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第304話背負い投げとはちょっと違う

思った。感動する話って書くの難しい。

特に海弟が主軸で回る話のときは……ってほとんど。

基本的に俺は無欲だ。例外はあるが無欲と言ったら無欲なのだ。

ほら眼前を見ろ。金銀財宝が詰まれているが俺は取ろうともしない。何で出来た人間なんだろう。


この場所はエルフの里でも一番高い位置に存在する長老の部屋とか何とか言うところだ。

名前の通りエルフの長老が住んでおり村の様子を観察したりしているのだ。この村を国に例えると王様的立ち位置となる人なのだ。

フィルは悪魔ということもあり警戒されたが勿論気にせずズカズカと村に入りここまで来たわけである。

そして着いて一言俺はこう話を切り出したのだ。


『前払いで二分の一、後払いで三倍増し、どっちが良い?』


きょとんとした顔の村長。何を言ったか理解できなかったのではなく単純な驚きだろう。

まあその後多少暴力的なことをして隣国からの援軍だと知らせた後前払いの二分の一を支払うと村長が言ってきたわけである。

勿論受け取らない。いや、三割増しで受け取りたいわけじゃないぞ? ほら、謙虚さが、な?


「良いから受け取ってくだされっ!! 物見の話ではもうすぐそばに迫ってきているとか!」

「ならば早く戦の準備をしなくては!! 今は報酬の話などしている場合ではないはず!!」

「ひ、ひぃ!! 三割増しなど払えないのですじゃ!!」

「知るかっ!! ほら、ローンで何とかなるだろ?」

「ろーん? あ、待ってくだされっ!!」

「待ってたまるかっ!!」


長老の家からなんとか脱出すると戦の準備と称してエルフの男共を集める。

耳の良いエルフだ。俺と長老の話など聞いていたのだろう、俺が集合の号令をかけるとすぐに近寄ってくる。


「あー、うん。君等の仲間の一人、勇敢な者が我々に伝えてくれた。話は聞いていたんだろうけど俺達が助力する! 安心しろ!」


久しぶりに叫び声をあげた。まあ最近は突っ込みもボケもやっているから多少地声がでかくなってきているが。

今までの突っ込みを回想にして思い出しつつある時男共の中から声があがる。


『待ってくれっ!! その悪魔の子、そいもお前の仲間か!』

「安心しろ。こいつの身分は奴隷以下だと思ってくれて構わない」

「えぇ!! ちょっと酷いっ!!」

「ほら、ちょっとぐらいにしか酷さは感じていないんだ。罪悪感なしに罵ってくれて構わない。それじゃあ各自武器を持て。武装して立ち向かうぞ!!」


野太い男の声がいくつもあがる。獣の叫び声より大きかったかも知れない。

反論しようとしていたフィルも思わず口を閉ざして後ずさる。


各自去っていくのを見てやっと反論するフィル。


「いつから私が奴隷以下の存在になったのかなぁ?」

「産まれた時からだ。気づかなかったか?」

「え? あ、嘘だっ!!」


無駄な討論だなぁ。まあ平和っぽくて良いか。


「フィル、お前戦争に出るのは初めてだろ?」

「ど、どうしたの急に……。って海弟も始めてでしょう?」

「俺? 俺は何度も前線にでて戦ったなぁ。ある時は魔族、ある時は人造人間、ある時はドラ……そのせいでトラウマになったりしたな」


ドラゴンの件については戦争とは呼ばないかも知れないが。

一度目を伏せて心の準備を整えてからフィルのほうを向く。


「まあ良いから。俺が言いたいのは、ここで待ってたほうが良いんじゃないか? ってことだ」

「悪魔の子フィルは何よりも惨殺を趣味とし血肉を食らうことをここに誓います」

「誓わなくて良い。まあわかった、勝手に死ぬなよ。墓は作らないからな」

「自分の身の心配した方が良いわね」


そう言って村の出口に向かっていくフィル。そういえばあいつは武器らしい武器を持っていないな。

まさか魔法だけで戦争に参加するんだろうか? 危なすぎる。


「フィル、ちょいこっち向け」

「ん?」


さほど遠くまで行ってなかったフィルがこちらを向く。

んー、やっぱり扱いやすいって点でレイピアだろうか? ただ戦争で使うような武器じゃないんだよな、相手の数がわからないし。


「まあお前が死のうが勝手だし良いか。受け取れっ!!」


そう言って鏡の中からレイピアを出しフィルに向かって投げる。


「一分前に自分が言ってたことをぉお! あ、危ない」


