第272話『商人ギルド代表を俺は応援します』by海弟(マスク)
レティナの商業団体。まぁ簡単に言うと商人ギルドだな。
そこと俺の世界の交渉があるらしい、そしてそれに国家が補助として俺達を護衛につけたわけだな。
自分達の兵士は疲れているから他国の兵士を使うとは……まあ大金が影流の国に入るのは良いことなので幼馴染ということでやってやろうじゃないか、ということであの俺を含め四人のメンバーでコチラの世界に来ることを学校で影流に説明する。
「実は一ヶ月前ぐらいから決まっていたことらしくて島に居るときに相談されたんだよ。うちとレティナだしOKを出したんだがな。海弟の意思を聞かなかったというか聞けなかったのは悪かったな」
「いや俺もいろいろ忙しかったし、それに面白そうだしな」
「面白そうって……結構大事なことなんだぞ? 日本の政治が異世界に絡んできたらどうするんだ?」
「レティナがそれで潰されるのはイヤだな。商人ギルドがそのまま潰れることになるし」
「そこじゃないだろ。レティナが観光地とかになったら―――」
「その心配は無い」
そうなったら始末書覚悟で魔族から異世界転移能力を奪うと魔王と魔界に居る全員の魔族に言ってあるからな。
独自のルートで日本に居る魔族にも伝えられてるだろ。
「……まあお前が言うからには確信があるんだな?」
「あるよ。さてそろそろ戻らないとな。昨日から護衛してるんだ」
「それもそうだな」
「これから五日ぐらいは休むって言っといてくれ」
「わかった」
用具をまとめると廊下に出る。
カバンを持っている俺は明らかに目立っているが特に声もかけられずに外に出る。
校門から出て細い路地に入ると道路の脇に立っているミラーを使い家の玄関に俺が置いた鏡に転移する。
「さて着替えるか」
騎士の正装に着替えると、俺の部屋に置いてあるマスクをつける。
風邪のときにつけるアレでもプロレスラーがつけるアレでもなくイメージしてほしいのは目だけを隠すマスクだ。
全部着替え終わると手鏡をポケットに入れる。
俺の服にだけ特別にポケットがたくさん付いているのだ。影流に頼んで特別製にしてもらうのには苦労した。
特に戦争も無いあの世界、戦功も無いのに特別扱いは出来ないのだ。
まあ結果的に他の人には見えないところにポケットを複数つけると言うことで妥協した。
「さて護衛に行きますか」
転移用の鏡を取り出す。
『鏡』にも制限があり、中に何かが入っている鏡では転移は出来ないのだ。
そこらへんは強すぎるがゆえの拘束だと思っている。ふっ、目立つ者はつらいな。
まあそれ以外に拘束らしき拘束は無いので良いと思ってる。
「『鏡』」
目的地は名前も知らないホテル。
秘密の取引らしいから、こういう場所を使ってるんだろう。
見た瞬間燃やしたくなったのは言うまでもない。
国民をバカにしてるのか? 税金でこんなもの建てやがって。
「あ、海弟来ましたよイリアさん」
護衛と言うことで俺達の立場は比較的低い、なので広い一室を部隊一つで貸切だ。
……男女一緒ってのが俺のムカムカを誘っているがな。
「取引ってのはまだ続いてるのか?」
「はい。レンスと交代してやってください」
「そうか。それと俺の実名は出すなヘレン」
「あ、しまった。了解です隊長」
物凄く心配だ。
三人で取引場所へと移動する。扉の前で立っているのはギルだ。
他にもキリッとした格好で立つ二人の男性も見える。
「お、隊長が来たのか。思ったより早いな」
「隊長クオリティだ」
ただの早退だけどな。
「二人に代わってもらえギル、俺は中のレンスと代わる」
「了解っと。二人ともおつかれさんっ」
何故だろうか、額に青筋が浮かんでいるように見える。
「よ、よろしくお願いします」
「よろしく頼む」
ヘレンはヘレンで慣れない相手にはビビりまくりだしイリアは堂々としすぎている気がする。
まあバランス取れてるし良いか。
扉を開けレンスと交代の合図を出す。
レンスが頷いて商人ギルドの代表から離れると俺と交代する。
俺のマスクに若干戸惑っているらしい向こう側、というか俺達側の誰か。
政治家の息子だがいちいち名前なんて覚えてられるか。
「どうぞ、続けて」
そう言うと再び喋りだす商人ギルドの代表。
それに口を挟んでいく政治家さん。そういや思い出したが異世界外交官という職業の奴だったようなコイツ。
一時期ニュースにもなったがあっけなく決まったな。
今は食材の話をしているらしいな。
レトルト商品を売り込みたいらしい日本側。しかし向こうの世界にはカレーすらも無いのでそんなのがいきなり売れるはずも無いと反論する異世界側。
お、コイツ等なかなか面白いぞ。
異『ですから、いくらおいしいといっても慣れの無いうちでは売れる物も売れません』
日『生活を便利にする商品、こう言って売ってみては?』
異『はあ。まず国に反対されますよ。レティナの方針としては『便利な物ではなく意義ある物を売る』という物がありますから』
日『…………』
何だ、面白くないな。
まあこの商人ギルドの人の言っていることはこうだ。
最低限生活が出来るようにするため便利な物でなく意義のある物を売っていこう、技術の進歩よりも人々の生活を重視しようって事だ。
技術が進歩すればそれを独占する者が現れる。それを出来なくしているのが商業の国レティナだ。
手間をかけるという事は職人を、仕事を多くする事だとマエティー王さんは思っているみたいだ。まあその結果か経済に関しては群を抜いてるな。
異『我々が欲しているのは文明の利器ではなく人々の心を豊かにする商品ですから』
日『ならばこの絵はどうでしょう? 有名な画家が―――』
異『落書きですか?』
コレだ。コレを俺は欲していたんだ。
その落書きの絵というのは……悪魔と天使が何か描かれているものだ。
残念ながら俺も落書きにしか見えない。
日『どのような物を望んでいるのですか?』
いやそれを聞いたらダメだろ。
異『建築技術、ですかね。あ、このほてるとか言う物じゃないですよ? 途中で見た民家です』
俺これからこの人の応援するよ。
日『技術ですか? ならばこの後―――』
異『まあそれは国同士で取引するものですからね』
まあ団体と国の取引だからなコレは。
レティナが仲介しているからと言ってこれは変わらない。
というか何一つ決まらないんじゃないかコレは。
「布とかはどうですか? こちら側には魔力を抑えることに長けた布は無いですが熱や冷気に強い素材がありますよ」
異『ほぉ』
ま、ここら辺が妥当だろ。
最近のファッションについてはこの人だったら『一般人の着る服が見たいのですが』ぐらい言ってくれると思う。
国相手なら上品な物でも取引できるだろうが商人ギルドはそんなものとは違う。
一般人へと供給を主にしている。
国から補助をもらってな。
日『私どもの理解する組織と若干の齟齬があったようで。これまでの非礼は失礼します。ではこのような布はどうでしょうか?』
そう言って出てきたのは派手な服。
異『これは人が着る服ですか? ほかの国文化に口出しする気は無いですが……変だと思いますよ』
棘が取れて面白くなくなったな……。
ま、良いか。