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第261話妖精なら解決

久々の出演。

ああ、書きにくい。

敵地は意外と遠いらしく俺達の足で一日中歩き回っていけるか否か、という距離だった。


「思ったんだけど」

「何?」

「召喚術使える海弟?」


……その質問はタブーだぜシルア。


「無言=肯定よね?」


もう死にたい。


「だからさぁ、ドラゴンとか龍とか竜とか召喚してくれないかしら?」

「お前が言っているのは全て同じ生物だ」


しかも俺の嫌いなもの。

船とは違って酔わないけどさぁ、アレなんだよ。怖くて怖くて殺戮衝動に出たくなっちゃうんだよ。

いや微妙に違うな。まあいいや。

ドラゴンのせいで浮くのも怖くなったし。


「じゃあ召喚してよー」

「土下座して靴舐めろ」

「やだ、汚い」


そうか……調子にのるとこんな痛い目を見るんだな。

勉強になった。


「まあ勿論、我が愛しの妹の靴だったらぁ……あははぁ」


コレが男だったら殴ってるな。

女でも殴るけど。


って言うかもう殴ったけど。


「……痛い」

「安心しろ、お前は器の小さい女じゃないと知っている」


向こうの世界の女は小さいことで騒ぎすぎだ。

……コッチの世界が穏やか過ぎるほど穏やかなんだけどな。


「……はぁ、歩きましょ」

「それで良い」


最近歩くのに慣れてきた気がする。

今度向こうの世界の富士山にでも登ってみようか……。

メンバーはクラスメイト全員……はさすがにイヤだな。キライな奴も居るし。

まあ俺の差別しない寛大な心で今回だけは誘ってやろう。あわよくば事故と見せかけ落としてやろう。火口に。

ははっ、魔法を使えば簡単さ。


「何か悪巧みでもしてる?」

「あぁ、少しマグマで煮える奴等の姿を想像していた」

「……何をする気?」

「教えない」


コイツに教えたら魔王に止められるからな。

魔王のくせに魔王のくせに魔王のくせに……。


「それにしても……暑い」

「そうか? 俺は涼しいぞ?」


不思議なことに俺の周りにだけ風が吹いてるから。

いや、種も仕掛けも無いんだよ?

あるのは俺が魔法を使っているという事実だけ。


「しりとりやろうか。暇だし」

「喋るの疲れる」


お前もう老人ホーム行け。


「りんご」

「……」

「……」


……続かないな。うん。

そんな事を考えていると、いきなり道が消える。


「……ここから敵国に入るのか? いや、内乱のはずなんだが……」

「人の整備が整って無いって事じゃないの?」

「だから、つまり敵国の近く―――いや、他の可能性もあるな」


例えば未開の森。例えば魔物の巣窟。例えば……意図的に消された、とか。


「妖精は俺等には使えない魔法を使う。師匠で確認済みだ」

「ん? つまり?」

「地形を変える魔法があったとしたら?」

「……ありえるわ」


地図を取り出す。

丁寧に街道(かいどう)が細い線で書かれている。

今現在の場所はさっき見た森の位置と、橋の場所の位置からこの地図右側にある山の近くだ。

こうすればどっちに進めば良いかがわかる。


「シルア、コッチにいくぞ」

「あってる?」

「あってる」


指差した方向へ歩き出す俺。

だいぶ道がクネクネしているようだったのでショートカットさせてもらっているが道無いし気づかないだろうから言わずにショートカットさせてもらう。


進んでいくと、川が見えてくる。

さて敵地まであと少しだ。


「って、橋が無いな」

「妖精には関係無いでしょうけどね」


……あぁ、そういうこと。


何ていうか建設費が浮くな、妖精。

その分、都市の建物がでかいけど。


「ちょっと待ってろ」


シルアにそう言って手鏡を取り出す。

さて、目指すはふぇーの居るところ。


手鏡に吸い込まれるのと吐き出されるのを同時に体感した後、俺は自分の部屋を見回す。


「……お、居た」


俺のベッドの上で寝ている妖精。

人差し指で肩を揺すって起こす。


「ふぁぁぅ」

「起きろ。と言うか起きないと明日より一週間おやつ抜き」

「おきました!」


素直だなお前。


「とりあえず異世界行くぞ異世界」

「えー、こっちのがあまいよ」

「おやつ―――」

「いくっ!」


素直な良い子です。


と言う訳でふぇーと一緒に異世界へ行くと地面に座り込んでいるシルアが目の前に現れる。


「……何やってんの?」

「暇だから草結びを……」


……少し誰が引っかかるか想像しちゃったじゃないか。


「って、妖精!? この小ささは向こうの大陸の……何? 契約でもしたの?」

「まぁな。俺の人柄の良さに惹かれたらしい」

「……とりあえず嘘は良いから打開策よ打開策」


嘘か。嘘だし良いか。


「さて、ふぇーさんや。このロープを向こうの木まで結び付けに行ってくれ」


きょろきょろと可愛らしく首を振るふぇー。

何だそれは、イヤってことか?


「ちょっととおい」

「遠いか?」


まぁロープが長くなれば長くなるだけ重くなるからな。

仕方ない。


「パチンコ玉で許そう」

「りょーかい!」


無事向こう岸に渡る俺とシルア。

俺は精神の半分ぐらい根こそぎ持ってかれた気分だ。

『鏡』で転移するにはその場所の風景を想像しなくちゃならない。

印象強い何かがあれば一気に飛べるんだが森みたいに木がたくさんあると……面倒なんだ。

まぁそこは問題じゃない。

問題なのはパチンコ玉が小さいから大量の魔力を使って転移しなくちゃならないことだ。

手鏡とパチンコ玉、かなりの魔力を消費したぞ。


「さて、ふぇーは反逆者を倒すまでコッチの世界に居てもらうとするかな」

「えー!!」

「案ずるな。何も死にはしない」

「あいすは?」

「無い」

「くっきー」

「あるかもな。シルア作れる?」

「材料が無い」

「無いらしい」

「えー」


ついにふぇーのお菓子離れの時が着たか。

というか妖精は何故太らないのかを夏休みの自由研究として……いや、周りからなんで知ってるんだ? って目をされそうだからやめとこ。


……少し成長させて一人称だけ漢字にしてみようかな?

いや、そうすると誤字を報告してくれる優しい方が一緒に報告してしまうかもしれない。


と言う訳で、今後ふぇーが一人称を『私』と言ってもそれは誤字じゃなくて成長と言う事で。



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