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第298話適当すぎるコンビ

適当すぎるのは兎桜? そんなこと言われなくてもわかって……るからこんなサブタイを付けるのです。

薄汚い宿屋に戻ると迷うこと無く自室に戻る。

そして部屋に入っていれば一方的に殴られるリオネの姿が……。


「と言うのを予想していたんだが何か平和的だな」

「そこまで気性荒くないしー。って言うか私見ててそんな性格じゃないことなんてすぐわかるでしょう!」

「脳が死滅してるなら早く言ってくれよ」

「あの、海弟さんそれは言いすぎじゃ――」

「脳って何だ?」

「簡単に答えるとお前には無くて俺にはあるものだな」

「私も欲しい! くれ!」

「怖いこと言うなお前。誰がやるか!」


何か危ない知識を一つずつ付けていってるぞコイツ。

そんな不毛な言い争いをしていると部屋の扉が叩かれる。俺が出て行くのも良いがリオネに任せておいたほうが良さそうだ。何たってここに泊まっているのは俺達以外に誰もいない。

つまり来たのは――


「あの、なにやら騒がしいようですけど」

「ああ姫様! あの、少し散歩しませんか? ほら、せっかくの旅ですし!」

「しかし顔を――」

「海弟さん魔法!」

「面倒だ。そのまま出て行け。待遇が良くなるかも知れないぞ」

「ええ!!」


お、これは良いな。高級そうな肉とか食えるのか。

しかし今はコイツの相手が専決だ。


「そういやお前、名前は?」

「名前? ……わかんない」

「だろうな。俺が付けてやろう」

「任せた」

「そうだな……」


ふむ、どうせなら恥の垂れ流しのような名前が良いな。

いざとなると決まらないものだな。と言うか一つも浮かんでこない。


悪魔の少女をもう一度見る。期待しているのが一目でわかるような瞳でこちらを見つめている。

うう、変な名前付けにくいなぁ。


「この町の名前から取ろう。確かフィルシアだったな。フィル、これで決まりだ!」

「安直だ」

「不満ならお前の名前は『う○こ』で決まりだな」

「フィルで良いです」

「素直なのは良いことだ。覚えておけよ」


さて名前も決まった事だし罵りあいでも再開しようか。


「えと、お前は……海弟、であってるよな?」

「合ってるぞ。そして俺のせいだけど男口調になってるなぁ。ちょっと失敗だ」


どうせならもう少し融通を利かせればよかった。

今から変えても良いが時間が経てば治る事だしその程度のことで仕事を増やすことも無いだろう。


「その、海弟に……私のことを知っていてもらいたい」

「そうだな。三分やろう、そして一分以内に終わらせろ」

「二分何処行ったの!?」


喋っているうちに気が変わったんだよ。

まあコイツが話したいならいくらでも話してれば良い。俺も適当に聞き流すから。


「もう時間は始まってるぞー」

「お、おし。時間が無いから捕まったところから始めるぞ!」

「グロイか?」

「できるだけ表現は抑えよう」

「なら良い」


立ち話だと疲れるのでベッドに座り上半身を倒す。

少し硬かったがなんてこと無い普通のベッドで寝るには困らない。


「私が貴族に捕まり、まあ物好き共のオークションに掛けられようとしていた時、それに重なりこの国の革命が起きたわけだ」

「タイミング良いな。もしや運命の導き!」

「まあどうでも良いさ。ただ海弟達に拾われる前までは本当に絶望していた、それだけ言っておきたかったって事さ」

「短いな」

「思ったより短く終わってしまったな」

「と言うか服を買いに行かないか?」

「良いのか?」

「良いんだよ。って言うか買わなきゃ無くなるだろ。使い捨てなんだから」

「そうなのか?」

「旅をしてると洗濯できないだろ? となると数日間は同じ服装で居て、きりの良いところで着替えるんだ。その時服はどうするか、っていったら捨てるんだよ。少なくても俺はそうしてる」

「取っておけば洗ってまた使えるんじゃないか?」

「……臭いの嫌いなんだ」

「意外にわがままだな」


知るか! あの臭さは嗅いだ者にしかわからないぞ。

ベッドから立ち上がりフィルをお姫様抱っこみたいな形で抱きかかえる。


「おう?」

「軽いな。食べてるか?」

「……最近は」

「なら食事もだな」


足で扉を開け部屋から出る。誰か一人宿に置いておく、何てことは考えない。

たまぁに初心者の冒険者がやらかすのだが宿屋に一人も置いて来ないと宿屋側が勝手に冒険者の道具など盗み取ることがあるのだ。しかもその部屋に新しい客まで入れている。

こうなると帰ってきた冒険者も何がなにやらで気づけば損をして再び宿を捜し歩いている、という事態になっているわけだ。

まあよほど悪質な宿じゃないとそんなことは無いが……しかし、今回は俺達の実力を見れば歴然としている。悪魔が居るってだけでも恐ろしいのだ。


「さて、まずは服だな。一応俺の服着てるみたいだな」

「一人で着替えたんだ!」

「それが普通だ」

「ふてくされるぞ? 暴れるぞ? 良いのか?」

「肉片になりたいか?」

「良くない。暴れるの良くないぞ」


わかれば良いんだ。

とりあえず近くにあった洋服を売っている店に入る。

女性物も少なからずあるが大半を占めるのは冒険者に売り込むような軽装のセットだ。熱や冷気に強い物が人気商品らしい。


「女の趣味って俺にはわからないからなぁ」

「残念ながら私にもわからない」


悪魔って使えないな。


「動きやすい服装をこの中から探せ」

「それが良いな」


店員を無視して女性服の中から動きやすい服装を探していく。

俺は旅と言うのも考慮して極力厚い生地のものも避けていく。最終的には何だかよくわからないものだけが残った。


「ってお前はスカートばっかりだな。ピクニック気分か!」

「いや、動きやすいだろう?」

「スカート穿くとなると下着も買わないといけないだろ」

「買わないつもりだったのか!」

「コスト削減」

「削減するな。で、下着を見よう」


あれ? そこのスカート数点で決まりなのか? 俺の選んだのは?

無駄なのか?


……無駄な労力を使ってしまったな。そうだやつれよう。


店の隅で低い笑い声で笑っていると肩に手が乗せられる。


「あれ? フィル、もう選び終わったの……」

「お客様。ご迷惑ですので――」

「わかってるさ!!」


立ち上がり店の外へ走る。

この展開は読めてたさ!! でも、でも俺にはこういう道しか残されていないんだぁぁぁぁ!!


走って出たは良いが仕返しをせずにはいられないので店の前で無駄に偉そうに立っていることにする。

こうなったら客は店内に入ることが出来ないだろう。


「んじゃ行こうか」

「え? え? ちょ、まだ仕返しできてないぞ!」

「仕返し?」


……何でもありません隊長。って言うか金は何処から出したんだこいつ。

俺は貴族共から集めた財産から兆単位で盗んで来たんだが……まあ気にしないでおこう。


「さて次は食い物だな。何か有名なものでもあるかな」

「肉食べたい! 肉!」

「はっはっは、野菜で行こうか今日は」

「……とことん嫌がらせをするな」

「色々ストレス溜まってるんだよ」


特に今日は。

仲良く見えるから不思議!



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