第234話『人気者は辛いぜ』by海弟
作者は見た (パート1)
疲れた脳を……。
手渡されたのは一本の棒状の物。未来的なデザインのそれは、使えなさそうだ。
「よし、捨てよう」
「待て待て。使い方の説明じゃ。お前の手に合うように作ったからそうなっただけじゃ」
……こんな形の銃が何処にあるんですか? はい、五文字以内で。
「ここにある」
……んまぁ、ギリギリOKだな。
説明を聞こうじゃないか。
「長さは約一メートル、普通の杖にしか見えないそれじゃが、魔力を通すと効力を発揮するのじゃ」
「ちょっと待ってください?」
「何故疑問系……、なんじゃ?」
「おれは魔力持ってませんが」
「だからこそのその剣じゃろうが」
ん? この剣?
「魔力永久保存用ミスリス剣。まぁ、魔剣とも呼ぶが、その真の能力は―――」
「斬った魔法の魔力を吸収して保存する、ってことか?」
「そういうことじゃ。だから、それと組み合わせればいい」
「……でも、相手が魔法を使ってこなかったら……」
「その剣は人も斬れる。……お前の技量しだいってわけじゃな」
そういうこと。なら、魔力を持っていない奴も同じ戦い方ってわけだな。
「そういうことじゃ」
「……それで、魔力を通すってどうやるんだよ」
「なぁに、ちょっと叫べばいいだけじゃ」
……イヤな予感がするんですが?
「愛を叫んでみたくはないか?」
「断じて断るッ!!」
「無理じゃな」
な、愛を叫ぶ?
阿呆か! 俺が愛なんて何で叫ばなきゃならんのだ。
って言うか、地味な復讐やめろ!!
「復讐? はて、なんのことじゃろうな? いや、偶然にもパスワードが『スキ』になってしまったんじゃが……」
「……大声で?」
「できればな」
……いやだ。
「で、でも一応もらってってやるか」
「ほほ、まあお前の為に作ったんじゃからな」
杖にも似た棒をもって研究所を出て行く。
そして、舞子が居ない公園の中へ。
「……誰も居ないな」
右左右、よし誰も居ないのを確認。
……せーの。
「…………」
やっぱ言えないぞコレ……。
何で敵の前で愛の告白なんてしなきゃいけないんだ……。
「……強くなるための試練が重過ぎる……」
誰か、誰か助けてよ!
俺を助けてくれよー。
……まぁいいか。
死ぬか生きるかだったら告白を取るだろ俺も。
杖に体重を掛けて杖のように歩きつつ、周囲を見回す。
……何で皆こっちを見てるんだ?
いや、杖に剣だしな……当然か。
ざわざわとしている道を歩きつつ、家に向かっていると、誰かに肩を叩かれる。
……こんなことするのは……佐奈か?
アイツも自分から外に出るようになったのか、偉いな。うん。
「ん? 何だよ佐―――」
……カメラ&リポーター。
……は?
『コレが今、噂になっている孤児メイドの海ちゃんです!!』
「え? あ、何?」
コレって何だよ。俺は物じゃないぞ!!
『孤児と言う重い枷を持ちながらも、必死に頑張るその姿が民衆に認められここまでの人気者に!』
ん? 何かはわからないが、とりあえず有名になったのか?
喜んでいいのかコレは。
『さて、海ちゃんに話を聞いて見ましょう』
まさかのアポなし!?
こ、コレが常識なのか? ノリで話させちゃおうってことなのか?
『海ちゃん? どうして海ちゃんはメイドさんになろうと思ったのかな?』
……考えろ。
「え、その……ここで言うんですか?」
『んー、ちょっと言えない内容かな?』
「えっと、おれ自身の決意なので……その恥ずかしいんです」
『面白いねー。おれ、だって。それはご主人様の趣味かな?』
……ここで暴れたら有名人になれるかな?
グッと堪えようか、まだ。
「そ、その、生まれつきの癖みたいなもので……」
『そうなんですか。はぇー、メイド仲間の皆は優しいですか?』
……まず思い浮かべたのがアレだからな。
名前聞いてなかったし……性格キツいし……。
「ま、まぁまぁです」
『そうですか。今からお店に向かうところですか?』
「きょ、今日は休もうと思うんですけど……」
『あら、毎日のご奉仕で疲れちゃったんですね?』
「は、はい。その、今日はこれで……」
『それでは、海ちゃんの家に―――』
奪取。
『あ、海ちゃん? 走っていっちゃいました。追うわよッ!!』
追うなよぉぉぉぉぉおお!
マンションの階段を上り、部屋に着くと鍵を閉める。よし、後は終われてないな。
「あ、あの、どうしたんですか? そんなに息が……」
「い、いや、はぁはぁ……、その不慮の事態ってやつだ」
「は、え、はぁ……」
階段を上る音が聞こえてくる。
クッ、見つかるのも時間の問題か……。いや、居留守だ、居留守を使おう。
「あ、そういえば、さっきこれが届いた―――」
「いやそんなものどうでもいい。って言うか、そんなでかい箱、何かに騙されただけだろ」
「え、でも送られて―――」
「いいから、隠れろゥ!!」
というわけで、廊下のクローゼットの中へ非難。
ピンポンピンポーンと、次々とこの階の部屋と言う部屋のインターホンを鳴らしていく記者共。
たぶん一階からこの方法を使ってきたんだろう。
『ココだッ!!』
どうやら目星が付いたらしい。
急に静かになる。
「あの、出てもいいんじゃないですか?」
「桜奈、一生のお願いだ、見てきてくれ」
「う、うん……」
クローゼットから出て玄関へと向かう桜奈。
「ひ、ぁ……うぅ……」
悲痛な叫び声的な何かが聞こえてくる。
何があったんだ桜奈!!
バタバタとクローゼットの中に侵入してくる桜奈。
「な、何があった?」
「その……いっぱいの大人の人がこの部屋の前で、あの、その……」
記者か! 記者がこの部屋の前に集まってたと言う事だな!
……まさか!!
『ピンポン→全ての部屋が出る→この部屋だけでない→この部屋に入るだろう→集合』
コレか!! コレなのか!!
クッ、一大事だな……。
……感想がいっこうに増えない件について。
今なら海弟のメイド姿が―――見られませんよ。絵、ヘボ太ですから(意味不明)。
……書くこと無いので次回予告でもしてみますか。
右を向いても左を向いても記者だらけ!
恐怖に怯える二人に対し容赦の無い攻撃!
しかし、そこへ舞い降りる海弟の外道策。
次回、愛を叫ぶ海弟!
見てくれよなッ!!
はい、嘘ですので。
生きるか死ぬかだったら告白する海弟なので、恐怖なだけじゃ告白なんてしませんよ。
行数も結構増えたのでそれではまた明日ー。