第246苦しい行動
……このネタを何処まで引っ張るんだろう。
たぶん、船から下りるまでだろうな。
俺は水を手のひらに出現させ、海へと打ち込む。
海流によって消えてしまうが、水飛沫が舞い一時的に俺達の前に魔獣とやらが目の前に現れる。
魚のような……魚人のような……でも顔は魔族で。
とりあえず不気味な魚人だった。
「魚でも魔獣って言うのか!?」
「由来は魔に汚染された地上の獣、ってことだから。とりあえず魚も含める」
うん、とりあえずってところが気になるが追及しないでおこうか。
「さて、風の補助ぐらいがいいか? それとも俺がお前の魔力を吸ってやろうか?」
「後者はいらないから」
うん、じゃあ前者ね。
風の魔法を使い、潜るアシストをする俺。
素早く動けるように海流を水を打ち込み流れを打ち消しその間に魔獣に―――名前なんだっけ?
「ぶぅ!? ぶ、ぶぐぶるる!?!」
「お、おお!? 手元が狂った」
ミスしてさっきの少女に当てちゃったよ。ハハハ、ここはフレンドリーに土下座と行こうじゃないか。
「水中土下座ッ!!」
「許すかぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そんな漫才のようなことを二人でしていると、魚の魔獣が口から何やら黒いビームのような物を吐き出す。
「何アレ?」
「ここら一帯の魔獣はああやって仲間を呼んで―――呼んで、えぇと餌を食べる」
……餌を食べるんだ。
へぇ、そうなんだ。
「で、餌って?」
「決まってるだろ」
「あぁ、共食い」
「私たちだ」
あ、やっぱり?
……どうしよ。
そ、そうだ。僅かな可能性に掛ける!!
「な、お前手鏡とか……何か持って無い?」
「何だいきなり!」
「いいから!!!」
「う、うむ。まぁ、持ってる」
「よし貸せ」
「な、何故だ!」
「とりあえずここから逃げるために必要なんだよ!」
何でもっと早く気づかなかったんだ!
俺は素早く少女から手鏡を奪い取り船の中を想像する。
焦っていたはずだが、何故だか集中が出来る。そうアレだ。
もうすぐ自然体……海に帰りそうになってるからだ、きっと。
「ここに入れ!」
「何を言って―――」
面倒なので手鏡を少女の顔面に押し付ける。
よし、通ったな。
「次は俺だ」
と言う訳で手鏡の中へと転移する。
あの手鏡は海の中へ落ちることとなったが、まぁ俺達の命は救われ―――
「は、吐く……」
トイレ! トイレ! トイレ! トイレ!
ガチャ、ガチャガチャ……
何で開かないんだ!
『ん? の、覗きか!』
「違うッ!!」
大声だしたらアレが迫ってきた……。
『……その、だな。服がびしょ濡れでな。代わりにお前の服を借りる事にした。ありがとうな……』
その感謝の気持ちがあるのなら今すぐそこをあけるんだ!!
俺はキミの目の前、と言うか扉越しで吐く事になるんだぞ!!
「ぃ、いいから……扉を……あけ……て」
『な! 男に裸体を見せるなど……、それに命の恩人同士だ、その借りはなし、私が言ったのは服のお礼だけだ。たかが服一着で―――』
「長い! 言い訳が長いぞお前!!」
あぁ、もう何かヤバイ。
窓の外に吐こうか……、いや落ちたらイヤだ!!
「む、ぐぐぅ……」
ここまで俺が追い詰められるとは……。
魔獣よりも吐き気の方が俺にとっては何百倍も脅威だ!!
『海弟ー? 何だかさっきから五月蠅いぞ』
……ッ!!
そうだ、向かい側の部屋は影流の部屋だったんだ。
よし、そっちのトイレを使わせてもらおう!
「あけ、る、ぞー」
危ない。普通に喋ろうとしたらアレが出そうになった。
急いで走って扉をあける。そして影流を避け向かい側の部屋へ。
そして向かい側の部屋の扉を開け、トイレへと直行!
ガチャ―――
……何でぇぇぇ。
ん? そうだ。各国代表(既婚者)は王女、王、同室だったんだ!
と言う事は中に入っているのは青空! クソッ、人間に必要な行動と言え排便にここまで苦しめられるとは!
「ッゥ!!」
トイレの扉に貼り付けてある鏡に俺の苦しそうな顔が入る。
……ん? 待てよ。
鏡に魔力を通し、保存用の鏡へと変化させる。
「……この中に……吐けば」
影流、青空、何かゴメン。でも俺は我慢できないんだ。
大量のアレを鏡の中へと吐き出す。
何か異様な光景だが、俺はだいぶスッキリだ。
……しかし、この鏡の中に入ったアレはどうしようか……。
よし、この鏡は海に捨てよう。
トイレの扉からちょっぴり大きめの鏡を取り外し海へと円盤投げの要領で投げる。
さぁ、自由に飛びたて俺のアレ!!
「んー、影流何かよ……う?」
青空がトイレから出てきて俺のナイスなポーズをしばし唖然として見守る。
誤解とかじゃないけど、説明するのに一時間ぐらいかかりました。
ここで吐き気がくれば楽だったのにこんな時には来ない吐き気……ふざけんなー!!
青空が久々に出てきたー。
一言だけだけどね。そしてトイレ入ってたけどね♪