危うく脳天に突き刺さるところだった。それはそれで面白い死に方だからありだ。


「そういやこのまま俺が指揮を取っても良いのか?」

「ええ、人の方が妖精よりも多くの戦争を体験していますからね。で、報酬――」

「聞こえないなー。安心しろ、ダメと言われたらその時は一人で突っ込むだけだ」

「い、命知らずなことを……。あの軍勢の中には今の皇帝の息子であるリベックという名の人間が混じっているのです、ところで報酬――」

「リベック? 強いのか?」

「負けなしの剣士だそうで。まあ初陣らしいですがな。なんでも神の力を操るとかで、魔法とは別の力を使い猛攻を仕掛けてくるとの情報もあります。報酬――」

「神の力か。なるほど俺が負けることは無さそうだな。何たって俺は世界の支配者だからな」

「またご冗談を。それよりも報酬――」

「さて準備も出来てきたみたいだし俺も行くかな。エルフってのは支度が早いのか」

「ああっ! 報酬を受け取ってくださーい!!」


聞こえない。まったく聞こえない。

村の入り口に向かい走り去る。フィルが見つかったところで歩くスピードを緩める。

ん? 何だ?

さっき見えたのはフィルだけだったが良く見れば落ちこぼれてそうな三人組みがフィルの周りを囲んでいた。なるほど俺の言葉を真に受けるとは馬鹿も居るものだ。

悪魔より悪魔らしい笑みを浮かべつつエルフの集団を掻き分けフィルの元へと向かう。


「そこの三人。死ぬか?」

『え? あ、あぁっ!! 人間のっ!! この度は――』

「知らん。お前等みたいな阿呆が人間にちょっかいだしているんじゃないのか? ほら死ぬか生きるかどっちか選択しろ。士気に関わる」

『な、何でオレがそんなこと選ばないといけねぇんだよ!』


言葉が素に戻ってるぞ。エルフにクリーンなイメージを持ってない俺なんだが僅かな望みすら経たれたな。

はっきり言おう。エルフも人間と同じだ。馬鹿すぎる。


「首が三つ飛んだな。まあこのあとお前等は戦死という名の惨殺されるんだ。覚えておけよ」


とりあえず三人に蹴りを入れて端で見守っていた野次馬に蹴り飛ばす。

士気がガタ落ちだまったく。


「待つのも面倒だ。それに種族を根絶やしにしようと侵攻を続ける者への憎しみはお前等にあるか!! ならば迎え撃つぞ」


俺の言葉で火の付いたらしいエルフ達。士気をあげるには良い演説だ。

長いのは嫌いだし簡潔に纏めよう。


「相手を憂うぐらいの心を持って戦っても良いんだぞ? 俺が戦うってことはそれぐらいのハンデがあるってことなんだ」


何だその疑わしげな目つきは。

似たような目を周囲に返してやると進軍の号令を出す。しっかりとした隊列も整えず村の出入り口から出発する。

その中にはさっきの三人も居た。そりゃあ従わなければ腰抜け決定だからな。


「さてフィル。俺に言うことは?」

「お前のせいで苛められた。よし殺されろ」

「凶暴すぎるぞ! っていうか根にもつな、トラウマでもあるのか?」


びくっ、と震えるフィル。

あるのかよ! っていうか貴族に飼われていたんだったなこいつ。うん、配慮しなかった俺のミスかも知れない。

ただな……、謝らないぞ。


「克服しろとは言わないが強がるのだけはやめた方が良いぞ。この先それが折れたときにどだけの精神的なダメージがくるかわからないしな。適当なところに居る奴にでも甘えておけ」

「我慢なんてしてないっ!! 武者震いだしっ!!」


うーん、こういうの苦手。

まあ良い。少し背中を押すんじゃなくて手を握って……遠くに投げ飛ばすぐらいしてやろう。


ぎゅっ、と手を掴み体を限界まで強化させ関節部にかかる痛みを無くす。

命をすり減らしながら戦う戦場の兵士海弟が今行くぞっ!!


「発射ぁぁぁぁぁっ!!」

「って、こっちぃぃぃぃぃぃ!!」


腕を思い切り振りフィルを投げ飛ばす。

ああ、たぶんエルフの軍の先頭ぐらいの位置に投げ飛ばされただろうな。

さて次は俺だ。


「しかしフィルが軽くて助かったなぁ。あっはっは」


笑いつつ戦地へと赴く所存です。


『まだまだ募集中』


早速強そうなのが一人来たっ!! さすがここまで読むほどの忍耐力を持っている読者様だ。

もう本当に勝てないんじゃない? ぐらいの強さ設定で良いのでよろしくお願いしますね!! それと早速だけど次回にでも出す気満々なので。ほら……伏線わかるでしょ?

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