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第305話『生きてれば良いんだ』by海弟

うん、もう……何だろう。

いくら腕があっても足りないぞっ!!


目の前の壁を見つつ思う。最初は良い具合に猛攻を振るっていたのだが今ではこの壁に阻まれ弓による攻撃でじわじわと攻撃されている。

たぶん地属性の魔法か何かだろうと最初は思ったが壊しても壊しても再生するのだ。明らかに魔力切れが起こるレベルなのだが……それでも再生する。

なので降ってくる矢を避ける、防ぐと慌しく防戦へと変化してしまった。


「相手側の兵士は弓兵と魔法使いの部隊だけで構成されてるのか!?」


舌打ちしつつ再び上を向く。防ぎきれる量じゃない。肉体強化である程度まで防げるにしても数が数だ。相手は消耗戦のつもりで攻撃してきているだろう。

それほどエルフが何かしたっていうのなら別だが……力を誇示するためだけならば俺も容赦なしで行くつもりだ。


「ただ問題は壁を破壊してからだ」

「良いから壊しなさいっ!!」

「お前は馬鹿かっ!! いや、気配を探れるだけの余裕が無いのか?」


壁の向こう側では確実に俺達が防ぎきれないぐらいの特大の魔法の発動のために詠唱されている。

魔力の動きで俺も少しわかる程度だがこれは確実だ。


俺だって一人で二人分の動きを……できるな。うん。


「フィルっ!! 俺の近くに来いっ!!」

「え、ああ、うんっ!!」

「そして俺に向かって降ってくる矢を防げっ!!」

「って使いっぱしりみたいにっ」

「お前が壁を破壊して欲しいって言ったんだろうが!!」


まだ喚いていたが俺は魔力を練り始める。

二つ同時に魔法使うってのはかなり慎重にやらないとそれぞれの属性が混じって自爆ってことになるからな。


色々無駄を省いて支配者モードになれば意味無しになるんだが……あの状態は抵抗ある。


うん、発動できる。


十二分(じゅうにぶん)に時間を使い魔法を発動させる。

まずは目の前に鏡の展開だ。あの城で発動させたのと同じぐらいの魔力を使い特大の鏡を作ってやった。その鏡に俺の魔力の半分を付属させる。

そして次。

残りの半分を使いこちらも特大の水の塊を出現させる。


勿論簡単な理論だ。


地面ごと流せば良いんじゃない?


エルフの同士等数名(意図的に三人含まれる)と共に壁が崩壊していく。

同時に水を含んだ足元が緩んだがまだ俺の仕事は終わってない。

やはり前方より魔法が発動する――が甘い。そいつ等が攻撃したのは俺の鏡。

魔法が自動的に発動する。『鏡』の能力の一つ。魔力付属により俺と同じように、その魔力が尽きるまで魔法を発動できるのだ。

向こう側の魔法使いが発動したのは……炎か。

その炎に向かって威力増強の魔法を鏡からかける。そして自分自身、と言っても鏡だがそれに反射の魔法をかける。


反射し返し相手側の兵士を一掃、成功か?

わざわざ強化までかけたのだ。これで失敗するなんてありえないのだが……どうだろうか。


嫌な予感と共に目の前を見る。

周りに舌打ちする音が響く。誰のものかわからないが俺だってしくじった気持ちが大きい。

煙が晴れはっきりとする。

俺の目の前に立っているのはあの攻撃に耐えた、敵だ。

服装から見れば一般の兵士ではないことはわかる。貴族か? とは思ったがどうも違うらしい。家紋が付いた装備をしていない。

高級そうな装備なのだがどれも実用的なものばかり。成金趣味の貴族が使いそうにない武器ばかりだ。


「傭兵にも似てるな。ただ傭兵が買えるような装備じゃあない」


不穏な空気が立ち込める。どうなっている、戦力差は明らか……待てっ!!

