第325話『納得いかない!! これは修行じゃねぇ!!』by海弟
ふっ、パソコンの不調レベルが4だぜ。
ちなみにレベル5が最大だぜ。覚えておくんだぜ。
つ、疲れた……。
バタンっ、とベッドに倒れこむとここ数日で慣れた柔らかさが俺を受け止めてくれる。
いくら寝てもこの弾力は変わることが無いだろう、というぐらい柔らかいベッドなのでここから出て行く時になったら鏡の中に忍ばせておこう。
そんな事を思いつつここ数日やった事を思い出す。
意味も無い掃除(廊下ピカピカ部屋綺麗)、意味の無い炊事(全体的に甘いと言われた)、意味の無い洗濯(汚れても居ない雑巾を洗う必要があるのか……)。
まあそんな俺の心の中をあわせダブルで疲れたわけだが、修行という修行らしく無いのだ。
強くなるためには魔法の上達は必要不可欠だろう。なのにそれの使用を禁止したのだ。勿論使った瞬間バレるようになっている。
あとはキツい拷問が待っている……というもっぱらの噂だ。何処から流れたかは言うまでも無いがご主人様である。
「はぁ」
魔法を使わないというのは思ったより精神にくるな。魔法を使う事によって得られる快感というか……それが心の支えにでもなっていたかのような喪失感。
もしも俺が世界の支配権限を失ったらこういう風に喪失感を味わう事になるのだろうか? いや、どの道失うと同時に殺されるだろうし……喪失感を味わうとしても一瞬か。
一つ溜息を吐くと布団の端に横になって移動しそこから毛布を体にぐるぐると巻きつけてもう一方の布団の端まで移動する。
俺の体温が一気に上昇する。服だけじゃあ無く毛布にまで包まったせいだろう。わかっている。
「これが何になるのか……」
毎日同じようなメニューを続ける……まあコレが仕事だとわかっている。
けれども納得いかない。こんなのを続ける奴の気が知れないな。何処かで発散させないと死んでしまいそうだ。
その術を封じられて……もう俺は臨死状態ってわけか。
「うううう、夢の中でいい。俺を戦わせろ!!」
目を思いっきり閉じる。勿論眠れるわけが無いのだが、魔法の補助無しで今日は力仕事をしたせいか、段々と体の力が抜けていく。
……強い、敵だ。思いっきり強い敵!!
☆
形状は人間型だ。けれども体の関節部を見れば明らかに人間じゃあないという事がわかる。
服も着ていないがフォルムとしては完成されたそれに近い気がした。つまりカッコいい人造人間が俺と対峙しているわけである。
ぐっ、と俺は拳を握って炎を頭の中に浮かべてみる。
拳に炎がともる。……夢の中じゃあ魔法の自由度が高くなってるなぁ。
こういう夢を意図的に見れるよう俺はなったのだろうか? とか思っていると相手は一言も発する事は無く腰にあった剣の柄を握り振りかぶる。
あまりに早い動作に一瞬驚いたがガードしなければ夢とはいえ真っ二つだ。こんな早い退場は誰も望んでいない。
アインに預けたはずの剣を背中から抜き取り相手の剣に打ち込む。
軌道がそれた相手の剣を見送ると相手の体へとタックルする。体勢を崩したところでさっき打ち合った事で痺れていた腕を振るい相手を真っ二つにしようと横殴りに剣を振るう。
すると、相手の剣の柄から一方の手が離れ新たな剣を腰から引き抜き二刀流……らしい、うまく俺の剣を防がれもう一方の剣で俺の喉元を狙い突き刺してくる。
体を一時的に強化しそれをギリギリ避けると剣を鞘へと仕舞う。
「水よ!!」
鋭い水となり相手へと襲い掛かる、それを余地していたかのように両腕を振るい水を打ち落としていく人造人間。
