見栄張って同等と言えれば良いんだが生憎とこの場には誰もいない。

本心を曝け出してしまおう。


「俺もこの戦い、無茶だと思っている節があるんだろうな。確証は無いけど、何なのかわからない恐怖が俺の中で疼いている気がする」


足を引っ張るものに、たぶんなるだろうな。

それでも俺は勝てるだろうか。俺は人にはあらざる力を持っている、つまり人じゃない。

こんなに気持ち悪いものも無いだろう。


ああ、もう読めてきたぞ。

俺の中には自己嫌悪しか無いじゃないか。まだ立ち止まらないだけ見掛けは良いけど、それでもいつか立ち止まる日が来るだろう。


この自己嫌悪の理由は何だ?

たぶん、この何なのかわからない恐怖だ。

恐怖が何処から来ているか何て考えればすぐわかる、あの男じゃあない。その仲間でもない。

世界だ、世界の力に俺は恐怖している。


「世界の解放」


俺の身に付けた新たな力。まあ自爆なんだが……。


「……俺は世界に恐怖している。克服するにはどうしたら良い? 答えじゃなくて良い。ヒントで良いから……欲しい」


いや、教えてくれる人物なんていないんだろうな。

何たって世界の中で一番偉いのは俺なのだから。俺が絶対の法則、世界の力を身に付けた者。


「……なら、それで良いか」


俺が絶対の法則で良い。うじうじ悩む必要なんて無い。俺自身が世界だ。

世界ってのはな、物凄く強いんだ。だから俺も強い、それで良い。以上!! 欠点など取るに足らない部分に違いない。

恐怖、それを感じているのはきっと俺じゃない。世界だ、世界が恐怖しているんだ。


そうさ、俺が世界の力を手に入れた時点で世界に矛盾が起きているんだ。

ただ流されるだけの意思じゃない。しっかりとした人格を持った人間、それが俺だ。


「世界の支配者っ!! 俺が世界を収める者だぁぁぁぁっ!!」


思いっきり叫ぶ。誰かが聞いていようと聞いていまいと関係ない。

それこそ些細な事だ。


すっきりしたので寝よう。うん、それが良い。


剣を鞘に戻し回れ右をする、と同時に胸を押さえる。


「あっ、う……」


何だこれ。胸が……痛い。


『理解不能』


頭に浮かんだこの言葉。けど違う、これは俺の思っていることと違う。

何が起こった、何が起きたんだよ。


意識と何かが切断されるような、そんな痛み。


「がぁぁぁっ!!」


魂が抉り取られるような痛み。あまりにも唐突だった。


そして、気がついたら俺はベッドの上にいた。


次回……海弟が倒れた理由が明かされます。

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