第228話鞘と剣と足と
歌いながら読んでください。
一日目的な何かが終わった。正確には二日目か。
今日は学校が休みらしく桜奈が家にずっと居る。
なので、この町の事をよく聞いてみようと思う。
が、しかし。
俺の前に現れる邪魔者。
ちょい、邪魔ですよアナタ。
「それでねー、あのおっさんが助けてくれたんだよ。やっぱ、魔法ってすごいね。学ぶ気にはならないけど」
昨日の話をしている佐奈。それを聞く桜奈は、その話よりも外に出たことに驚いている模様。
まぁ、室内暮らしの不健康娘がいきなり外での出来事を話したら驚くわな。
そして、視線は自然と俺へ。
えぇ、勿論俺が連れ出しました。
って言うか、喋らせろ。俺の話を聞いてくれ。
「あぁ、おれが連れ出した。って言うか、その話はもういいだろ。おれもこの町に着たばかりだからさ、色々教えてくれないかな?」
今まで、異世界に言った時の感じで探ってたけど、先に同じような状態でこの町に来た奴が居るならそいつに聞いたほうがいい。
「そーいや、そうだったね。では、私が説明しますよー」
物凄く不安だ。チラリと桜奈を見る。頷いてくれたところを見ると、補足説明をしてくれるだろう。
「この町はー、んーまぁ孤児ばかりが居るってのはわかるよねー?」
「まぁな」
「これは別に政府がやってるわけじゃなくて、もっとでっかい、世界ね。世界レベルの研究なんだよねー」
……研究?
何だそれ? あの爺さんも関わってるのか……?
「あ、えと、孤児が、親を無くして次に頼るものは何か……その実験。完全に実験用のモルモットなんだよ。ただ、皆頼るものがバラバラで向こうもまだ結論が出せてないみたい。でも、成果は上がってるらしいよ。魔法も龍もこの町で生まれたから」
「独創性ってやつか?」
「んー、微妙に違うかも。ただ単に想像力が高いってだけだからねー。んな芸術を求めるような真似をここの人はしないよー」
視野が広いってことか。
となると、孤児の実験をしていなかったあの爺さんは別の実験、つまり孤児の部類に入るわけか。
……あるといいな、上界ってヤツが。
「そういや、何でこんな実験に世界は費用を出してんだ?」
土地まで用意して。いや、日本が適しているのはわかるな。
基本的に義理や人情に厚い人が多いから。孤児が頼れる人間が多い。まぁ、悪い奴は極端に悪いが。
……待て、と言うかここは日本であってるのか?
いや、向こうで日本があったからってこっちに日本があるとは限らないだろう。
まぁ、それは保留として。
「その、この実験は、戦争が多いこの世界でですね、有効なものと考えられているんですよ。少しでも罪悪感が消えるように、と」
「それじゃあ、お前等の両親は戦争で?」
……何か、今軽いノリで聞いたがかなりイケナイ事だったような気がする。
「違う違う。この国は平和主義、そして無駄に阿呆な国。男女平等なんて言ってるけーど、何処に平等性があるのか聞きたいわねー」
それは、俺の世界でも同じだな。男女の仲を政府が介入する事事態がおかしいと思うぞ。
「あ、話戻すよー。この町には犯罪者が少数、そのわけは、罪の重さを知っているからー。人が死ぬって、家族がいなくなるって、辛いでしょー?」
……ここに住んでるのは孤児ばかりだけどな、と突っ込みそうになった俺を誰か殺してくれ。
「人と人との繋がりが希薄なんだよねー、この町。私と桜奈ちゃんみたいなのは稀すぎるのよねー」
「あ、えと、そうみたいですね。あ、でも、海さんの方が稀少だと思うんですが……」
……必死に人との繋がりを求めていた俺を馬鹿だと言いたいのか?
いいだろう、相手になってやろう。
俺が正しい事を証明してやろう。
「お前もわかるだろ? 人と居た方が、楽しいって」
……それに、怨みもぶつけられるし、八つ当たりも出来るし、不幸な事があっても二人で分けられるし、悲しい事があったら何か理由つけて殴れるし。
本当に友達っていいぞ。
「そうかなー? 一人で居た方がまた悲しみを背負わなくていいから楽だよー?」
まぁ、そういう考え方もあるんだよな。
しかし、俺と出会ってしまったあなたはもはや逃げられません。全ては神ではなく俺の手の中なのです。
そう、握りつぶすのも俺の自由、投げるのも俺の自由、息を吹きかけるのも俺の自由。
自由って素晴らしいのです。
「あの、お姉さん?」
トリップ終了。海さんからお姉さんに変わったことがショック!
まぁ、そんな感じでシリアスを抜け一般的な雑談へと変わっていく俺達。
日常の素晴らしさとかいらないから、平穏を俺にくれと言う主人公の気持ちがわかったりわからなかったり、しかし一つ言いたい。
美少女を友達に持ちながら平穏を望むなど無理だ。諦めろ。俺に従え。
ん? 最後の意味不明?
知りませんな。
「そういや、海お姉様ぁんは―――」
「一回死んできて佐奈」
さまぁんじゃねぇ!!
「はいはい、海は学校とか行かなくてOKなのぉん?」
「それ気に入ったの? って言うか、おれが学校?」
無いな。こっちの世界の友達なんてすぐ作れる。しかも、学校に行ってもテンションを低くする方法しか学べそうにないからやめとく。
「あ、そうだ、最後に聞きたいんだけど」
「最後?」
「これ以上、聞くことも無いって思ってね。で、最後に聞きたいんだけどさ、剣道とかで使う防具とか売ってる場所知ってる? 剣を仕舞う袋みたいなの買いたいんだけど」
「え、あ、それなら、お母さんの使っていたのがありますよ。鞘だけなのなら、これを使ってください」
何と言うご都合主義。
ん? 待てよ。
「それって、形見……じゃないの?」
「そうですけど、私じゃ使えませんし」
「何か感動シーンですしー」
佐奈五月蠅い。黙ってろ。
まぁ、俺ですのでありがたくもらっておきます。
んー、鞘が少し大きいか……、まぁ入れる分には困らないな。
「ありがとう。さて、少し町を見て回るかな」
二人を見る。
明らかに佐奈が恨めしそうな目で見てくる。足擦ってるし。
でもダメです。お母さんは許しません。
と言うわけで、三人で外出決定。
行き先未定の未知なる散歩です。
本当に歌いながら読みましたか?
いや、そんなわけ無いですよね(笑)。(歌った人ゴメンなさい)
特に書くこと無いのでさいならッ!!