第251話海弟と潮風、そして平和
永遠とくだらないことを続けてます。
って言うか、最近『白の剣と黒の剣』は小説というジャンルからもう抜けちゃってないかい? とか思ってる作者が居るのですが。
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。
おじいさんは山へ芝刈りに(自給五十銭)、おばあさんは川へ洗濯に(自給自足)行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこどんぶらこと、大きな桃が流れてくるではありませんか。
おばあさ―――
「おーい、生きてるかーい?」
「おばあさん、その桃は食用じゃないの。そうおじいさんと一緒に切って」
「……耐えれる?」
「無理、絶対無理」
気の弱い少年の船よりもコッチのが速そうなので乗せてもらうことにして、そして三時間。
残り二時間経てば本土へ着くわけだが……耐えられない。
「海の神様、ゴメン。神聖じゃない異物をココで吐かせてもらいます」
「はいはい、背中擦るから」
異物……では無くて、げの付くアレを吐き出し少しスッキリするともう一度船が動き始める。
ビュンビュンと俺の隣を過ぎていく風。
今思った。俺が今酔ってるのって俺のことを全く考えずフルスピードでこの船を走らせてるコイツのせいなんじゃないか、って。
いや、正解とまではいかなくても不正解ではないだろ。
「な、なぁ、シルア?」
「何さ?」
「あ、ゴメン。前向いて」
何ていうか弱気な俺。
って言うか前向いて運転して! たまに海面に出てきた魔獣を轢くから!!
「んで? 何?」
「とりあえず、俺のことを労われバカヤロウ、とだけ言っておく」
「……つまりスピード下げろと? この気持ち良い潮風を全身で感じられるこのひと時を、奪うって言うの?」
「ゴメンなさい。ホントゴメンなさい。だから前向いて」
何か色々恐ろしい女だ。
魔物でも魔獣でも魔族でもなく、魔珍獣の称号をやろう。
「んじゃ、何か話でもしてあげる」
「お、おう」
桃太郎以上の話を期待しようじゃないか!!
「そのむかし、勇者も魔王も人間も居ない頃、神々の時代まで遡ります」
何か妙に丁寧だな……。まぁ、良いけど。
目を瞑りながら俺はそれに聞き入る。
「神は孤独でした。でも一人じゃない。だけど孤独。一人じゃないのに孤独、何故なら意思を疎通できなかったから」
神のくせに全知全能でないとは……許せんな。
「そこで一人の神様は考えました。『……もう死のう』」
「ストップ!! スットォォォォォップ!!」
うぇっ、吐き気が……。
じゃない!
「ナニソレ!? そんなこと考えれるだけの思考能力あれば意思疎通できたでしょ!?」
「童話に文句つけんな!」
「いや、自殺する人がでる童話とか聞いたことないし! 認めないぞ!? 俺はそれが童話だなんて認めない!」
「まぁ続きを聞け」
……続き。
「しかし神です。死ねません。なので世界に悪を作りました。それを人間と呼び形作らせ、神に反抗するように陽動させ、ついに戦争は起こりました」
良かったじゃん神様。
「しかし、人間があまりにも弱くゴミ虫以下だったので神の圧勝でした」
うん、神様の誤算そこだね。って言うかゴミ虫以下言うな。
ゴキブリ以上の生命力だったら許すが。
「そこで、もっと大きな悪を含んだ魔族を作りました。神に近い構造をした魔族は人間と同じように繁殖し、神との戦争を人間と同じように起こし、散りました」
魔族散ったぁぁぁぁあ!!
「そこで、神は考えました。我々が悪となり正義に討たれれば良いのではないか? と」
ほぉ、中々。
「なのでつまみ食いやスカート捲りをするようになりました」
「驚くべきほど低脳な神だな。俺はその神を神とは呼ばず一般の子供として育ててやりたいぞ」
「……もう面倒。自分で読んで」
「読んでって、何が―――」
飛来してくる飛行物体……ではなく、本。
「って、お前言い方がやけに丁寧だと思ったらコレ読んでたのか!? って言うか前を見ろよ!!」
「難しいことはさっぱりわかんないんだよね」
会話が繋がんないな。
どうにか糸口がつかめないものか……。
探す。探す。そして考える。
「なぁ、サオってどんな奴?」
「あ、アタシの妹?」
お、食いついた。
硬い船の底に体を預けながら思う。
「アタシの妹はねぇ、んー何と言っても可愛い。そして、美しい! そして天才で気高く全ての―――聞いてる?」
「いや、正直引くわ」
お前はシスコンか?
いや、それ以前に女子に対しシスコンと使って良いのか? 良いだろう。俺が認める。
だって俺神だもん。支配者だもん。
「引く? でも、サオ可愛いしぃ。何で皆はアタシなんかと見間違えるのか……。わかってないなぁ」
「ならお前も十分可愛いってことじゃないの?」
「……え? アタシが?」
…………。
え、あ、ちょい。待ってくださいよこの不思議空間。何ていうかピンクいオーラが見えるよ?
場の雰囲気と言うか、オーラの見える海弟さんはこの雰囲気は不味い雰囲気だと瞬時に理解しましたけど、逃げれない!!
「……魔王様のお気に入りに手を出すわけにはいかない、か」
……魔王ナイ―――ス、と言いたいところだが、お気に入り?
お前は俺のことを部下になんて言っているんだ!!
BLにでも発展させたいのか? って言うか、魔王は男なのか女なのかすらわかんねぇよ俺は。
「まぁ良いか。オカマで」
ほら、何かオカマって文字まがまがしいから、魔王って文字とピッタリだ。
「オカ魔王、次からそう呼んでやろう」
ここまで侮辱されまくってる魔王はコレが始めてだろうな。うん、オカ魔王。
「さて、残り一時間を切りましたか」
「一回しか吐いてないなんて奇跡だな」
何だか目の前にぽわんと島が見える気がする。
錯覚じゃないよな。
対して、後ろの今まで居た島は見えない。
「……吐く」
遠いところを見ると吐き気が……、そのまま海を汚す俺。言い方が不味いかな。
「そういやこの船って何で動いているんだ?」
「魔族特有の微弱な魔力って言ってた」
微弱な魔力……そういや、魔族って人間のように魔力を制御せずに自分の魔力が届く範囲ならどんな魔法でも成功させるよな。
ある意味俺に似てるな。
……まぁ、その俺は人間の使う(魔力で作ったもので攻撃する)魔法と魔族の使う(魔力を垂れ流して瞬時に攻撃できる)魔法を足して二で割る……いや、先に割り算が来ると小学校ぐらいで習ったから、カッコを付けて。
(人間+魔族)÷二=俺
コレだな。
「なら俺も船酔い治したら使えるかな」
「さぁ?」
……まぁ、小型船は軽いトラウマだからもう乗らないと思うけど。
「後三十分。さてどうする?」
「よしじゃあ……寝よう」
今日は魔力の消耗と回復が激しかったから。
「……襲うよ」
「大丈夫。お前はこの船を止めないから」
そして俺は三十分も船酔い状態で寝れないと思うから。
「……何ていうか負の計算ね」
出来るようになれば一人前の外道だ。
シルアの名前の由来は、他に書いてる小説でとある言葉を書いたのがきっかけです。
『知り合い』
もうおわかりでしょう。
『知り合い』→『しりあい』→『シリアイ』→『シリア』→『シルア』
はい、こんな感じで雑に名前決めている兎桜でした。