第231話心って意外と複雑
うーん、二話で解決って……。
俺って何だろう……。
そう考えるのは久しぶりだ。
最後はいつだっただろう……んなもん、忘れた。
ただ、言えること。それは、俺が今精神的に参った状態にあることだ。
これじゃあこの町のそこらじゅうに転がる孤児と変わらない。
「あぁ、クソッ」
なんとなぁく、叫びたい気分だ。暴れたい気分だ。
ははっ、俺って犯罪者予備軍……。
そういや、剣を置いてきちゃったな……。服もそのまんまだ……。
本当にイヤな人生だ。
歩いて、行き着いた先はあの公園。誰にも会いたくないはずなんだけどな……。
前に三角形にくっつけたはずのベンチの一つに座る。今では元の場所に戻っていた。
ちょうど、日陰になっている場所で涼しい。
…………。
「深く考えないようにって……無理だよなぁ」
答えを求めてしまう。
もしも、答えが俺を否定するものだったら……、悲しいな。
涙は出ない。それはこの体が生物として間違っているなのからか、それとも俺の精神が生物として間違っているからなのか……。
どちらにしても酷い話だ。俺がこの場に存在する理由なんて無いのにここに存在している。
理由なんて必要なのか? と言われたら、俺の場合必要だと答えてしまう。
……決め付けられる事に対しての反抗かもしれないけどな。
「あ、やっぱり。可愛いもの着てるじゃない。何してるの?」
この声、舞子か。
…………。
「え、あ、ちょっと!」
黙って抱き着く。涙が出てないのに、顔が歪んでしまう。
もう、自分でも意味がわからない。
「……えっとさ、女の子同士でそう言うのは……って、大丈夫? えぇと、何かあったの?」
「たぶん、大丈夫じゃないと思う。わけわかんないし」
顔が火照ってる。熱い。でも、離れたくない。
……どうしようか……、俺は舞子を頼っていいのか?
……わからない……、いや違う。恥ずかしい。自分のことを晒すのが恥ずかしいんだ。
恥ずかしさすら理解できるのに、話すことが出来ない。
……もう、いっそのこと吹っ切れてみようか……、全部話して……イヤ、全部は無理か。
けど、今は話せないな。思考が先に進みすぎてて、体と現状が付いて行ってない。全てが予想でしか無い状態。
いつもの俺なら、無理矢理にでもその思考を実行に移すんだが……今じゃ無理だろうな……。
「あのさ、言ってみなよ。言うだけで楽になると思うよ?」
……言うまでにかなりの勇気が必要だろうが!! ……とは言えない状態だな。
楽になれる、ってわかってても言えるほど俺は主人公やれてないよな。
……言うならば、駄々(だだ)を捏ねる子供。
親を動かせるけど自分を制御できない。そんな感じだな。
もう疲れた。体中の力が抜けていく感覚だ。
「……面倒だなオイ。まぁ、座れよ。服が汚れる」
……あぁ、それも……いや、涙も鼻水も出してないんだが……。
「あれ、綺麗だ。……まぁいいや。とりあえず、元気出せとしか言えないな。時間はいくらでもあるんだ」
「無理……だって」
「ただの反発だったら、これ以上何も言わなくていいぞ。余計に話をややこしくするだけだ。オマエは話を聞くだけでいい。だから、あたしの話を聞け」
……無理矢理だな。
「はい、まずは顔あげる」
話を聞くだけで良いって言った直後に命令が来ましたが……。
無理矢理俺の顔をあげさせる舞子。首が捥げ……。
「えぇと、あたしも人とこんな話するの始めてだから、雑になっちゃうと思うけど、とりあえず聞いて」
……舞子も恥ずかしいんだろうな。なら、やめとけばいいのに。
「人ってさ、何でもできるんだって。思ってた頃があたしにもあったんだよ」
……俺には無かったな。
「でも、目の前で家族が死んで、無力さに気づいて……、この町に連れてこられて。必死で頭使って、今できること、自分の存在意義を探して。それの繰り返しをあたしはやってた」
……強いんだな。俺が、炎夏を失ったとき、忘れようと必死になってたな。
今思うと、失礼なことだ。
「もう、見つからなくなった時、胸が苦しくなった。酷い頭痛もした。吐き気も。何でここに居るんだろう、って思った。意味がわからなくなって、さすがに自殺しようとまでは思わなかった、と言うか実行できなかったけど、たまにボーッとしてた」
思考放棄、頭が痛いときとか良くあるな。辛い時とかも……。
本当にイヤなことが無いと俺はしないようにしてる。でも、意識的じゃないときに、なってるかもしれないな……。
「でもさ。一度諦めたらさ『周りと一緒』って感覚が芽生えたんだよ。何を諦めたのか、それさえも自分ではわからないけど、周りと一緒なんだって。流れに背いて飛ぶよりも、流れに乗って飛んだほうが、楽なんだよ。あたしは、自分の歩く方向すら、わかってなかったのかって。笑えてきてさ」
本当に、他人に聞かせるような話じゃないな。
悲しくも無く、楽しくも無く、ただ言葉を喋っているだけの、ただの文の纏まりだ。
道路標識のような、ちっぽけなものだ。
でも、道路標識でも、見た奴の気持ちにちっぽけな変化を与える事が出来る。
俺の今の状態もそうなんだろう。
存在意義なんていらねぇ、何てカッコいいことは俺には言えない。
けど、結果と経過、どちらを目指すかによって存在なんてものは変わると思う。
経過に楽しみたい奴は楽しめばいい。結果は誰しも訪れる。
人を裏切らないのは『死』だ。存在し、燃え尽きた後。やっと休める時が来る。
存在意義があるから存在するんじゃない。存在するから存在意義が生まれるんだ。
つまり、俺が何かを成し遂げる度に俺の存在意義の重要度は高まっていくと言う事。
そうだ、存在意義なんて自分が自分に対して使う言葉じゃない。他人の評価だ。
他人が必要とする時、存在意義が生まれる。人間も同じ。俺だって同じだ。
必要とされたから、存在意義が生まれた。俺が生まれた。
それだけの話だ。
それをネチネチと考えて。何かもう、馬鹿みたいだ。
本当に、笑えてくるな、コレ。
……俺が一度弱くならなきゃ見つからなかった物だ。
なら、次は強くなってやろう。存在意義の厚みを厚くしていく作業だ。
人より優れてなくていいから、人に求められる者へ。
「ヨシッ、何か吹っ切れたぞ!!」
「元気出したみたいだな。ッてわけで、はい」
右手を出す舞子。
ん? 何ですかこの手は。
「助け賃」
「……ツケで」
「オーケー、一秒ずつ利息、五万円が発生していきますのでご注意くださいね♪ って訳で、早速借金の取立てでもやってみようか」
……え?
嘘でしょ?
いや、目がマジだー!!
いや、実質二話じゃないか。一話とちょっと、ってぐらいか。
安っぽい漫画でも五話ぐらいは使うと思うんだけど……通用しない兎桜クオリティ。
そして、昨日言うの忘れましたが、小説家に(略)のID無しで感想書き込めるようになったそうです。
白黒も誰でも書き込めるようにしておいたので、今まで書き込めなかった人もドンドン書き込んでください。
ちなみに、今後の展開(読者の妄想)を暴露してくれると、それを裏切る形で物語が進んでいきます。