第256話平野営(へいやえい)
平野で野営、略して平野営です。
……無理があるか。
「……重い」
「お前が自分で重くしたんだろ? ははは、二倍返し」
と言う訳で騎士さん達の猛攻を跳ね除け盗賊紛いなこともして、最終的にその鎧などはシルアが持つことになり本人はと言うと悲鳴を上げるしまつ。
何だコイツ、そこまで予想できてなかったのか?
「で、何で海弟はお金なわけ?」
「重いぞ、コレも」
鏡の中に入ってるけど。
「……あ、そういや鏡の中に鏡は入れれないの?」
「途轍もなく馬鹿なことを聞くなお前」
「え?」
「二つの吸い込むもの、簡単にブラックホールとしよう」
「ぶらっくほーむ?」
「ブラックホール。この空の上にある謎の穴だ」
それ以上は知らん。
「で、それが二つあったとしてどうなると思う?」
「どうなるって……どうなるの?」
「簡単だ。消える」
「……え?」
「いや、実際には消えないな。二倍になる……もしくは一つになる、という表現が正しいのかも知れないがそこら辺は微妙。まぁ簡単に言えば中に入っている物が消えるからヤダってことだ」
「始めて聞いた」
「俺も始めて他人に言った」
まぁ感覚としては長年やってきたゲームのデータが消えたってところか。
あの時のダメージの大きさはやっぱりでかかったぜ。
「まぁ利点もあるんだけどな」
「利点?」
「そう、利点。ここに爆発物があったとする」
「ほう」
「鏡と鏡をあわせ一つにする」
「ほう」
「無くなる」
「おー」
「まぁ、鏡割った方が速いけど」
「……」
だがオレは毎回手鏡を大量に購入するのは恥ずかしいので割るのはあんまりやらないけどな。
「んじゃ、そろそろ休むか」
「え? でもまだ昼―――」
「他言無用」
コイツは村で休もうとか考えているんじゃ無いだろうな?
ただでさえ不法入国しているんだぞ? それに妖精騎士(?)に攻撃までしちゃったし。
テロだぞテロ。
「まぁ俺を敵に回した代償は大きいがな」
「……それじゃ休もうか」
と言う訳でシルアの荷物の中から野営セットを取り出す。
「……何かだいぶ軽くなったんだけど」
「はは、気にするな」
気にしたら負けだ。
と言う訳で有り余る材料で料理を……面倒なので作ってもらう。
「ガンバレ」
「え? あ、アタシ!? む、無理無理」
「何故?」
「魔王様が作るな、って」
「オーケー俺が作ろう」
こういう場合はかなり危険だ。
☆
コトコトとシチュー的な何かを作りつつ今回の戦利品を見る。
「くすんでるなぁ、コレ。使えねぇ。傭兵崩れに売るとしても高く売れないぞ」
「コッチはだいぶ綺麗だけど」
「それはこの国の制服だろ。マニアとかにしか売れねぇよ」
「そう? じゃあコッチは?」
「武器か。どれどれ……」
レイピアに形状は似ているが……違うな。刀身が少し太い。
ん? 柄の部分に何か……。
ジュシュッ
……ん?
俺の頬を掠めるレイピア。
「……そ、そうか、ココを押すと伸びるのか」
「妙なところで運が悪いのね」
しかしそれで死ぬ俺じゃ無いんだよ。
「それで、伸びたらどう戻すんだコレ」
「さぁ?」
……いらね。
戦利品鑑定の間も終わりシチューを盛り付ける。
「……おぉ、アタシより料理ができる」
「当たり前だ!」
最近は兄さんに料理を教えてもらっていたりもらっていなかったり。
まぁ、そんな感じだ。
「んじゃ、食ったら寝るぞ。勿論俺は向こうで」
「……何でアタシはダメなの」
「見張り」
「……じゃ、じゃあ海弟のベッドにアタシが寝て海弟が見張りってのは、どう?」
「さて、食ったし寝るかな」
とりあえず、現実は非情で残酷だ。
さて、王都を爆破する日も近いか……。