第332話『どうやら俺を含め薄情な人間が多いようだ』by海弟
手直しするから良いや、と最近執筆がメチャクチャになってきてる。
うん、ダメだよなそういうの。
という訳で今回もすいません。
白と黒の世界。まるであの剣を象徴しているかのような……深く考えすぎか。
勇者の顔を見つつ思う。
腰にある白の剣はかつて俺もそれを使った事がある。効果はと言うと光の魔法をコントロールできるようになる、というだけのしょぼい様なしょぼくないような効果だ。
その対になる黒の剣はというと現在勇者の隣にいる魔王が腰にぶら下げている。
この二人が並ぶことになるとは、まさにこの光景は滑稽だ。
「で、召集された理由は何? わざわざ海弟を使って呼び出すって事はよほど重大な事なんでしょうね? 魔王までいるし」
「それはこちらとて同じ台詞」
にらみ合うってほどじゃあ無いがお互いのことを牽制しているような言葉だ。
早く話を始めろ、と文句を目で隣にいる影流に送る。相手は俺が目的だということはわかっているのでたぶんこの二人を呼んだのだろう。
勇者は旅へ、魔王は正当な権利を持ち土地を治めたりして、まあお互い平和だったのだが……厄介ごとだと聞いて協力してくれるかなぁ。
「世界が白と黒で染まった理由は……知っているか?」
「……そちらは知っているようだな。部下に調べさせてはいたが、まだ原因はわからん」
「私も知らないけど、色があったって無くなってどっちでもいいしょ」
「良くない。このままじゃあ世界が崩壊、それに近い状態になる」
そこから、俺達が知りうる情報をすべて勇者と魔王に話す。
薄々二人も感づいているだろうが最後に一言、影流は言う。
「協力してくれないか?」
「雇え。金しだいだ」
血が繋がってるんだなぁ。やっぱり。
「……その話は本当か?」
「ああ、本当だ」
魔王と影流、両者の瞳の奥にチラリと疼くものが一つ。
どちらとも一応は国の代表ということになる。この話に乗って有利かどうか見極めているのだろう。非常事態なのに馬鹿なことをしてるなよ魔王、と言いたいところだが一応は魔王がやっている事は正しい事なのだ。そうも言えない。
勇者とはやっぱり違うなぁ、とか思いつつ勇者のほうを眺める。あれ、椅子が空っぽ。
そのまま左に視線を動かしていくと――
「バレてるぞ」
「あ、やっぱり?」
仮にもここは王の住む城。豪華な装飾は盛りだくさんだ。威厳を保つためだという進言がたくさん出ていたが税金の無駄遣いだと普通の城の半分程度の装飾となっているがやはり高い。
もう両手で数えれないぐらい高い。
足の指の助力を借りたって無理だ。
俺は睨み合う影流と魔王を避けて母さんのところへ行くと誰にも見つからないうちに母さんが盗んだ物を元の位置に戻す。
ああ、母さんよりかは常識人なのは父さんのおかげか。
しみじみ思っていると影流達に決着が着いたようだ。両者共に微笑んでいるところを見ると無事に承諾してくれたらしい。
勇者の方は金さえ払えば手伝ってくれるんだし後で交渉でもするんだろう。
「海弟、二人を部屋まで案内してやってくれ」
「へーい」
母さんの両手を縄で縛ってから魔王と勇者をそれぞれの部屋に案内する。
廊下に出ると、やはり二人は有名人。お偉いさんということもあって誰一人近づかないが畏怖の眼差しやら憧れの眼差しを向ける者がたくさんいた。
ちなみに少数派で勇者の手に巻かれている縄に注目した者もいた。洞察力に優れた人物だ、さすが俺の将来の部下。後で引き抜きするか。
城の中でも一般開放されていないお偉いさんしか入れない区域まで来ると俺も気もさすがに緩む。長らく話してなかったし少し母さんと話でもするか。
「母さん、旅の調子はどう?」
「ドラゴン相手に毎日死闘を繰り広げているわ」
恐ろしいことをするな。俺には無理だ、ドラゴン苦手……って、うん?
あそこにいるのは青空か。て、両手で何を抱えているのかな? ねぇ、青空さん?
「勇者、君の出番だ」
「いきなり改まって何よ。って、青空ちゃんじゃない。久しぶりー」
片手をあげて気楽に挨拶する母さん。それに気づいたのか青空も片腕をあげる……と同時に支えられいたドラゴンが腕から落ち、床に着地。あろうことかこちらへ向かってきた。
「よーし、俺は後ろを担当する。前から来る敵に備え剣を構えろ」
「敵なんていないわよ。しいて言えばここに魔王はいるわ」
「敵ではない。先ほどから敵意をこちらに向けているのは勇者、お前のほうだろう?」
「言うわね。表へ出なさい、世界を賭けた戦いじゃあ無いけど一度勝ち負けはっきりつけておきましょうか」
「ふ、面白いことを言うな勇者よ。良いだろう」
「な、何だか危ない話をしてるね二人とも……」
「あ、青空ちゃんはやっぱり勇者側に付くわよね、ねぇ?」
「……か、海弟。後ろを向いて何をやっているのかな!!」
こっちに喋りかけるな青空!! いくら怖いからと言って俺に頼るのは間違ってる。
俺はドラゴンが怖いのだから。
「私昨日の話の続き聞きたいなー。ベレテナの王様との対決のお話っ!!」
「じ、じゃあ俺はこれで。あとはここを真っ直ぐ進んだ先に二つ部屋があるから。左が勇者、右が魔王の部屋となっておりま~す。さいならっ!!」
全力で逃げる俺。
青空よ、お前の犠牲は忘れない。母さんが来てると聞いて少し話がしたかっただけなんだろうが勇者様と魔王様の相手は頼むっ!!
「第二『風軽』」
来た道を戻りに戻り、途中の道を右に曲がり俺の部屋へ。
さーて、ベッドの下で寝るか。
ベッドと平行になる位置に来て横になると転がりベッドの下へ。真っ暗だが、それで良い。
誰にも見つからない場所。そう、それこそがベッドの下さ!!
「しかし暗いな」
「ガウッ」
小さな灯りがベッドの下を照らす。
「お、誰だか知らないがありが……出たな宿命の敵と書いてライバルと読むえーと、俺の苦手なやつ!!」
ごろごろと転がりベッドの下から脱出。
さあ、次は窓から脱出だ!!
勢い良く窓を開け放つと下を見る。うん、誰もいない。
『林脱』を使えばいけるいける。
「『林だ――』」
「グルルゥ!!」
「悪霊退散悪霊退散、お天道様の元に消滅せよー!!」
無駄。無駄だった。
そう、敵は悪霊などではない。ドラゴンなのだ、勿論人に飼われているドラゴンとは言えドラゴンだ。
素早く動く、飛ぶ、光を反射する、などあのGにも少し似ているところがあるドラゴンだ。ちなみに鱗が綺麗だから光が反射するんだろう。
違うなら魔法だ、たぶん。
混乱している頭を無理やり現実に戻すとしよう。
俺は今現在どうなっている?
『A.空を飛んでいます』
服の襟をあの小さなドラゴンさんは掴むとなんと窓の外に飛び立ってくれました。
そうなのです、全人類の夢が叶ったのです。生身で空を飛ぶという。
「ふっ、全人類を敵に回す日が来たか……」
空を飛びたいなんて思った人間どもに告ぐ。
俺のトラウマがまた一つ増えました☆
後書きに書くような事じゃないですが……。
戦闘シーン? そんなものはカットして勝手に妄想してもらうためにあるんだよ。
すいません、面倒だっただけです。すいませんすいません。