表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
316/557

第300話夜っていう魅惑的な言葉

今回できるだけわかりやすく書いたつもり。

ただやってることは理解不明だけれども。

魔物が活発になるのは夜、とのお決まりパターンらしい。

外では自治活動に精を出している。勿論魔物討伐だ。活発化した魔物が町の中に入ってきた、とかそんな感じだろう。

ただ俺にそんなことは関係ない。もしも町の激弱(げきよわ)のムキムキマッチョ部隊が撃破されようとも次に出てくるのは傭兵だからだ。

だから俺は目の前の大惨事に目を向けたいと思う。本当はいやだが。


「り、理性保てないかも」

「次は刀で行くか? やっぱりナイフ?」

「次はって最初の一撃無いし」


悪魔とは不便なもので夜になると人を襲いたくなる渇望で心が満たされるらしい。

なので理性を強制的に呼び戻すために武器をずらりと部屋に並べ気がぶっ飛びそうになったらそれで殴ったり刺したり斬ったりするわけである。

勿論俺が手伝ってやろう。……俺だって悲しい、仲間を斬るんだからな。本気だぞ?


「な、何か他の事に集中するんだ!」

「そうだ。そういえばリオネとかいう奴とお前の言う姫様の姿が見えないが」

「……あいつ等は散ったんだよ。糖分百パーセントを食べて」


俺の不注意でもあるんだがその日にでるとは思わなかった。レシピまで盗まれているとは……恐るべし異世界の料理人。

俺達は無事に回避したわけだがリオネと姫様は被害にあってしまった。勿論寝込んでいる。これはトラウマになるに違いない。


あの食卓の風景を思い出しただけで身震いする。


「……聞いちゃいけなかったみたいだな」

「おいなんか理性が一気にこっちに戻ってきてるぞ」


おかしい。何かおかしいぞ。

そこまでトラウマを植えつけるのはあの甘い物体Xは!


「しょうがないなぁ。あの糖分百パーセントの作り方を朝まで言い続けてやる」

「ひ、人の嫌がることをずいぶんと淡々とするんだな!! あ、待て! 耳を塞ぐ――」

「まず用意するの俺の世界で言うドングリ、こっちの世界でいうアルピだ。それを塩じゃなく砂糖で茹で――」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


効いてる。効いてるぞ!! 主に精神的に。

って言うかこいつが追い詰められているような気がするんだが、気のせいだろ。


「まだまだ行くぞ!!」

「悪魔だ! 悪魔の料理だあれは!!」

「お前が悪魔だろうが」

「頭がぽー、ってなってるんだけど」


危険だ! 何か物凄く危険だ!

まさかバーサーカーのように人を襲うのか!? 一番最初は俺?

危ないぞ!!


()られる意前に……()る!!」


床に置いてある棒状の武器を手に取る。だいぶ前に入れたやつで名前を忘れてしまった。

まあこれ一つで俺の命が助かるんだ。安い安い。


「ほ、本気……っ、頭が……」

「行くぜ相棒!!」


ホントに俺の今の相棒は棒だぜ!!


痛々しい音が部屋に響く。これでフィルは死亡……もとい気絶したはずだ。

死んでは無い。死んでは無い。死んでは無い。ほら生きてる、絶対にだ。


「お、思い込みで世界は救われます!」


実際に耳を胸に当ててみる。しっかりと音はする。

魔族の力は夜のおかげでアップしているのか痛みなど忘れた顔ですーすー寝息を立てている。そうだ、最初から寝かせればよかったのだ。


「しかし毎回殴るのは面倒だな。この世界を昼だけにしてやろうか」


魔物が激減するな。人間もだろうが。

だが特にフィルがダメージを受けるだろう。それなら……ありか。


「俺まで巻き添えくうな……」


いや、逃げれば問題ない……が、フィルの苦痛にゆがむ顔が見れなければ意味が無いな。 

それだけじゃない。困りきった顔をした一般市民がいるところに俺が登場。そして夜を取り戻せば……英雄扱いだ!!


「おお、何か壮大なストーリーになってきたぞ」

「何がですか?」

「ん?」


後ろを見てみれば姫様がちょこんと質素な廊下の一角、詳しく言えば俺の後ろに立っていた。


「あれ? 何でいるんです?」

「いえ、部屋の外で声が聞こえたので。気になったので……」


……声に出してたのか?

ううむ、自重しないとな。


「いや、何でも無いですよ。ただの独り言です」

「そうですか」

「それで、姫様はお腹の調子大丈夫なんですか?」

「え、ええ……」


顔が青くなってる……これは完全にトラウマになってるな。


「そ、それよりも! 頼みが一つあるのですけれど!」


あ、無理やり話を変えた。まあこの話を振った俺にも責任あるしな。

何の頼みだろうととりあえず不可能なことじゃない限りはやってやるか。


「何ですか?」

「お散歩に付き合ってもらえませんか!」

「……え、それだけ?」

「はい。あの……だめですか?」

「いや別に良いですけど」


何故に散歩?

まああえてそれは聞かないでおこう。


外にでて数分歩くだけだろうと予想して盗みに近い行為でもらった剣を一つ腰に付けただけで出かける。

うん、美人と歩くのは素晴らしい事だ。


何か目的があるわけでもないんだろう。探し物をしている様子もないし眠れなかっただけかもしれない。


「少し騒がしいですね」

「魔物ですよ。国内の自治機能が停止しているから各町で対処するしかないんです」


丁寧な口調も疲れてきたな。

まあ慣れるためにもやっておくか。


「そうですか……」

「ま、姫様の気にするところじゃ無いですよ。夜は魔物が活発化するなんてどの世界でも同じですから」

「どの世界? あの、一つ聞きたいことが――」

「ああ……リオネに聞いてください。自分で説明するの面倒なので」

「はあ……」


あいつはあいつで賢い奴だからな。


「……何か変なにおいがします」

「酒場が近くにでもあるんでしょうねぇ。調子に乗って酒飲んで吐いた奴でもいるんでしょ」

「けど、これだけのにおいって……」

「酒はあるだけ飲む! そんな精神の奴ばっかですよ、酒場に集まる奴ってのは」

「はあ……」

「あ、俺は飲みませんよ?」


影流は最近付き合いで飲んでるが……まあアレは王だからだろうな。

最近酒に強くなってきた、とか嘆いてたが二十歳超えたら一緒に飲んだくれてやろうか。


「ま、庶民の暮らしなんて気にしないで良いんですよ。ただ不満があったら話を聞いて、対処してやるぐらいで」

「はあ……」

「わからなくても良いさ。使える部下を揃えりゃ良いんだ」

「あの、海弟様は――」

「俺はやらないぞ?」

「残念です」


まあ俺ほど使える部下もいないからな! って言うか部下って立場は俺には似合わないぜ。


「まあ時間はあるんだ。ゆっくり考えれば良い」

「はい」


歩くの疲れた。


うん。わかってる。

わかってるんだよ。海弟のマジメ度の高低が激しすぎるって。

フィル相手のときは物凄く低いんだけど姫様相手のときは物凄く高いの。


……最近海弟が脇役キャラに見えて仕方が無いんです。だから……やってしまいました!

でも多少は主人公っぽくなったはず!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