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第282話村に入りました

気づいた。

海弟の誕生日過ぎてるな、と。何も出来なかった……うわぁ。


まあ良いや。海弟だし。

さて村に着いた。夜とか昼とか問わず役人が目を光らせている。

倒して進んでも良いが進行方向を教えてしまうことにもなるので関所でも置かれたら厄介だ。ならばこっそり盗んだほうが良い。


「変身するぞ」

「へ、変身?」


鏡を三人にあていかにも旅人っぽい服装と顔にする。

う、三人分も完璧に想像したから頭が……と、こんなことやっている場合じゃない。


「牛舎と一緒のところで馬は飼われているんだよな」

「はい」

「なら牛舎に火を付けてその間に三頭奪おう」


俺って馬の乗り方なんて知らないけど、まあ何とかなるだろ。

という訳で村に入ってみる。役人から不審な目で見られたがお姫様が居る様子も無いので普通に通してもらえた。

実は声だけは変えれないのだがこんな下っ端どもが表に出されていない箱入り娘な姫様の声を聞いたことがあるはずも無く気づかれずに済んだ。


次の行動は怪しまれないためにも宿屋へ行く、と言うことだ。決行は明日の朝、出て行く時だ。

姫様は野営なんて初体験だろうし疲れが溜まっているだろう、と言うことで今日はここで休むのだ。俺は念のため見張りでもしてようかと思うが……この王子は足手まといになるだけだろうし寝かせておくか。


宿をとって部屋に集まる。残念ながら部屋は一つだ。

まあ理由としては護衛しやすいのと旅人だと思わせやすいのの二つだ。この国の税金は高いらしいからこうやって一つの部屋だけ借りるってのも珍しくないみたいだし。


「殿方と一緒の部屋で寝ることなんてありませんでしたから……少し緊張します」

「緊張ねぇ。俺はそれを取ってもらうためにこの村で休もうと提案したんだがな」

「すいません……」


いや、こいつの考えももっともだ。

ただ一国のお姫様に手をだすほど俺は精神飛んでないし、恋愛経験ゼロの俺に攻略できると思ってんのか?


王子だけは気楽な様子で布団に寝転んで―――寝てらっしゃいますね。はい。

コイツに危機感と言うものは無いのか。


「はぁ、国境越え出来るのか?」

「しないと……いけないんでしょう?」

「まあな」

「ならやらなければいけませんよ。あなたもわたしも……助けたいという気持ちになってるんですから」


微笑むお姫様。残念ながら少しも俺は感動できなかった。

というか俺の頭の中には助ける、何て言葉すら浮かんでなかったからなぁ。面白い物が見たいってだけだったし……。

よし、これからは表向きは助けたいという気持ち、と言うことにしよう。


善行をする素晴らしい青年じゃないか俺は。

助けたいという気持ちを持つ好青年だ。


いや、高校二年生って少年? 青年? どっちだろう。

背も平均ぐらいだしなぁ。まあどっちで呼んでたって良いだろ。


「さて牛舎の位置でも確認に行くかな。お前はじっとしていろよ」

「はい」


宿から出て牛舎へと向かう。

なんだか悲しい場所だ。川の水が流れる音しか聞こえてこない。あとは他の奴が地面を歩く音だけ。みんな地面を向いていて会話すらない。


「ふむ、ここか」


牛舎の前に着く。

村の中にある牛舎なんて初めてみたがこの姿を見れば納得できる。

小規模の農園より小さな、それも家の庭を少し広くしたようなところに牛が一頭、馬が二頭、豚が四頭居る。

思ったより貧しいところだ……が、容赦は無用。馬が二頭しかいないからアイツらには相乗りしてもらおう。


「ふむ、この家が一番金持ちそうだんだがな」

「まあ村全体相手に売買している奴が一番金持ちなのは確かだよな、うん」

「うん、って誰だよお前は」


ちょっと自然に溶け込みすぎてて気づかなかったぞ!!

薄汚い服を着た青年だ。俺よりも身長が高いが体は痩せ細っている。


「え、ええと……。こんなに王都から近いのに何でこんなことになってるんだ?」

「ははっ、面白いことを言うね。簡単だよ、若い者はほとんど金や食料を持って王都へ行ってしまうんだ、だからただでさえ誰も寄り付かないこの村は今じゃあ地図にさえ載らないほど、なのに良く来たねぇ」

「若い者って……お前は違うのかよ」


見たところ同い年か、少し上ぐらいの年なのだろうけど。


「自分でも偏見だとは思うけどね、自分の慣れ親しんだ場所で死にたいと誰しも思うだろ。王都は知らない場所、だからこの町で暮らしてこの町で死にたい。それだけだよ」

「ほう……」


長い時間かけてこの村を発展させるってのも面白そうだが残念ながら俺はそんなことをしている暇は無い。

礼だといくつかのお菓子を分け、別れを告げると宿へと戻る。


「……あ」


扉を開けると姫様が言う。

うつらうつらと眠りそうだったのだが邪魔してしまったらしい。

悪いことしたな。こいつには寝ててもらったほうが後々楽なのに。


「そのまま寝てて良いぞ。毛布ぐらいはかけてやるからな」

「あ、いえ、それよりも何か、何か手伝うことは―――」

「無い。全然無い」


この村は発展させれば面白いだろうけど今のままじゃ全然面白くない。


「はい……」

「だから寝ろ。俺はまだやることあるから起きてなきゃいけないんだけどな」


見張りという……な。

しかし今は昼なんだが……みんな昼寝好きだなオイ。

疲れが一気に来たんだろうけど、そうなるとこの先不安だなぁ、とか思っちゃうのが俺なので。


「だから疲れは出来るだけ取って欲しいんだよ」

「え?」

「あ、良いから休め」


さあ、俺も眠くなってきたら王子叩き起こして寝ようかな。

まだ大丈夫だろうけども。


海弟の思考無しで読んだら普通のファンタジー小説なのでしょうね。

……海弟が諸悪の原因か……。


誕生日過ぎたのに海弟は海弟でした。

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