第242話魔物討伐と犯人X
……久々に使ったな……。
久々に俺の部隊を動かしたな……そんな感動に近い何かひ浸っていると何処にでも居るような一般的な顔立ち、平均的な身長、平均的なバスト、平均的な―――何だか目線がするどくなったような……。
まぁ、平均的よりちょっと重くなった体重を気にしているアオルがこちらに来る。緑色の髪をしているくせに名前にアオが付くなんて変なヤツだ……とは思わない。
何か知らないが染めているらしいから。
「この洞窟の内部には推定二十から三十の魔物が居ると予想されます。かなり強い魔力もありますけど……大丈夫ですか?」
「上等だ。とりあえず、アオル。突っ込め」
「単独で!?」
「勿論だ」
最悪死ぬだけだ大丈夫!
泣きそうになっていたので、しょうがないとイリアを一緒に付いていかせる。
今回の任務は、魔王の命令に従わず、この影流の領を犯す悪い魔物を討伐する……と言うと聞こえは良いが、何か魔物が襲ってきそうだから討伐お願いします、と言うだけだ。
まぁ、構わないんだが国が動くことでも無いような……ギルドとかに頼めよ。主人公っぽい人が助けてくれるからさ。
そんな事を考えているとミゼル君が例の物を持ってくる。よしよし、今宵は宴じゃ。
「真昼間から豪華な食事だなァ隊長!」
「ククク、あの村の村長も気前が良いよなぁ」
ギルと怪しげな会話をしつつ、向こうの世界から持ってきたバーベキューセットを鏡の中から取り出す。
もはや驚きもしない隊員達は俺が火を付けるのを今か今かと待ち構えている。
「……いやぁ、イリアも残念だったよなぁ」
悲惨なのはアオルだけど。
と言う訳で、二人を気にせず火を付ける。
パチパチと炭が弾ける音が響くが、この洞窟付近には俺達しかいないのでサボっても大丈夫だ。
いやぁ、牧畜してる村が依頼主ってのはいいねぇ。
肉が焼けるのを今か今かと待ち構えていると、洞窟内部から咆哮が聞こえてくる。どうやら向こうは戦いが始まったらしい。
アオルは魔物との戦闘慣れしてないから、まぁそこら辺はイリアに任せると言う事で肉を見る。肉を。
「……隊長命令だ。最初に食うのは俺だ。いいな?」
頷く隊員達。さぁ、焼けろ肉よ!!
ジュゥジュゥと言う音も鈍くなり、そろそろ良い頃、洞窟内部から一陣の風が吹く。
その風により吹き飛ばされるバーベキューセット……勿論肉も―――
……時が止まった。あぁ、俺達の間の時が止まったさ。
そして、俺達の心は一つになった。
『コロス』
そう、何を殺すのかはわからないけれど、とりあえず殺す。
俺は背負っている剣を引き抜くと、抜刀の許可を全員に出す。
「……行くぞ。我が血肉となるべき同志を討った酬いを!!」
『オォッ!!』
「突撃ィッ!!」
俺が先頭に、洞窟内へと侵入する。
暗く、小さな炎を周囲に灯しあたりを明るくする。
ゴツゴツした岩肌から見るに、元々は倉庫として使用されて―――ごめんなさい、本当は村の村長に聞きました。そんな知識は残念ながら持ち合わせておりません。
まぁ、兎に角歩きやすい通路なのには間違えないので、急ぎ足で進んでいく。
途中魔物の死体や糞や血とか撒き散ってたりしたが、特に気にせず進む。
だいぶ奥まで進むと、二人の後姿が見える。
どうやら交戦状態らしいな。
火花が散る様子を見て思う。俺は剣を高い位置に構え突撃する。
二人に気を取られていた魔物らしき影は俺の存在に気づいていなかったらしく硬直する。
そこへ俺への大打撃を加え真っ二つ。もう死んだだろう。しかし、コレで済ませる俺じゃねぇんだよ!!
真っ二つになったうちの半分に蹴りを居れ洞窟の奥へと吹き飛ばす。
クハハハ、悪魔の鉄槌を喰らわしてやるよ。
鏡の中から槌を取り出すと、魔物の肉体へと一撃を加える。
三度ほど打撃を加えると、次は剣を握りなおしグサグサとひき肉へと変えていく。
「……なぁ、コレって食えると思う?」
部隊の奴等に聞く。が、誰一人答えてくれる人は居なかった……。
☆
「ホント悪魔よね、海弟って」
「外道と呼べ。外道と」
甚振るのが俺は好きなんだよ。
って言うかお前らだってあの死体に向かって魔法を連射しまくってたじゃねぇか。
「とりあえず、魔力からすると残りは一番奥に密集してるみたいだ、まぁそこに食い物とかが置いてあるんだから当然だろうな。んで、とりあえずここまでの死体を全部片付けろ」
「何する気?」
「勿論……決まってるだろ?」
「何をするって?」
「勿論なぶり……にするに決まってるだろ?」
「なぶりだけでわかってしまうのよねコレが……」
……まぁ、わかるなら何も言うなよジューネ。と言う訳で、剣を仕舞いカサロ君とジューネに死体処理を任せ俺とその他の部隊の皆は奥へと進んでいく。
いやぁ、久々の現場のにおいって感じだな。
うんうんと頷いていると、場違いにお菓子を食べているふぇーが小さな羽を羽ばたかせて目の前に現れる。
……久々に見た気がするぞ、って言うかふぇー俺がいつも向こうの世界と繋げてる手鏡通って自由に行き来してるから偶に俺も何処にいるかわかんないんだよな。
「んー、ふふぁひぅ」
……お菓子咥えてるからなんて言ってるのかわかんねぇ。
しかし、ふぇーは満足したのか腰に括りつけてある俺の手鏡から向こうの世界へと去っていくふぇー。
……結局何が言いたかったんだろう……。
何もわからないまま、とりあえずこの洞窟内にいる魔物の討伐に戻ろうと後ろを振り向くと―――ん?
……穴が空いてました。
え、えぇと、皆さんその穴の中に吸い込まれた……とか言う面白い展開に?
……ば、馬鹿な!!
穴を覗く。……深そうだな。
……ていうか無音で? 落ちてった?
……魔法でも使わなきゃそんなの無理だろ。
残念ながら俺はこの世界を完全に支配したと言っても、そういう情報の類は全然持って無いんだよな。
改めて実感する不便さ。
……まずは……ジューネとカサロと落ち合うかな。
穴の横を通って外を目指す。
……俺に気づかれず部下を攫うとか……良い度胸してるじゃねぇか!!
殺してやるよ。
……海弟の部隊の隊員の名前全て言える人!
はい、いませんね。わかってます。
しかし、兎桜はそれほど親切ではないので、名前だけ載せることにします。
説明文なんて書かないよ?
まずは、
風詠海弟
ヘレン・サティル
レンス
ジューネ
カサロ・ジュジュノ
ギル・メトス
アオル・カーベル
アストロ・ミゼル
イリア・ツール
はい、この9人です。
思い出した? って言うか、作者が忘れてる可能性があるんですが……。