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第244話お風呂場での一件

複雑なんだなぁ、と俺は思う。というか目の前の手紙を読んだ感想がそれだ。

魔王からの手紙が来たのが今日の昼らしい。俺がこっちの世界に来たのが今さっき、夕方だから随分と手紙は放置されていたことになる。


『新たなる大陸で新たなる闇を見つけた。少し来て見ないか?』


……んまぁ、正直見たい。ただ絶対に母さんにバレるから行くに行けない状態だ。

魔王を狩られないように守ることは俺には出来ないし、何だかなぁと言う状態でずっと待っていることになる。とは何故かいかなかった。

この手紙が送られてきたのは俺だけじゃなく、各国の王、はたまた勇者の母さんまでだ。

と言う訳で隠密に済まされそうでない事態が現在、この大陸では行われている。

海路は地図が同封されていたので迷う事は無い。航海士として死有さんや夢なども居るからな。


ただ、問題はそこじゃないんだ。


問題は船を使うと言う事なんだよ。


一時期、俺は魔法での空間固定で足の下の部分を空間で繋げて繋げて固定して、そのまま移動して酔うのを防いでいたわけだが魔族の方が少数のこっちの世界で成功させる自信が無い。

……もっと単純に言えば魔法を長い間使ってなかったから成功できないだろ、と。


俺は特殊な何かみたいだし、俺固体には支配権限を使え無いようだし。

魔力慣れはシステムじゃなくて本人の問題だからなぁ……どうしようか。


と言う訳で、酔い覚悟での船。

文字読んでるだけで吐きそうなんだが、その新たなる闇ってのが気になる。


狂いそうな頭を使って考えるが、何がどうなのか整理できない。

結局諦めて目を瞑る事にする。


大きな船なのだが、ここが船の中だと想像するだけで吐き気がする。

何て言うか、陸地が恋しいんだな……うん。


……さっきから喋らないように口に手を当てているが、何だかな。そんなことで防げるアレじゃないってことだ。


ベッドの上から飛び上がり洗面場を目指す。

何か酸っぱい液体が喉の辺を通過しているが、まだ我慢だ。


洗面場を探すが……無い! そういや、大浴場が一つあって男子、女子にわかれているところしか洗面場は無かったんだ。

この部屋にあるのは……トイレだ!


そこまで考え、トイレへ走りこむ。

口の中まで迫る物を中へと吐き出す。


喉が焼けるように痛い……そういや口渇いたな―――そんな事を考える余裕なんてないはずだが、何故か考えてしまう。

自然に現実逃避してるよ俺。


口元を拭うと水を流す。水洗式トイレは俺達に必須なのでとりあえず構造を真似て作ってこっちに持ってきた。

瞬く間に広まったそれだが、今では発祥の地がレティナに……俺達の存在は大きな影に隠れてしまった。

まぁ、それでも良いんだが職人がみんな向こうに行ってしまうため高い。この船は全部の国の王様から王女様まで乗っているから何かすごいのだ。

とりあえず、俺の口から言えるのはここまで。もう一度寝ようかとベットにダイブするが中々眠れない。


「……アレだ。汗掻いた、風呂に行こう」


しかし、ここからは遠いのでやっぱりやめよう。

そんなのらりくらりとした思考をしつつ、眠りにつけるかなぁ、とか考えたが全然眠れない。

いや、むしろ目が覚めてきた。そして、腹の中がキュルキュル鳴り捲ってる。もう中身は無いんだぞ! さっき吐いただろ!!


「……はぁ、風呂に行こうか」


さっきも言ったが現時間は、夕方だ。時計は生憎とこっちに持ってきてない。

窓の外の風景で判断するだけなのだが、とりあえず正確だろう。

風呂に入るため、タオルと着替えを持って部屋の外に出る。


「……そうか、夕食」


目の前に広がる人の並みに一瞬驚いたが、すぐにわけを理解する。

ただ俺は食べる気になれないので風呂に行こうと思考を切り替える。


長い道のりを歩いてたどり着いたそこは貸切の大浴場。

はは、良いこともあるなぁ。とか思って服を脱いでいると隣にのしっと巨漢の男が現れる。

着ている服から貴族だとはわかるが、何処の国の貴族だろう……。こういう風呂に慣れてないんだろうな。


だから、早く来たんだ。そこまで考え自分の冷静さに驚く。

……酔うと体力が落ちるが知力があがる。何だ果てしなくヘンなキャラだぞ俺。


はぁ、と溜息を付いて風呂へ入ろうとした瞬間、俺の肩をガシッと掴む巨漢。


『オイ、お前。貴族様に先を譲ろうと言う気持ちは無いのか? 一般兵如きが』


……あぁ、そういう人でしたかあなたは。


そこまで考え、俺の周りは優しい人ばかりだなぁ、と思う。

自分の考えを人に簡単に伝えられる奴ばかりだ。


……とりあえず面倒なので殴り飛ばそうかと考えた時に目の入る男の勲章。


……思わずコイツの言う通りに先を譲ろうかと考えてしまうほどのスモールだ。

ただ譲らないけど。


そのスモールを俺は蹴り上げ肩を自由にすると、面白いほどのた打ち回る貴族様の顔面を足で踏みつける。


「とりあえず、ゴメンなさいね」

『ぬ、ぬがァッ!!』


腰に手を当てる貴族。残念ながらあなたの得物の剣はもう無いですよ。

だってココはお風呂ですから。


「裸で気絶させてほしいか? それとも、一緒に風呂に入るか。どっちがいいかなんて明白だろ?」


俺にしては優しい提案だな。静かな温泉が―――おぉ……何だこの体の内側から流れ出てくる物は……ッ! まさか―――


残念ながら俺の体は間に合わなかった。

目の前には胃液ベットベトの貴族様。ははは、まだ残ってたのか。


『き、キサマァ。私をベレテナ軍事補佐を知っての狼藉かァッ!!』

「一つ言おう。そんな役職の一つに意味はあるのか? それは見せびらかし他人を服従させる為の権限なのか? 違うだろう。強い奴ほど勘違いは激しい。それは政治とか絡んでくるといっそうだ。理解した、と思っていてもそれは自分の中だけだ。周りが納得してない中、強いから、偉いから、天才だから、んなものは関係ねぇよな」

『な、何を言っているんだ。キサマはすぐに打ち首に―――』

「ならねぇよ。俺は招待状持ちだからな」

『ッ、そんな嘘を付いたところで何になると言うのだ?』


……とりあえず、コイツ燃やそうか……。


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