白いフォルムが霞むようだ。
俺もジリ損なので魔法をやめ再び武器で襲い掛かる。
今度は剣では無く槍だ。相手の攻撃外からチクチクしてやろう。
「炎、水」
水蒸気により視界がふさがれる……がここは俺の夢の中だ。
俺が勝てるように設計されている。勿論相手は静止中、俺は相手の姿丸見え。
「トドメァッ!!」
異常に硬い槍で相手の体を真っ二つにする俺。
バキゴッ!! とかいう折れた音と爆発音が聞こえたような気がするが……まあ夢だし大丈夫だろう。
うん、久々にスッキリだなぁ。
☆
うーん、と腕を伸ばす。
何やら爽快な夢でも見たんだろう、寝る前のもやもやがなくなっている。
これはありがたいなぁ。
「と、言うわけでだ」
部屋の隅々まで目をやる。
うわぁ、何この汚い部屋。しかも俺の寝ている場所なに……タンスの上か。
そこから退くと魔法で体を強化して元の位置に重い家具を戻そうとして使ったら使ったでキツいお仕置きが待っていることに気づく。
ああ……俺は世界の支配者のはずなんだけどなぁ。
しょうがないので動かせないものはそのままにして簡単に部屋を片付けると着替えて廊下に出る。
いつ見ても目が痛くなるようなピカピカの廊下がお出迎えしてくれた。
そこには染み一つ無い。当たり前だ、俺が掃除しているのだから。元々無いだろうって?
……それは言うな。これは俺の手柄、それで良いんだ。
「ふぁぁぁ、そろそろ飽きてきたなぁ」
というか魔法禁止を解除して欲しい。
闇魔法でこの次元ごと吸収してやろうか……。自爆はイヤだなぁ。
そんな事を思っていると我が主マリア様の部屋の前に着く。
何故だかセバスチャンが部屋の前に立っている。
「……あの」
「何だ」
「その頬――」
「聞くなっ!!」
赤い頬に視線をやる俺を睨みつけるセバスチャン。
同僚じゃあないが同じ役職通し仲良くしようぜ、と飲み明かした夜はいつの日か。
俺の記憶に無い出来事だなそれは。
「着替えでも覗いたのか? アレはバレずにやるから覗きなんだよ、見つかった時点で犯罪になる」
「……お前も扉の前で待ってろ。中には入るなよ」
「図星か。なるほど、何色だった?」
「白で熊の絵柄が入っていたな」
なるほど、やけに詳しい……見たのは一度目じゃあないな。
まあ一緒に暮らしているにも等しいのだ、何度ラッキーチャンス……いや、待て。
「化粧はしていたか?」
していたら化け物だからなアレは。
「服を着る前に化粧などするか。そんな事もわからないのか!」
「怒鳴るなって。んーじゃあ、ラッキーだったな。殴られてるけど」
「少し黙れ」
その拳を下ろしてくれたら黙る。黙るから今にも殴りかかりそうなその表情はやめて。
あ、だからって無表情は無表情で辛い。
そんな事をしていると部屋からマリアが出てくる。
ちょうど扉が開く位置に立っていたセバスチャンは巻き添えを食らいミシィ、という音を立てて壁へと顔から突っ込んでいく。
「ミシィ? この扉も年季が入ってきたわね」
「その手を退けないと殺人の罪で逮捕するぞ」
何とかマリアの手からセバスチャンを救い出しティッシュ箱よりティッシュの支給と応急処置が終わると今日の予定についての話になる。
「お前等は何をするかわからないからなぁ。で、今日は何だ」
「仮にも……って、これ言うの何度目かしら? 毎日言ってるような気がするんだけど」
「一週間じゃないか? ああ、今日も入れて一週間と一日、八日か」
「……ちょっとシリアスになるぐらいしてもいいんじゃないの?」
ん? どういう意味だ?
