第270話小さな集落
海弟の外道っぷりを凝縮したお話
剣が俺の頬を掠める。血が飛び散り周りを汚す。
「っ、はぁぁッ!!」
相手の剣を素手でつかむ。勿論血が出るが痛みは無い。ゴリッとした俺の骨と剣の刃がこすれあう感触はあるが。
『ひ、ひぃっ!! っ、あぁぁぁぁぁあ!!!』
「爆発、で良いかな?」
剣を引っ張って抜こうとしている相手。しかし俺の魔力で強化された握力の前ではあまり効果が無い。
魔力をもう一度練り相手の体へと巻きつける。当然それを相手は見ることができない。
「第二『重火』」
ボドンッ、という音とともに男は爆発する。
「これぐらいの力技で攻めれば影流も倒せるかな」
「だからってこんな小さな町の衛兵を焼き殺しは無いでしょ? エルフの領地よここ」
「知るか。お偉いさんなんて殴られただけで騒ぎ出す連中だ、そんなのに構ってる暇なんて無いんだよ」
「まぁこっちのがよっぽどひどいけど、いや比べられないか。臭いし早く行かない?」
イリアが言う。
まぁそうだな。墓ぐらいは作るけど。
というわけで簡単に墓を作り持っていた剣を刺す。
見ている側からは意味不明かも知れないが簡単に説明すると―――
影流倒せないかなーと、俺が思考。
あ、良いこと思いついたと、俺がひらめく。
あとこにちょうど良い奴が居るな、と俺が襲い掛かる。
そして倒す。
つまり俺が全面的に悪いってわけだ。
馬車を運転していたイリアがすぐに追ってきたわけだがあんまり意味無かったな。
周りの村の人もコチラへ軽蔑と畏怖の気持ちを視線でぶつけてきている。
「さて行くか」
「隊長、一言言わせてもらうとああいうのはやらないでください」
「衝動的なんだよな」
「なら拘束具を買いましょうか? 経費で落ちると思いますよ」
「俺が許可しない」
「財務に関しては私に一任されていますよね?」
「今から城に帰るかな」
「ダメです」
ああ悲しき俺の人生。
しかしやりすぎたとは俺も思うな。
神様パワーで、とかは良いから後で何かしに来るか。
「というかもうすぐレティナの領に近いんだししっかりしてよ? 隊長さん」
「やってるよ。たぶんしっかりやってるよ」
どの隊の隊長より俺はマジメだ。
そう、殺さなくて良い人間さえも殺すほどマジメなんだよ。
「人間狂うと怖いですね」
「あ、声に出てた?」
「いえ、あえてどちらという明確な答えはだしません」
「それは助かる」
馬車にもう一度乗り込む。
「焦げくせぇ」
「燃やしたからな」
ギルの言葉にそう返して空いたスペースに座る。
「なぁ、思うんだけどよ。隊長はこれ以上の力を何で望むんだよ」
「ん? 力? 俺はそんなもの望んでないけどな」
「なら今の現状はどう説明すんだ?」
「頑張ったら結果が付いてきただけだ」
「が、頑張った……。この人努力家を物凄く侮辱したよね今」
俺なりに頑張ってるんだけどな。
神を脅したり神を脅したり世界の支配者の特権を乱用したり、とか。
「隊長関所だ」
「はぁ? 関所?」
聞こえてきた声にも反応する。
隊長は大変だなぁ。
立ち上がって前方を見る。
見事な関所ができていた。
「爆破か顔パスか……」
「とりあえず爆破はダメよね」
そう言って関所へと入る俺達の乗った馬車。
守っている兵であろう一人が職務質問のようなものを始める。
まだ他にも居たが一人だけで馬車の中を確認にくる兵士。
「ほぉ、あの国の。見たところ馬車の紋章も本物っぽいし、通っていいよ」
馬車の中の兵士を忘れ進んでいく馬車。
何か戸惑っているようなので蹴り落としてあげる。
「イリア、どのくらいで着く?」
「たぶん今日の夜には……」
「そうか。なら昼までに着くようにしろ」
「な、どうやって街道を通らずにいけというんだ!!」
「通れよ」
「いや、レティナ国の街道は他国の騎士、武将よりも商人の通行がだな―――」
「知るか。俺等もその商人の王様に呼ばれてきてるんだ、ほら商人関係」
「それを無理やり通そうという隊長に免じて一度だけやってあげるわよ。はぁ……」
馬車を方向転換させ街道へと向かう俺達。
道も安定しているし早く着けるのが街道、そこを商人ごときに占領させられて溜まるか。
街道はすぐに見えてくる。
整備された道がやたら綺麗に見えるのはきっと目の錯覚だろう。他の国よりも無法地帯になっているのだ。
しかし国の税金によって整備された街道は比較的綺麗なのだ。
「お、誰も居ない」
「珍しいですね」
……宰相が俺を呼んだ。前にチラリとあったこともあるが有能な奴だったな。
という事は予測していたんだろうな。
「行くぞ。一国の王と宰相様がお待ちだ」
「了解」
そのまま街道を走り王都へと向かう。
さて、何を頼まれることやら。
とにかく眠かった。
だからあとがきは面白いこと書けません。




