第235話怨念
さすがにご都合主義が過ぎたか……反省してます。
家の前に人が集合……シュールだ。って言うか、こいつ等この町の人間じゃないな?
……と言うことは、他の……何で実験最中の町に普通の奴が入ってきてるんだよ。
そこまで考え、ふと気づく。
「もしも、世界側が許可してきているのなら警察に言っても意味無いじゃん」
……飢え死にするよ。
あぁ、俺はここで死ぬのか……。
飢え死にとか現代でもありえるんだね……うん。
……というか、クローゼットの中に入ってる意味あるの?
一旦、クローゼットから出て窓と言う窓のカーテンを閉める。
そして、キッチンにて会議。リビングはアレなので使えない。
「……えぇと、この件はおれのせいだ。すまないな」
「え、あぇ? あ、あの、何が……」
「それがだな―――」
とりあえず適当に説明する。
「そ、それなら、わたしにも一因が―――」
「ここでま連れてきたってことがおれの後ろめたいことなんだ。アレについてはもう忘れよう……」
俺のメイド服姿とか……。
「そ、そうですか……」
沈黙が痛いぜ。
「あ、そうです。荷物が届いてたんでした」
「荷物?」
何でもいいから話題が欲しかったため、話をあわせてみる。
慌てつつ桜奈が玄関付近から持ってきたのは大きな箱。ただ、桜奈が持てるぐらいには軽いらしい。
「となると、食べ物か?」
「そうかもしれませんね」
誰が送って来るんだよ、とかもう聞かない。
「あの、開けていいですか?」
「うん」
ダンボールではない何か別の物質で包まれているようで、桜奈が蓋部分を円を描くように指を這わせると、宙に溶けるように消えていく。
その中から出てきたのは―――
「本?」
「ですね」
まぁ、軽いのは納得だ。しかし、何で本なんだ?
その時掛かってくる電話。
「……偶然とは思えないな」
電話を取る。
「もしもし?」
「やっと繋がった」
……爺さん?
『聞いておるか、海ちゃんや』
「今から殺しに行くから待ってろ」
『年寄りを苛めるでない』
明らかに先に手を出したのお前だろうが爺さん。
『それで、あの本は届いておるかな?』
「あの本って、お前のか? 送り返してやるから―――」
『まぁ待て』
……。
「何?」
『あの本、開いてみろ』
桜奈に指示して、本を持ってきてもらう。
一ページ目を開く。
「……白紙なんだが」
『最初はな』
最初は?
もう一度見てみる。すると、文字が浮かび上がっていた。
……え? 魔法の文書とかあの類のものですか?
『魔法の文書ではない。近いかもしれんが、しっかりとした科学だ。まぁ、理屈は簡単。魔力を持った者が触れると文字が消えるってだけじゃがな』
魔力を持った桜奈が持ってたから消えてたのか。
「……で、この本の処分方法は?」
『処分するな。三ページ目、それを開け』
三ページ目?
開いてみる。すると、煙が―――
「ちょ、何!? 桜奈、結界!」
火災報知機作動!!
いや、誤作動する!!
「あ、え、あ―――」
……うん、ゴメン。反応できないよね。
結果、びしょ濡れになる二人。外もなにやら騒がしくなってきたようだ。
うん、そりゃそうだよな。火災報知機が鳴ってるんだもん。
しかし結果はいい方向に転んでくれたようで、記者どもは逃げ出してくれたようで、コレで外に出ることが出来る。
「爺さんもたまにはいいことするな」
『そうじゃろ? 骨格を似せるのに大変だったのじゃ』
……ん? 骨格?
手の中に入っていた本を見る……そこには俺が……ん? 何で俺が?
『ビックリしたじゃろ』
「一緒に渡せよ」
黒髪黒目、オーケー俺だ。
男の大事なところは……うん、付いてる。
「それで、どうやって体を変えるんだ?」
『流体電子ゼンジ、つまり内部高圧力モーターの制御を受けている―――』
「あぁー、もっと簡単に」
『つまりはキス』
……コイツ、殺してやろうか……。
『なら、後々大変なことになるぞ?』
「……わかった。やればいいんだろ……」
後で許すまじ……。
俺は男の俺に……クッ、何かアレだな……気分が良くないな……。
……キス……。
☆
……う、やっちまったよ……。
目の前には倒れている女性。……やっぱり、アレだな。男のほうがしっくりくる。
「おい、今から殺しに行ってやるから待ってろよ」
『お、変わったようじゃな』
……何でこいつはこんなにお気楽なんだ……。
「とりあえず、この女のやつはどうすればいい?」
『数分すれば本になるよ』
……まぁ、本が一番怪しまれない形かもな。
……まだ煙晴れてないみたいだけど……うわ、桜奈になんて言えばいいんだろう……。
電話の向こうで笑い声が聞こえたような気がした。
海+弟=海弟
やっと、海弟が戻ってまいりましたよ。さて、女子版を楽しんでいた人も居るでしょうが、感想来なかったので早めに切り上げました。
とりあえず、女版の友達全員に海弟を出会わせたら―――