第262話黒系統魔獣の倒し方(海弟編)
昨日は寝てました。
待ってた人すいません。居ないと思うけど。
あるぅ~日、森の中~、熊さぁんにー、出ああった~。
「緊急回避ィィッ!!」
ズシャリと俺の隣の木が砕け散る。
「アレは魔獣だろ絶対!!」
「たぶん正解ッ!!」
さっきから防戦一方の俺。
それには理由がある。
魔法攻撃 → 無力化
物理攻撃 → 無効化
支配者特権 → 硬直三秒
さて、倒す方法が見つからないんだが。
クマさんのクローを避けつつ対策を考える。
「……よし、作戦決定!」
「聞かせて」
「まず、俺が逃げるだろ?」
「うん」
「次にお前が死んだフリをするんだ」
ほら、二人とも無事だ。
「……アタシが死ぬように思えるんだけど?」
「死んだフリは最強だぞ!? ほら、動物って生きて動いている動物は食べないし」
「それは死んだフリをしたら食われると言う事だ!!」
「いや、魔族だから大丈夫!」
「その根拠は!」
「……お前強いし?」
「考えてから言うな!!」
シルアの目の前を爪が通過する。
話に気を取られすぎだぞお前。
「眼球すれた」
「なのに視界が確保されているお前はやっぱり魔族だ」
これなら大丈夫なんじゃない?
ほら、消化不良ってヤツで吐き出されたり。まぁ勿論死ぬの前提だけどさ。
俺逃げてるし。
「ッてなわけで頼んだ!!」
「イヤだ!! 絶対アタシが逃げるッ!!」
そう言って俺に向かって水の魔法を打ち出してくるシルア。
クッ、コイツ地の魔法以外も使えたのか!!
誤算だったが何とか避ける、と同時に転ぶ。
「……え?」
「それじゃ!!」
俺の横を走り去っていくシルア。
少し自分の足元を見てみる。
地面に埋まる俺の足。
「……キサマァァァァァアアア!!」
ちょ、ナニコレ抜けない!
うわぁぁぁ、こっち来た!! こっち来たぁぁぁ!!
「ッたく、光よッ!!」
光の剣無しでの光の魔法。
つまりは制御失敗による爆発。
俺は足が埋まってるのなんて関係無しに吹っ飛ぶ。
気絶しないように適度に受身と取りつつ急いで立ち上がる。
クマさん魔獣からの距離は十四メートル。
考えている間にも俺に近づいてくるクマ。
何とか……何とかしないと。
背中の剣を引き抜く。
さっき仕舞ったばかりなのに傷一つ付いてない。
当たり前だ、斬ってない……と言うか斬れなかったんだから。
「第三『炎鎧』」
炎の鎧が俺を包む。
……魔力を制御し炎を剣に纏わせる。
「ハァッ!!」
ガンッ、という剣で斬ったには不適切な音と共に炎が飛び散る。
……何も起こらない。
グサリと俺の腹を貫く爪。
しかしまだ死なない。
二本ほど木を薙ぎ倒し、俺の体が三つ目の気に受け止められる。
「ッ、うぅ……。まだ死ねねぇの?」
まぁ良いや。
弾き飛ばされた剣を見る。
うん、成功。
俺の右腕を見る。
そこから魔力が流れ出て、一本の糸になると剣の柄の先の部分に繋がっている。
炎の糸、いや魔力の出力を上げ炎の鎖へと変える。
「いやぁ、コレぐらいの反動が無いと無理なんだよね。これ」
『炎鎧』は元々防御用の魔法だし、形状をあまり変化させれない。
頭に途轍もない痛みでも与えて形状を極端に変えるチャンスを作らなきゃいけなかった。
「クマってのは黒機よりも何倍も小さいからなぁ。それに知ってるんだぞ?」
黒機は最強の魔獣。いや、魔獣といえるかはわからないが。
ならこのクマはその下位に当たる魔獣だろう。
そして黒系統の弱点。過剰なまでの生命力の等価交換。
右腕を横に一閃すると同時に鎖が短くなり、一閃した反動で地面から抜ける。
そして鎖を長くし、剣を重しに炎の鎖が黒いクマを囲い締め付ける。
「黒系魔獣の弱点は過剰なまでの防御力と耐性。捕縛系の攻撃、魔法に弱いところだ」
黒機の場合はでかすぎてそれ専用の魔法を使わないと無理そうだからアレだが……コイツ程度のチビにはコレで十分。
『ッ、ぐ、ルルルルァァァッ!!』
「吼えても無駄」
クソが。ここにシルア居たらトドメ刺せたのに。
「はぁ、倍増」
魔力を更に上乗せ。
鎖の形状さえもわからなくなりどろどろと中心のクロクマから炎が流れ出る。
実際には俺の魔力だがかなりの温度なこと間違えなしだ。
叫び声も聞こえなくなってきたところで鎖が大きな音を立てて地面に落ちる。
「小さい奴ならコレでいけるか」
かなりの魔力……というかさっきから俺の魔力は既に枯渇寸前だぞ?
もう帰り用の魔力しかねぇよ。
……まぁ魔法石はあるけど。
「海弟ー、生きて―――血塗れね」
「お前もう死んで来い。神の前で懺悔して来い」
実質俺の前ね。
「あー。はいはい。回復させるから黙ってるが良い」
「ん? 回復魔法なんて使えたのかお前?」
「地の魔法の一貫ね。得意魔法では無いけど妹に何かあったらと考えると……あぁ、覚えなきゃってね」
コイツの回復魔法は俺に匹敵だな。
妹が関わってるとこうも……何かすげぇ。
「しかし焦げ臭いわね」
「しょうがないだろ?」
文句は言わせん。
治癒が終わりシルアが立ち上がる。
貧血のせいかふらりとしたが俺を立ち上がりシルアに今後の考えを言う。
「シルア、黒機がここに居るってことはつまり、黒機に似た種族も居るってことだ。妖精共から黒系統の魔獣の殺し方と手なずけ方の技術を覚えたら虐殺を開始するぞ」
「まぁ居るってのはアレだけど手なずける技術? それ居るの? 海弟がいたら討伐できるんでしょう?」
「バカかお前。一日一体が限界だ」
大きさにもよるけどな、とは言わず先へ進む。
「で、どっち?」
「地図が燃えたのでわかりません」
それぐらいの犠牲……。
シルアが海弟のGP(外道パワー。※外道ポイントではない)を吸い取っていく。
って言うか、今回は海弟が可哀想だった。それは否定しない。