第321話海弟を強請
海弟らしいというか……なんと言うか。
こんな一方的な……ねぇ?
もわもわぁ、と広がる白い煙。とりあえず俺の体は無事……と。
次に相手を確認する、白い煙のせいで良くわからないが俺の予想では相手も俺と同じような状態だと思う。
晴れるのを待つのもアレなので、わざと大きな足音をたてつつ相手の姿を探す。
俺が見つける前に煙も晴れ悪魔の姿も見つかる。悪魔の表情が逐一わかるわけではないが、たぶん少しは驚いているだろう。
しょうがない、説明をしてやろう。
あの霧の中、魔力が使える場所なんてあっただろうか?
少し考えれば無いとわかるものだが、この問題の中に出ていない場所があるだろう。
つまり霧の外!
ここは大都会だ、鏡はそこ等にたくさんある。
つまりだ、光の魔法を俺はコントロールできない、しかし爆発が起きない状態で、唯一通れる道を示されたら……魔力はそこを通って魔法が発動する事になるだろう。
失敗したらコントロール不能で自爆の危険性ありだが成功したらしい。
「お前の反射も不意打ちには対応できなかったみたいだな」
『どうして魔法が……』
人が転移できるんだ、魔力を鏡を通して転移させるのなんて簡単だろう?
発想の問題だよ。
黒い霧を呼び込もうとしているのか相手は魔力を練り始める。
『……呼び出せない?』
「ああ、やっと気づいたのか。ふっふっふ、光の魔法というぐらいだ、ただの爆発魔法なわけあるまい」
何と! 闇の力を封じることができるのだ!!
……と、言うのは嘘で。
遅い、遅すぎるぜお前!
もうすでに俺の魔力をこの空間に散布し終わっているのだ!
つまりお前は魔法を一切発動できないわけだ!
「と、言うわけでコチラの本気を見せてやろう!!」
『風星』を発動する。
まずはわき腹へと空気の塊をぶつける、もちろんあの霧がない相手だ、蟻よりも弱いぜ。
数メートル吹っ飛ぶ悪魔。さて、ココからが本当の地獄の始まりだッ!!
下腹(?)へと空気の塊をぶつけ、一気に空高く悪魔を飛ばす。
そして次に『鏡』を発動する、そっちに空間に魔力を散布し続けるのは任せ俺は攻撃に専念する事にする。
「炎よ!」
その炎を槍状に変化させ、何百にも複製していく。
さーて、焼けろ悪魔っ!!
落ちてくる悪魔へと炎の槍を突き刺す。
ジュワァァァァァッ!! という音と共に嫌な臭いが漂う。
まだだ! まだ終わりじゃねぇぜ!!
肉体強化をかけると、小手をはめる。
鉄製の特に変わりのない小手だ。
「……落ちて来い悪魔っ!! フルボッコにしてやるぜ!」
今までやられた分は一億倍返しだ!!
黒い煙を上げつつ落下してくる悪魔を発見する。
はっは、今トドメをさしてやるぜ!
俺は落下地点まで移動すると上を見て落ちてくるスピードを確認すると、利き腕を目一杯引く。
そして俺の間合いに入った瞬間、思い切り拳を突き上げる。
鉄と鉄がぶつかり合うような音と共に拳に嫌な感触が伝わってくる。
小手とは手と腕の間を守るもので拳を守るために作られているものではない。
ただ、今回は不安だったから使わせてもらったわけだが……使って正解だったかな。
「うぇ、小手が折れ曲がってるよ」
これが無かったら俺の腕の骨は折れてただろうなぁ。
と、まだここは戦場なのだ。
もう一度吹っ飛んだ悪魔を探す。
どうやら再び空中へと舞い上がったらしい。
「……じゃあ次は蹴りか」
「次は無い!!」
視界が揺らぎ場所が豪邸のような場所になる。
そこにはマリア&セバスチャンのコンビが。優雅にティータイムらしい、お茶とお菓子が用意されている一室でコチラを見ていた。
扉が開いている、ということは俺も入って良いということだろう。
だだっ広い廊下からその部屋に入る。
一応、ということで扉も閉めておく。
「良いところだったのに」
「良いところだったのに、じゃあない。炎の時点では倒せていただろう。何をそんなにムキになっているのだ」
「一億倍返しの法則」
「返しすぎ。多少危ういところはあったみたいだけど、合格。次に行きましょ」
「危ういところなんてなかったぞ!! まあ良い、次は何だ?」
俺と似た種類の敵と戦う、ときたから俺の苦手とする敵と戦うというところだろうか?
「そんな期待した顔をせんでも……、セバスチャン」
「はい」
そのセバスチャンが反応し、俺にA4ぐらいの紙を数枚渡す。それを受け取ると一番最初の行からじっくり読んでいく。
ここまででわかったのだが、相手の弱点など色々なところに散らばっているものなのだ、それを突けば簡単に倒す事が出来る。
勿論俺にも何処かに弱点があるのだろう。
紙をすべて読み終わる。
「……よし、修行終了だ!」
「馬鹿、待て。頭は大丈夫か?」
「心配するな、お前の雑用などしたくないという意味だ」
あの紙には長ったらしく人権など捨て奴隷となれ、と書かれていた。
勿論ヤダ。
「はっきりと言うな、だからお前は馬鹿なのだ」
「この口紅が」
「口紅?」
「く、口紅……っ、ぷぷっ」
「……セバスチャン、先ほどの減給の話なのだけれども……」
「わ、わたしはコレで!」
俺の入って来た扉から出て行く鬼教官風セバスチャン。
減給がイヤなら笑わなければいいのだよ、ふっふっふ。
「で、帰り方はどうすればいいんだ?」
「帰る気マンマンなのは良いが、帰さんぞ?」
「何で!」
「そりゃあ、修行がすべて終わってないから」
「……あの雑用のことか? アレはいらないだろ」
「支配者たるもの支配される側の気持ちを知らねばな」
……説得力があるから困る。
けれども、支配される側というと支配される側の気分をずっと窺ってないとダメじゃねぇか。
「……ん? となると、俺は気まぐれだから世界が嫌がってるかもなぁ」
「ようやく気づいたか。それを強請するのが今回の修行なわけ」
「……えぇ」
「不満そうな顔をするな。それと男の泣き顔なんぞ見ても何も思わんぞ」
それについては俺も同意見だな。
「……はぁ、何日すりゃあいいんだ」
「何日でも、私が合格を言い渡すまで!!」
……ふざけんなよ?
『(魔力)鏡』→転移→『鏡(魔力)』
海弟がこれを覚えました。
魔力付属は前々からやっていたのだけれども……ついにコレをやる時がきたのです。
ってなわけで、勝手に『対』に弱点を入れてすいませんでした。
ただ、海弟なので大目に見てやってくださいな。
まだまだ敵さん募集してまーす。