第320話『俺の最終奥義を食らえっ!!』by海弟
うわぁ、やっちゃいけないことを今回やってしまった。
相手がなんらかの魔法を使っている事は確かだ。
ただそれがわかったぐらいじゃ何も出来ない。俺は相手の魔法を封じる魔法なんて覚えてないし、第一に俺に似た能力を使う者ならばその攻撃さえも反射させてしまうと思う。
という訳で物陰に隠れて作戦会議中だ。
「俺は鏡を使って攻撃やら魔法やらをはね返すわけだが、アレは使っている様子が無かった、いらないのかも知れないが……便利すぎやしないか?」
不審に思いながらも悪魔ならばありえる、と心のどこかで認めてしまっている。
打開策も見出せないままだが、数うちゃ当たる。いくつもの魔法を使えばきっと勝てるに違いない。
肉体強化を再び使い一気に加速する。
正面は危ないので後ろから不意打ち気味に魔法で倒すっ!!
まずはあの黒い霧みたいなのを吹き飛ばす事から始めなければいけない。
さっきの呟き通り何も使っていた気配がなかった、ならばあの霧が反射能力を持っているに違いない。
ならば簡単だ。
「風よ!!」
突風を生み出し黒い霧を払い飛ばす。
見事に吹っ飛んでいく霧、これでもう反射は使えないはずだ。
「水よっ!!」
相手へと水の塊を打ち出す。
さて、これで少しはダメージを与えれるはず!!
その瞬間、光線にも似た何かが水の塊を貫き俺をも貫いた。
あまりにも急だったため避けることもままならなかったが、肉体を強化したこの体だったためか動けないほどのダメージは受けていない。
貫通はされていないようだしそれほど気にしなくてもいい傷だろう。
気にするのはもっと別のところだ。
「何で……。魔力を練った様子も無かったぞ! 何でいきなり……」
まさか……、俺と同じように魔力の通り道を作ってから魔法を使っているのか?
それなら相手に悟られる魔法を使う事が可能だ。あくまで小さな魔法だったらの話だが。
だが今のは違う、俺の魔法までも打ち消ししかも俺にまで攻撃を届かせた。
「……どういう原理だよ」
『教えて欲しいか? なぁ?』
人間の声ではない、が確かに人間の言葉を使って喋っている。
この悪魔、何を考えているのかまったくわからない。
低く呻くような笑いの後、ぺらぺらと話し続ける悪魔。
『オレが使っているのは、攻撃を反射させる魔法だ。勿論、物理、魔法を問わずな』
「わかっているさ。どっちも防がれていたしな」
『物理の方はこの棍棒で防いだんだ、筋力無いくせに武器など持つな。そしてだなぁ、この魔法。相手の魔法までもコピーしちまうんだ』
……コピー?
おかしいだろう、魔法のコピーなんて一瞬にしてできるわけが無い。
一瞬にして生み出す事はできても一瞬にしてコピーする事は出来ない、この理屈は簡単だ。
「簡単にコピーできる魔法なんて使ってたら簡単に攻略法を見出されてしまう、だから少し凝った魔法を使うのが普通の魔法使いのはずだがな。俺だってそうしてる」
『だが、オレの能力には可能なんだよぉ。わかるか? わからないだろう?』
「わからなくなって良いさ。コピーされた技なんて全て防ぎきってやるさ」
俺自身の魔法なのだ、防ぐ事は簡単だ。
『どうかな?』
あたりを暗闇が包んでいく。
これは……霧か。
「って、不味いぞ!!」
『コイツは魔力の通り道だ、オレ専用のな。この道には優先的にオレの魔力が流れオレの魔法が発動するようになっている』
なるほど、俺が遠隔的に操作しながら魔法を使える原理はこれと似たようなもの、というわけか。
……と『風星』を使わなくても魔法を防御できないか?
魔力を体の外に出して……出ない。
「コレは……」
『オレの魔力だ。他人の魔力はコレで外に出す事が出来ない』
クソッ、こんな事なら俺が先に使っておくべきだった。
肉体強化の魔法も霧のせいか解除され、ぽつんと俺は立っているだけの状態となった。
霧も吸ってしまったしこのまま魔法を使われたら俺は終わるな。
……さて、ここから逆転しなけりゃいけないわけだ。
会話で長引かせている間に何か思いつかなければいけない。
「俺も良く使う手だな。けれども、俺はそれに弱点があることを知っているぞ!」
『……あるわけ無いだろう』
「あるんだなぁ、コレが」
しゃがみ込み地面へと拳を打ち付ける。
『……まさか』
「悪魔様でも気づかないとは……。やれやれ」
拳の先端より地面へと俺の魔力を浸透させていき……魔法を発動する。
「風よ!」
『ぬぅっ!!』
強風が地面より吹き霧を飛ばしていく。
ただこれも時間稼ぎにしかならない。相手の姿が確認できていないまますぐさま霧が寄ってきて視界を塞いでしまう。
『コレで、終わりだ』
相手の魔力が固まっていくのが手に取るようにわかる。
ピンチなせいか頭がうまく回らない。この修行場は表の世界か裏の世界、どちらとして取られるのだろうか?
そういえば何故裏の世界の白黒が表世界に現れているんだ? 世界ごと表の世界にぶつかってくる気か?
そんなことしたらどっちの世界も消えて世界の支配者どころでは……となると世界同士の融合か。
「はぁ、俺は世界の支配者失格だな。最後に聞きたい、お前の能力の名は?」
『特殊魔法『対』という。相手の技を相殺し、コピーする魔法だ』
「なるほど、ありがとう」
相手の技を相殺なんて勝てるはずが無かったんだよ。
ったく、何をムキになっていたのやら。
「倒す方法は元々一つじゃないか」
『待て? 倒す方法』
「そうだよ。俺が編み出した倒す方法! さあこの魔法を食らえっ!!」
体内で魔力を練って練って練りまくる。
『『対』 これでお前の魔法は――』
「うるせー、お前のその魔法、相殺するためのエネルギーは何処から来ているんだ?」
『簡単だ、体内にある魔力――その許容量を超えようというのか? 無理だな』
「だろうな。悪魔ってのは意外と魔力多く持っているし。で、エネルギーが来るのは一箇所だけか?」
『ああ』
「本当に?」
『……あるのか?』
知るか。
これからやってみなくちゃあわからないんだよ。
さて、最終奥義だ。
……汗掻いてきた。失敗したら永遠に死ぬからな。
「コレが俺の最終奥義だっ!! 光よ!!」
『馬鹿が。魔法は優先的に――』
俺の視界がホワイトアウトする。
何だか遠いところで爆発が起きているような……。
わからない?
ははっ、なら良いんです。ここで悪魔との会話をさせたのを後悔してるなんて感づかれたくなかったですから。
特殊魔法『対』なのですがかなり特殊なものとなってしまいましたねー。
まあ良いんです。海弟なりで倒して……。まあ次回説明……できると良いですね。