第285話怪しげな町並みの妙な風習
小説って書いてる本人が楽しまないと良いの書けないよね。
実感してます。
でかい町に着いた。
「……何か色々おかしいだろこれ」
「方向性は定まってないですよね……。でも一応理由はあるんですよ。前に来たとき聞いてみたんですけど―――」
リオネから聞くに、この町には大富豪が一人住んでいて。商売で儲けた金をこの町の発展のために使っているらしい。
ただその使い方がおかしい。発展、というのは良いことなのだが……何でも怪しげな宗教へと寄付しているらしいのだ。
その結果、大きな町になってきているのは良いが何かあやしげな雰囲気の漂う町となってしまった、ということだ。
「歯車やら石像やら……どうなってるんだよコレは」
金属の加工技術を売りにしているらしいこのまちの大富豪。貴族相手に金を搾り取っているのは良いがこんな怪しげな宗教に寄付するのはいただけないな。
顔を見てみるのも良いかも知れない。
「と、そろそろ人通りの多いところに着く。変化するぞ」
この町には衛兵が居なかった。
その理由は簡単で、大富豪さんが雇った傭兵が常に徘徊しているからだ。賞金首から指名手配犯まですべて記憶している奴だ。
なので俺達の顔は知られているだろう。しかし変化すればそれもしのぐことが出来る。
「どうする? まずは宿を取るか?」
「その前に見つかったときのために逃げ道を見ておきたいですね。一応旅人の格好をしていますし」
俺としても異論は無い。というか何人の傭兵がいるかわからない常態だしやっといて損は無いと思う。
ただ姫様の体力が枯渇寸前まできているんだが……まあ良いか。
「リオネ負ぶってやれ」
「え? あ、姫――彼女をですか?」
「見るからに疲れてるだろ。女に旅はつらいよなぁ」
ギロリ、となんか周囲に殺気が満ちた気がした、が気のせいだろう。
そう、いつの間にか女性ばかりの人通りの多い場所に来ていたなんてことは無いと思う。
「そこの旅人殿」
う、声掛けられちゃったよ。
仕方無く振り返る。
「何だ?」
やはり、と言うべきか女性。
見たこと無い形状の武器を持っている。槍と鞭と剣を足して刃を丸くしたような感じの武器だ。
何ていうか表現しにくい強さを放っているような気がする。
「女性に旅は不向き? 旅人殿は女が男より劣ると申すのか?」
何だコイツ。騎士みたいな口調しやがって。
とは思ったが別に丁寧語は嫌いじゃない。
「ならば聞こう。旅において女性が有利なところはあるのか?」
「数さえ揃えれば女はどんなところでも気を張っていられるぞ?」
「男でも一緒だろうが」
「ふ、下賎な男共と一緒にされたくなど無い」
何か周囲から無言の肯定とやらが感じ取られる。
残念ながら俺には反論する義務がある。何故なら俺は男だから。
「言っとくがな、男ってのは馬鹿な奴じゃない限りペース配分ってのを知ってんだ。勢いにものをいわせて進むような女と一緒にされたくないね」
「な、何を言うか!! それは我々女を馬鹿だと、言っているのと同じではないか!!」
「もう少し理解しろ。お前らは馬鹿なんだ」
俺に喧嘩を売ってきた時点で馬鹿というのは証明されているだろ?
世界の支配者相手に生意気言ってんじゃないぞお前。
背中の剣……は無かった。ので槍を構える。
使い慣れて無いが今ならこれでドラゴンだって倒せる気がする。
「ば、馬鹿ではない。キサマ等男よりも気高く高貴な種族、それがおん――」
すべて言う前に喉元へと槍を突きつける。
こういうの嫌いなんだよ俺。無駄に生活水準が高いから気でも狂ったのか? お前等貴族みたいなこと言ってるぞ。
「っ、何を……。ふ、そうか。女に刃物を向けるか」
「何だよ気持ち悪い」
何か不敵な笑みを浮かべる女。なにやらイヤな予感がする。
一歩後ずさり目だけを動かしてリオネと姫様を見る。何もされていないようだ。これから何かが起こるのだろう。
「我々に刃を向けた愚か者をひっとらえろ!!」
さっきの女の声が響く。
な、なんだ!? と思う間も無く周囲の女共がざっ、と詰め寄ってくる。何ていうか……意外な展開って奴だな。
これは全員倒せばクリアか? そうなんだろ?
「雷よ!!」
バチンッ、と前方に居た女共を感電させ倒す。
殺さないなんて俺は優しすぎるほど優しいな。うん。
「な、キサマ邪の道に走ったか!!」
「邪の道って何だよ。ただの魔法さ。魔法! 知らないのか?」
「魔法だと! キサマは魔法のなんたるかを知らないように見える。魔法とは人々を救う光の――」
「うるさいっ!!」
勝手に説明を始めやがって。こっちの世界の常識など知ったことか。
この道はあまり広くは無い。槍は使い勝手が悪いし何処か広いところに出たい。もしくは武器を変えたい。
「リオネ! そいつ連れて逃げろ!」
「りょ、了解!!」
と言っても逃げ道は無い。ので作る。
直線状に炎を噴出し馬鹿でかい道を作る。勿論炎に飲み込まれた奴は死んだだろう。
けど殺さないと殺されるというのをわかってほしい。
「行けっ!!」
「はい!」
走っていくリオネ。大丈夫、たぶん。
だってここに居る奴等はすべて俺が相手にするから。
「ふむ、こんな感じだった……かな?」
リオネの周りに結界が張られる。俺が死なない、もしくは魔力の供給をやめない限り壊れない結界だ。
勿論、座標を自動で追っかけてくれるのでリオネはそのまま姫様を連れて逃げることが出来る。
「前に魔法書で見たきりだったが使えたな」
「な……結界魔法だと!?」
「それがどうした! 俺が使える魔法の種類はこれだけじゃないぜ!」
槍を鏡の中に戻し細身の剣……レイピアを取り出す。
魔法で体を強化し素早さを重点的にあげると敵を見る。
「旅の最中、時に魔物に襲われるときもある。しかし魔物の実力を見誤り死ぬってケースは多々あることなんだよなぁ、コレが」
つまり何が言いたいかと言うと。
「お前らは俺の実力を見誤ったって事だ」
容赦無いな。
というかこの町長くなりそうだなぁ、って思ってると長くなるのでちゃっちゃとボスみたいなの倒して終わらせようか。