第296話海弟の救済
うう、痛々しいサブタイトルだなぁ。
治安悪化。
勿論理由は一つで王家が滅びたことで領地持ちの将軍も強制的に解雇されたからだ。
将軍の一人も新体制への反発な無いのでそれなりに王家の政治が悪いものだとわかっていたのだろう。
……平民どもの間ではこんな話が流行っている。
勿論言葉の裏に見え隠れしている『貴族は腰抜けだから王位を狙えないんだよな』というのがひしひしと伝わってくる。
まあ貴族なんて顔の良い無能ばかりなので気にするに値しないレベルの雑魚だ。
「しかし治安悪化はどうしようも無いな。各町の民間人の部隊が張り切ってるようだが、統治されてない国ほど犯罪率の多い国は無い」
「でも攻めてくる国が無いだけ良いじゃないですか」
「そうかぁ? お前この町の様子見てよくそんなこと言うことができるな」
「……僕のわがままのせいですよね」
「違います! リオネさんのせいではありません」
俺もそれに追従する。
「こう言っちゃアレだが、姫様が王位を継ぐほうがついでだろ」
「そうですよ」
「ありがとうございます」
「この町で一泊したら出発するぞ」
もう夜だがもうすぐ町、と言うことで休まず歩き続け町の中に入った。
夜のくせにかなりの人数が街道にはうろついており何処と無く犯罪の臭いがする町だ。
こんな町だが泊まるに不便は無いだろう、と言うことで宿屋を探しているのだがどこもぼったくり価格だ。
「……どうなってるんだ、この町は」
「政府から目が行き届かなくなったからどんな値段で商売をしても自由になったんですよ。商人ギルドがあれば良かったんですが、数年前に潰れた、いや潰されてしまったのですよ」
「国からの圧力ってヤツか? 旅人から税収を確保する為に宿屋の値段を管理しようとでも思ったのか?」
「それだけじゃないと思いますよ。大体の人数ですが宿屋に泊まった人間の数を集めれば町の中の人口の増加と減少が一目でわかりますし」
商人ギルドに任せて提出させれば良いのに。そんなに身内しか信頼できないのか。
姫様とは大違いだなぁ。
口には出さず心の中で革命前の国を批判しているとひときわ目立つ群集が見えた。
格好はレザーアーマーと騎士の姿ではない。どうやら傭兵か。
「こんな夜中に……どうなってるんだ?」
「賭け事か何かですかね? それを目的として傭兵をしている人だって居ますし」
俺達も思いっきり旅慣れした格好なのでその集団の中に入っていくことにする。
中心部分に近くなるにつれ年齢層が若くなっていくのを感じ、ふと一つの予感が俺の頭の中をよぎる。
首を振り考えを否定する。
この人数で、ありえないだろ。
それに色々不可能だ。
自分で自分の考えを否定したせいか中央にあるものがすごく見たくなってしまった。
二人を率いて傭兵の隙間を縫うように前に進み中央を目指す。そして中央に出る。
「……ふっ、これほどまでに悪い予感が的中すると自分で自分が怖いぜ」
『カッコつけてるところ悪いが、こいつは危険だ。兄ちゃん達は下がってな』
「そうする。野次馬だって立場をわきまえてするものだなぁ。イヤなもの見ちまった」
「……何ですか? あれは」
「私も見たことがありません。普通の……女の子に見えますけど」
……ここで聞くかそれ。
まあ良い。適当に雑学を披露してやろう。
「アレは魔族の中でも部類としては悪魔かなぁ。途轍もなく強いんだ」
俺には程遠いが。
「一般人なら一瞬で殺されるぞ。で、あいつらには特殊能力もある」
「能力?」
「わからないよ。一人ひとり違うからな。まあ魔物の人型みたいなものだな」
「へぇ」
「ただアレを舐めないほうが良い。筋力、魔力、素早さ、どれをとっても人間じゃ適わない」
『人間には、じゃねぇぜ。こういう時のために俺達傭兵が居るんだ。どうやら貴族に飼いならされてた悪魔らしいが……、っとコレ以上の話は不要か。とっとと帰った帰った』
ここにも影響が出てるのか。
「あの……この子、殺してしまうのですか?」
『そうだなぁ。いつ正気、というか狂気に支配されて人を襲いだすかわからないしな。悪魔にとってそれが正常なのかも知れないが』
「海弟さん!」
「ん? ああ、帰ろう」
「……」
「その視線は無いだろ?」
上目遣いと涙目のコンボ攻撃だと!?
あいつ等勝手に手を組みよって!!
