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第290話燃える夜

……めんどくさがりやな性格って損することが多いよね。

何か記憶から白黒のことを忘れ去ろうとしている自分が居るんだ。

食事も終わり俺は部屋の外に出る。勿論目的は一つ。姫様に事情を話しに行くのだ。正直何を言ったら良いのかわからないが事実をそのまま言えば良いだろう。

姫様が何を感じるかなんて姫様が考えれば良い。まあ姫様が嫌がったら攻めるのはやめようかとは思っているが……。


姫様の居る部屋の扉を開ける。どうやら寝る準備をもうしていたらしい、夜着に着替えた後でもう寝るだけと言った様子だった。

あまりにも平和すぎる光景だった。


「あら、えっと……」

「ああ、ノック忘れてた。まあ入ってきちゃったしもう良いだろ」


今からする判断で姫と呼ばれなくなるかも知れないのだから。


「一つ相談があるんだが……良いか? 急な話になるから付いていけないと思うけど」

「急な話ですか? ……それならあの人も呼んだほうが良いのでは……」

「姫様が希望するなら止めないけどさ、結局は姫様の決断にかかってるんだよなぁ」

「……何の話です?」

「今晩この国を変える、まあ俗に言う革命をするんだ」


驚いたような顔で俺を見る姫様。当然だ、説明を省きすぎたかも知れないし。


「この屋敷の主人を中心に貴族、王族を拘束、あるいは殺して王位を奪うんだよ。政権を奪うことが出来ればこの国を掌握することができるからな」

「しかしっ!」


座っていた椅子から勢い良く立ちあがる姫様。


「ああ、わかってる。だからお前に相談しに着たんだぞ?」


さっき姫様って呼んでしまったが今の姿はただの旅人なのだ。良く考えれば姫様と呼んではいけない。

勢いをそがれたのか椅子に座りなおす姫様。


「今の政治に反感を持つ者が集まるのも当然でしょう。身内を贔屓(ひいき)にした政治を行っているわけですし……。他に方法は無いんでしょうか?」

「あると思うか?」

「……ならば……仕方の無いことなのかも知れませんね」

「それは了承ということで良いのか?」

「いいえ、あくまで静観です。やりすぎだと思ったら私が止めます」


……え? 止めるって?


「ええと……それは……」

「私も戦場へと赴きましょう!」


……予想外だ。





夜の街、なかなか風流……とか言っている場合じゃない。

俺は姫様も守りつつ城を攻め落とさなきゃいけないのだ。まさか戻ってくるとは思わなかったぞ。


「リオネを置いてきたのは正解か」


血なまぐさい場所だここは。

たぶん一緒に来た傭兵が見回りの衛兵でも殺したんだろう。


「姫様と一緒に移動ってのが辛いよな……。早く移動しないといけないんだが」

「すいません……」

「いや、城の中に入ったらお前に案内頼むつもりだし関係ないよ」


前に入ったときはリオネに案内されてたし、道なんてもう忘れてるからな。

俺達のことは良いからと屋敷の主人達を先行させたのはまあ仕方無いことだ。

できるだけ早いスピードで城へと向かっていっていると明らかに騎士の正装ではない……かと言って傭兵には見えない。じゃあ誰だと聞かれても答えられないがそんな格好をした男が俺達の前を塞ぐ。


「誰だ!!」


立ち止まり男に言う。


『いやぁ、俺はただの……』


少し考えている様子だったが首を振る。


『俺は暗殺者だね。貴族様から依頼受けて人殺ししてんだよ』

「ほう、食い扶持が無くなるから貴族共を守るとか言わないよな?」

『言うよ。っていうかさぁ、お前ら何処から出てきたんだ? 俺等のところに情報来てなかったぞ? 一晩で作戦を立ててそれを決行したわけじゃあないだろ?』

「その通りだ!」


少し驚いた様子の暗殺者。暗殺者としての立場柄信じられないことなのだろう。

まあそうだ。『鏡』という魔法はあまりにも異質すぎる。


「瞬間移動、というか転移ができるんだよ。俺はさ」

『どういうことだ? そんなすげぇ能力持ってる奴が居るなら……はぁ、世界はつくづく広いんだなぁ』

「いや、世界は狭いよ」


その狭い世界からどうやって外に出るかが問題なんだよ。


俺は思ったが口にはしない。男はきょとんとした顔をしている。勿論言葉の意味がわからないからだろう。

わからなくて良い。こいつに異世界のことを説明してやるだけの価値が無いことはわかっている。


「そこを退け、と言っても退かないだろうな。暗殺者とか言ってたがお前は正面から戦うってことで良いのか?」

『まさか。そのまま戦うわけ無いだろっ!』


そう言って何か数枚の紙をばら撒く暗殺者。風に乗り道の端やらわき道へと入っていく紙。

俺の前にも一枚飛んできた。なんてこと無い紙のような気がするが相手は暗殺者、何かあるんだろ……う。


異様な臭いが充満してくる。


「毒薬か!」

『ご名答』


紙にでも包んであったんだろう。しかし……何故あいつは口を覆っていない。

自滅覚悟か? いや、そんなはずは無い。


「魔法……か?」

『そう! 俺には魔法の才能があるんだよ、邪の道とか言う奴も居るがな』


その時俺が思ったのは一つ。


調子に乗るなよ?


「魔法使いはお前だけじゃねぇ!!」


風を起こし風に乗って舞う毒薬を吹き飛ばす。


『この程度じゃ効かないか……。ま、そうだよなぁ』

「わかってるならやるな。『火栄』」


炎が暗殺者を包む。

自らに風を纏っただけじゃガードできない量だ。炎に囲まれた状態で風の魔法を使うなんて自滅するのと同じだからだ。

自分から酸素を消費して死ににいくようなものだし。


そこで気づく。

魔力の……いや、炎の広がり方がおかしい。


「魔力で障壁を張ったか!?」

『ご名答』


暗殺者の声が炎の中から聞こえてくる。

くそっ、何で早く気づかなかったんだ。


「熱でじわじわなぶり殺しに出来たのに!!」

『え? ま、魔力がもったいない――』

「知るかぁ!!」


一層魔力を込める。熱は魔力の障壁でも防ぎきれないようで(予測済み)相手の苦しそうな声が聞こえてくる。

俺の魔力ままだまだある。さっきあの町の傭兵と貴族の体制に不満を持つ者を転移させその後魔法石で魔力を回復して満タンになったばかりだからだ。

後からの戦いもあるだろうが今やれることは今のうちと言うし。


『ちょ、熱い! くっ、精神を集中させなければ……』

「ファイヤー!!」

『く、そう……』


ボンッ、という音と共に障壁が消え炎が暗殺者を襲う。

そう……何事にも限界というものはあるのだ。彼の命はそれを証明してくれたのだ。


「さようなら。とりあえず地獄に行け」

『うぐぁぁぁぁぁ!!』


少し熱めの夜だった……。彼が死んだのは。


「さ、姫様行きましょう」

「え、えぇ……。あのこういう戦い方は……」

「いつもやってるので平気です」

「……あの、相手の方が可愛そうです」

「ははっ、情け無用ですよ」


さあ王族やら貴族を倒しに出発だ!


え?

……え?


サウナ状態ってわけか。

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