目を瞑っている相手を見て一番最悪な事態が起こっていることに気づく。

支配者権限を使うときの俺に似ていないか? という事実だ。まあ最近は目を瞑らなくても発動できるほど余裕が出来たがこいつはそんなこと無いんだろう。

ただそれで気づけたわけだが。


「フィル、後ろの奴等全員連れて逃げろ」

「た、確かに強そうには見えるけどさ……。この人数差だし――」

「関係あるかっ!! お前だって知ってるだろ? お前もそうなんだし。一般人じゃあいくら集まっても勝てない存在ってのは居るんだよ」

「……な、なら私だけでも残るよっ!!」


……うーん、心強い申し出だが断ろうじゃないか。


「こっちには怪我人が居るんだ。それも大勢」


俺も原因の一部ってことは避けておこう。


「そいつ等が自分の身を守れるか? たぶん俺達が戦えば巻き添えを食らう奴が出るだろう。それを守るのがお前だよ」

「普段は外道なくせに」


そうか? エルフの大勢に恩を売っておいて損は無いと思っての行動だが……。

まあ良いんだそれは。


「お前の納得なんていらないんだ。いるのは俺の利益だ!!」

「言い切った!? 私にも利益でるそれ?」

「勿論っ!!」

「……じゃあしょうがない。連れて逃げるよ」

「敗戦じゃないんだから落ち込むな」


一度フィルの背中を叩き下がらせる。

さて俺達の戦いとなるわけだ。


ぞろぞろと下がり始めるエルフ共にはもはや注意を払う必要は無い。

ただ気づかせてやろうじゃないか。


「俺にはその力は効かないぞっ!!」


相手も世界の支配者ってわけじゃあないだろう。

ならばその下位に存在するものだ。つまりこの世界に存在する神の力でも操っているんだろう。

神の力っていっても一種類じゃない。この世界に存在するすべての神だ。そうでないとすべてを操ることは出来ないからな。

何かに特化しているってことはあるだろうがそれでもすべてを支配できるのには変わりない。


「お前のようなちっぽけな存在が俺に喧嘩売って良いと思ってるのか?」

「知ったことか。俺は俺のために動くまで。お前と一緒だろう?」

「違うな。今のお前はこの国のために動いているっ!!」

「それは客観的に見た時のことだろう。今も俺は俺のために動いているんだ」


頭の固い奴だ。客観的に見たことがすべてなんだよ!!

いくら説明されようが自分の中で理解したことが真実なんだ。


「柔軟な考えをしたほうが良いぞ?」

「知ったことか。お前も何処かの神に力を与えてもらった身なのだろう? ならば俺と同じじゃないか」


同じねぇ。よし、不敬罪で死刑かな。

体中に魔力を……あ、魔力切れだ。


そういえばさっき使い切ってたな……。魔法石使って今すぐにでも回復したいところだが俺も余裕のある戦いができるとは思えない。隠れるところの無いこの場所じゃあそんな隙でさえ見せたら負けだ。

……あれ、となると……武器が取り出せないっ!!


手に持った剣を見る。これ一本で戦えというのか!?


「か、勝てるわけ無いだろうがっ!!」

「さっきまでの(いき)はどうしたっ!!」


強そうな剣を持って走ってくる相手。

それを腕に掠らせつつ避ける。魔法で強化できてない俺の体なんて一般人より少し強いぐらいの力を持った男子高校生だぞ!?


そこまで考え残る戦法が二つに一つだということに気づく。

一つはこのまま戦い負ける道。もう一つはハイパー海弟モードこと支配者モード(女体化)になり圧勝する。

さてどっちだ……どっちなら……。


「うぉぉぉぉぉ、迷うっ!! 物凄く迷うっ!!」

「思ったより弱い奴だ」


何やら生々しい人を斬るような音が俺の耳に入ってくる。

何やら胸の辺りが苦しくて痛いんだが……。


ああ、これは死んだ。完全に死んだ。

さ、最後に鏡を……。


バラバラと鏡を撒き散らしつつ倒れる俺。





「復活っ!!」

「元気じゃの。というかこっちの身にもなってくれんか?」

「お前は機械だしぃ、良いだろ別に」

「次は無い。絶対に次は無いぞっ!!」

「なら今ここで消してやる」

「……悔いありまくりじゃからけさんでくれ」

「ならば?」

「次回にこうご期待」

「よろしい」


さてここ気づいたんだが第三の戦法だ。

ここで魔力を回復、そしてさっきのところまで鏡経由で向かい見事不意打ちで倒すっていう構図だ。


「けど倒れたときに鏡全部落としちゃったんだよなぁ」

「わしの家の便所に一つ――」

「便所なんてあるのかよ。ありがたく使わせてもらおう」





「期待はずれか。これならば俺一人で来るんだったな」

「期待はずれとは失礼なことを言うなお前」

「っ、死体が!!」

「こっちだこっち」


優しい俺は声をかけてやる。転移するときに少しだけ回復していた魔力を使っちゃったんだよな。

まあ少量残ってた魔力使って鏡から魔法石を取り出して一気にもう回復してるが。


「さて、俺の本気を見せてやろうじゃないか。第二ラウンドだ」

「化け物めっ!!」


ああ、少しだけな?


これこそご都合主義!!

まあ、ただ仕切りなおしただけですけど……。

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