「相手は世界の支配をもくろんでいるんでしょ?」
「大まかに言うとそうだな。けどそれは達成されないがな」
「自信満々なのは良いけど、世界の支配者の力は段々弱まっていくことになるわよ」
「……っ、何でだよ。世界の力が吸収されでもしたのか?」
「似たような事はされてるって事よ」
「どういう意味だ」
長い説明に入ったので要約すると。
裏世界の連中は自分等の移行に沿わない世界を次々に破壊しているんじゃないか? と言うことだ。
「そんな事して何になるんだよ。手に入れるものが少なくなるだけだろ?」
「それでも良いんじゃ無いかしら? ほら、裏世界の方は無事なわけだし、コピー世界が作れるのならいくらでも力の増強はできるわ」
「なら俺がそれをやれば――」
「この状況で? 破壊ペースを知らないの?」
「ん? 相手は一人だろう?」
たかが一人、ならば一つの世界を破壊するのだって何十日もかかるはずだ。
「……敵を甘く見すぎよ」
「む、そんな事は無いぞ。俺は――」
「敵は一日に三つのペースで世界を破壊していっているわ」
「な、一人で……」
「一人じゃない。六人よ」
「……どういう意味か説明してもらおうか。外の様子もお前は窺っているみたいだしな」
そのくせ何で支配者様の元へ情報が届かないんだよ。
呆れつつもマリアの説明に耳を傾ける。
「なるほど、コピー世界のすっからかんになっている神のうち最強の五人を部下にしたってわけか。けど想いのままに動く兵士にはならないんじゃないか?」
「向こうの世界にも魔法はあるのよ。それに科学技術だって」
「魔法と科学を駆使して……洗脳でもしたのか?」
「洗脳じゃなくて、その二つをあわせて神の中に人格を入れたのよ。勿論心も入っていると思うわ」
……難しい話になってきたぞ。
敵は最強の神五人に加えそれを操る最強の中の最強、三日月。
「……数で攻めてこないのは何故だ?」
「洗脳できていないグループをまとめあげるのに時間はかかる、それは当然でしょう?」
「大きすぎるグループじゃあ統率が取れない可能性があるって事か」
ふむ、敵が一人から六人に増えてしまった。
こうなったら六倍の修行で……。
「と、まあここまでの情報をあたえたんだからいけるでしょ、ねえ?」
「どういう意味だ? 修行はこれから――」
「もう最終段階も終了よ。あとは気づくだけ、これに」
そう言って巻物を取り出すマリア。それを受け取ると紐と解き文字を読もうと努力するが読めない。
頭に入ってくるような感覚すらないし異変さえない。
「……どうすりゃ良いんだ」
「魔力」
……そうか。
言われたとおりに魔力を巻物に流し込んでいく。
段々と発光していく巻物。それは姿が見えないほと輝くと……粉になり俺の体に吸収された。
「……え?」
「この巻物には世界の解放の術が封印されています」
「な、なるほど。これで俺はそれが使えるようになったわけか。で、どんな効果なんだ?」
「海弟さんが死滅し表、裏関係無く世界自体に人格が生まれ世界の支配者という立場が消え去ります」
……な、何ていう技だ。なるほど、最悪の時に備えろという事か。
「って待て。俺が死ぬってどういう事だよ」
「世界の支配者のリスクってやつです」
「納得できるようなできないような」
「それでは修行も終わりです。さようなら、また来てください、いやここから出してくださいよ」
「出れないのか!?」
「それでは」
「ああ、もう!! 修行で得れたのは自爆だけか!? そうなのか!?」
「わたしからも一つ。その技はある一定の条件下で発動すると――」
音が消える。
視界も白くなり、感覚が薄れていく。
さ、最後の言葉は何!? セバスチャァァァァァン!!
結局ベッドを持ち帰れなかったなぁ。
終わりは突然ですし。始まりも突然ですが……こうやって見ると平和を書くの自分は苦手ですね。
平和な光景だけで話を書ききる自信が無いです。
もう一度言います。
平和? 戦争じゃ!!
で、パソコンが不調のおかげでじっくりと敵さんを考えることが出来るようになったわけですが……まだ募集しますかね。
五人! 五人ですよ五人!! ……それを募集しますか? ええ、募集しますとも。