「はあ、俺も参戦して良い?」
『な、何言ってんだ。危ないぞ』
「俺が死んだって誰も文句は言わない、悲しむ奴は居るだろうけど文句を言うのは筋違いだしな。そこのところわかってなきゃな」
『……そうか』
「二人は下がってろ。俺が捕獲する!」
『は? 捕獲ぅ?』
傭兵の問いにか答えない。
そのまま二人を下がらせると精神を集中させいつでも魔法攻撃が出来るようにする。傭兵のほうも聞き間違えだと思ったのか剣を構えなおす。
「ちなみに報酬はいらないから。無駄な思考は脳内から省いておけよ」
『おう、一応俺もお前が死なないように俺も祈っておくぜ』
「死んでも意味無いから祈る意味は無いぞ?」
神の力万歳だし。
俺が集中していると頭にヘルムを被った傭兵が一人、悪魔の子に向かい走っていく。
それをきっかけにか大勢の傭兵が悪魔の子へと向かっていく、が少し年を食った傭兵集団はまだ突っ込まない。
……少なくとも魔族とかなりの回数戦った人達だろう。気配で相手の強さがわかるのだと思う。
突っ込んでいった若者傭兵グループに目を戻すとちょうど黒い閃光が傭兵達を包んでいるところだった。
「ちっ、白の剣あれば簡単に解除できるんだけどなぁ。自己防衛に走る悪魔は厄介だ」
アレは呪いの類だろう。
人の動きを止める、のではなく掛かった人間の時間を止める上級の呪いだろう。
まあ呪いに上級も下級も無いがかなりの熟練が無いと長時間使っていられない魔法だ。
「なるほど。用心もせず近づいていった結果がこれか」
その捨てた貴族とやらも馬鹿だなぁ。
こんな町に捨てたんじゃこの結果は予想できただろうに。
「まあ悪魔退治はちょっと厄介だが……支配者の権限を行使させてもらおうかな」
まず悪魔の呪いを解く。
呪いを掛けられた、という意識があったせいか戸惑いの様子で立ち尽くしている者が多い。若い傭兵にはよくあることだ。
再び自己防衛に走ろうと悪魔はするだろうから悪魔の能力をすべて取り上げ魔力を根こそぎ消滅させる。
「……まさに最強のチートツール!!」
最高の快感が、今ここに。
そのまま前に居る傭兵共の間を縫うように走っていきさっき見た悪魔の子の両肩に手を置く。
「ゲット!!」
「あぅ……、うぅぅ!!」
「暴れるな! お前爪尖ってるから引っかかれちまうだろうが!」
「いぃぃ!!」
……まあ言葉理解できないし良いや。
そのまま悪魔の子を抱き上げる。
『な、お前……まさか捕獲って……』
「その通りだぞ。さて宿探しを再開するかな」
『待て!! 我々はその悪魔を討伐せねばならないのだ!! 我等の敵となるのならば――』
「あー、俺も呪い使えるようになればなー。便利そうだし。まあ悪魔でもないのに使ったら代償要求されそうだけど。良いぞ、掛かって来い!!」
気を放つ。久々にやる気だぞ、俺は。
「王国の革命、その三人の英雄が一人。諷詠海弟が相手になろう!!」
『な、英雄……。嘘だろ!! 王都からこの町まで一瞬で来ることは出来ないはずだ!!』
「俺は実力はだぜ?」
努力はまったくしてないが。
『くっ、俺はぁ国が動くとは思わなかったんだ! 引かせてもらうぞ!』
『俺もだ!』
『ちっ、しょうがねぇなぁ!!』
次々に逃げていく傭兵。俺も追い討ちをかけてやろう。
「はっはっは、後方にいるおりこうさん集団はすでに逃げているぞ? 早くお前らも帰ることだ」
一瞬にして悪魔を捕まえた俺の力を恐れたのか後方にいた傭兵は逃げてしまっている。
賢い選択だ。
全員が逃げ去った後、二人の元へと寄る。
「えと、三人の英雄って何ですか?」
「俺が広めろ、と言ったんだよ。あの屋敷の主人に」
「三人って……」
「勿論俺達だ。この国はでかなりの知名度になってると思うぞ。旅してて知らなかったと思うが」
「わ、私まで……」
「気にするな。二人より三人だろ」
「僕は戦ってませんけど」
「きっかけが三人だったら別に良いんだよ!」
と、今はこの悪魔の処理だ。
「姫様はどうするんだ?」
「勿論保護します! 可哀想です!」
「……はあ、こりゃあ大変なことになるぞ」
「え?」
「ゴキブリじゃないが、一人の貴族が悪魔を持っていたら、千人以上の貴族が悪魔を持っていると思わないといけないんだぞ」
「……えっと」
「そのうちの何十人、何百人かは討伐依頼が出されてるだろうな。この子のように。そしてその依頼は達成されないだろうよ」
「……不可能なのですか?」
「一つ前例を作っちまうとなぁ」
……まあ今後考えていけば良いさ。
最後にそう付け加え俺達は宿屋探しに戻った。勿論悪魔の子付きで。
更新が遅れる!!
……ちなみに今回遅れたのはどっちのせいかと言うとパソコンのせいです。
もう少し頑張って欲しい……。