第288話馬鹿ばっかり
……何かもう、ね。
不意打ちとかいけないと思うんだ。仲間が不意打ちされるならともかく。
教主と対峙する俺。気迫というか……威厳というか……そういうものがその教主にはあった。
そう、三十路が近くても頑張っている女性にある何か底知れないパワーがあるのだ!
「口」
「あ、出てました?」
意図的に。
「ここまできたらこの屋敷の爆破なんてどうでも良い。お前を倒す!!」
「できるかしらねぇ?」
教主を囲むように三人の美少女が現れる。
たぶん四天王の残りだろう。
「この三人はそこの馬鹿とは違い強いわよ?」
一斉に笑う三人。
断言しよう、コイツ等は馬鹿だ!!
この屋敷が意外に広く、ここは廊下だが槍だって振り回せる。ただ今回は斧を使おうと思う。
手斧。そうつまり投げることが出来る斧だ。空気に魔力を散布し魔力を制御する。そして『鏡』を発動。
「この地獄から逃れられるかっ!!」
三人に向かって斧を投げる。しかし三人は避けない。素手で止められた。
「……不覚!!」
「お前も馬鹿」
……くそう、確かにその通りなのかもしれない! 今度青空に基本中の基本とやらを教えてもらおう。
作戦を立てる上でだったら武官に聞いてみるのも良いかもしれない。
「というかこれは何だ? ……鏡?」
三人のうちの一人、髪の長い少女がしゃがみ込み鏡に触れる。
今だ!!
少女が居た位置の真下から噴出される炎。
一人の少女を飲み込みそして炎は少女と共に消滅していく。
「……え?」
「……あ?」
「……は?」
「不意打ちでも死ぬこの世界が大好きだ!!」
死体は目視できます。相手が死んだのは確実だな。
というか現実って恐ろしいなぁ。
「くっ、鏡に触れるな! いや、出来る限り鏡に注意しろ!!」
ろくに手入れもされていない髪の美少女が言う。これでわかった。
美少女は何をしなくても美少女なのだと。化粧の不必要さがわかるな。
「雷よ!!」
一瞬。一瞬にして俺の放った雷により、実際には避けるも反射し背中から当たった雷を食らい倒れるさっきの美少女。
俺の勝ちは決定的だ。
「つ、強すぎる……。教主様逃げてください!」
「お、お前はどうする!」
「私は……ここで……コイツを――」
炎に焼き殺され終了。
「な、な……」
「手加減? そんなものは優しさでもなんでもない! 相手を舐めているだけだろう? だから、ミノ教教主! お前の全力を見せてみろ!!」
「ごめんなさい許してください! お願いしますお願いします!」
死刑は確実だな。どうしよう? 民衆の前に晒してやろうか。
公開処刑、初めてやるから緊張するなぁ。ここで殺したほうが利益がある気がするが。
「よし、土下座」
「もうしてます」
プライドって何だろう……。そうか見栄か。
「とりあえず裸で町の外でも走り回ってきて」
「え?」
「やれ」
「……はい」
さてこれで良いだろう。
「あ、勿論街中で馬車を使うの禁止ね?」
「……うぐっ」
護衛付けて町を歩く教主。今まで人気者だったぶん町を歩いているところを見てその後を付いて来る町民共。
町の外にて教主が服を脱ぎ走り回る。社会的地位をぶっ殺し完了。
まあこんな感じの作戦だ。実に簡単だ。
「ちなみに今日よりミノ教廃止だ!!」
なんだか今日は血なまぐさい日になった気がする。
☆
あいつが脱いで馬鹿みたいに走り回っている最中俺は二人を探し見つけ出した。
井戸のそばでへたり込んでいる二人は簡単に見つけられた。探索スキルってわけでもないが『風星』があるからな。
「あの……この町の人は?」
「変態を見に行ったよ」
「変態……ですか。はぁ……」
「あの……それでこの町ではどうするのですか?」
「素通りだな。文字通り、色々危ないから」
この町を支えている宗教が潰れてみろ。
簡単に予想は付く。
「宿屋で一泊ぐらいが限界かな。俺としては一時間くらい時間潰してから旅立つって案が一番だけど」
変態見ずに済むし。
まあそれも姫様を無理をさせちゃいけないし、明日ということにしよう。
荷物をまとめる必要も無いし一泊するだけで十分だ。
「まあ宗教に政治を混ぜてないだけマシか」
「そうですか? 王都では女性の自由を語る宗教集団がいると聞いてますけど」
「お母様も注目していました……。同じところでしょうか?」
……違ったな。
宗教に政治を混ぜようとしたんじゃなくて政治に宗教を混ぜようとしてやがるコイツ等。
ある意味すごいぞ。
呆れつつも格安の宿屋を探しに向かった。
いや、タダで止めてくれそうなところがあるな。馬鹿が少し多いけど。
「ちょっと大富豪のところまで行くか」
「えっ?」
「えっ?」
説明後、リオネと姫様がポカーンとした顔で頷いたのは言うまでも無い。
海弟にはなんかこう……言い表せない魅力があるに違いないと信じている!
無ければそれでも良いけど。