第226話名前募集中
アレです。サブタイに(略)。
痛い……。
「テメェ、バカじゃねぇの? って言うか、捨てんな」
「友達割引で」
「いつ友達に……、ま、まぁ、そういうことなら」
いいのかよ!!
突っ込むのもそこそこに、隣に居るコイツの引継ぎを行う。
いや、そんな簡単なものじゃない。
……そう、それは逃亡。
俺は、隣の少女を見る。ふっ、俺の行動に気づいてないな。
「……奪取!!」
スタコラサッサと逃げていく俺。残された大人な女性一名、気ダルそうな女性一名。
そして、両者は目を合わせ、頷くと……俺を追いかけて―――追いかけてくるな。
「鬼だぁぁぁ!! 鬼がここに居るぅぅぅぅうううう!!」
「テメェ、死ぬか? いや、死ね。今すぐ死ね」
「友達割引で」
「そうか、友達……、割り引いて半殺しで許してやる」
そっちの方が辛い!!
「逃げんなー」
「何で、お前そんなに速いの!?」
「決まってるでしょー。日夜努力してるんですよー」
……家でゴロゴロしてるだけだろ?
「ストップ、話をしよう」
「まずは半殺しからか」
「違います。はい、じゃあそこに座って。うん、この椅子ね」
ベンチを三つ引っ張ってきて言う。
……重いんだぞ?
それを、三角形にくっつけ三人だけの空間が完成。
「ふぅ、まずはおれの言い分を言わせてくれ」
「言う前に逃げたヤツの言葉かそれ」
……外道補正ってことで。
「おれはな、こいつに外に出てもらいたかったんだ。だから、何か遊ぶところ知ってそうなお前に託そうと―――」
「帰っていいですかー?」
「ん? つまり、コイツを連れて遊びに行けばいいのか? ……恥ずかしいな」
……普通だったら、突っ込むところだがここは共感かな。
俺も許婚(?)の炎夏が居なくなった時、誰と遊んでても恥ずかしいとかつまらないとか思ってたから。
一人の方が気が楽だったな。
……吹っ切れればどっちでもよくなったけど。
「それじゃあ、三人で行こう。遊びに行こう。今すぐ行こうっ!」
「ど、何処に?」
俺がこの町のこと知るわけ無いだろ?
「おれは来たばっかだから、二人案内してよ。そこで遊ぼうよ」
「……この町に複数人で遊べる場所なんて少ないと思うんだが」
「公園とかは?」
「ここを見てわからんか? 遊具が無いだろ」
……何故、遊具に行くんだオイ!
「こう、喋ってたりするのも遊んでるって言わない?」
「帰っていいですかー?」
「言う……かもな」
「ねぇねぇ、帰ってもいいですかー? 皆なんで無視するの? ねぇ」
……こう、他人と普通の会話するの久しぶりだな。
何か新鮮だ。戦争ーとか、政治ーとか、異世界ーとか……。
ん? ここも一応異世界と言う事でいいのか? まぁ、ファンタジーだからな。……何がとは言わないが。
「そういえば、二人って魔法使えるの?」
「私は学校行ってないし使えないよー。で、帰っていい?」
「あたしは、一応使えるが……身体強化ぐらいだな」
……あの炎は何だったんだよじゃあ。
とりあえず、聞いてみるか。
「じゃあ、あの炎は何なんだよ」
「……強化の応用……かな」
……何だそれ?
「身体強化、と言うより、あたしの能力は部分強化。つまり魔力で部分的に体を強化するわけだが、それを空気に使うとどうなるかわかるか?」
「空気に?」
……いや、意味のない行動だろうが。
「意味はあるんだよ。強化による、振動。つまり、一昔前の電子レンジみたいなものか」
……一昔前、俺の世界の科学力ぐらいの頃かな。
まぁ、その電子レンジの応用がそれか。
「そうする事で、空気の温度を上げることが出来る。すると、自然に湿度が下がっていき炎が燃えやすい状態になる。それにちょっと魔力でショックを与えてやれば炎が出来て、魔力で固定しつつ投げつける。そんな感じだ」
……部分強化すげー。
ナニソレ、食い物? 泥団子だよ? ってぐらいすげー。
「優秀だなぁ」
「ほ、褒めるなよ。これぐらい普通だ」
普通なの?
……ほら、魔法使えないこの気ダル少女が睨んでるよ。
「帰らせろ」
あ、そっち。
「そういや、二人。名前は?」
「な、名前。自己紹介など、あまりしたことが無いから……、まぁいいか。あたしは、田立舞子。……呼び方は何でもいいから」
「そう? なら、”マイたん”でどうー?」
「テメェ、殺すぞ」
……殺気vs眠気、すごい戦いだ。
「……ったく、お前は?」
「私? 私は、偽名出素夜でいいです」
……コイツふざけてるだろ?
いや、コレが名前だったら悲しすぎる。
「…………」
「無言の圧力がー。えぇと、大根と書いて大根と言います。すいませんすいませんすいません、嘘ですゴメンなさい。本名言いますから許して」
……何? この二人の立場は下克上さえも無効として定着してしまったの?
「……兎神佐奈です。すいません、私は生きていけません。すいません」
……強者に媚びるヤツより質悪いぞコイツ。
と言うわけで、最後に俺なんだが……。
そのままで良いのか、良くないのか……どっちなんだろ。
別にここで偽名でもバレ無い気がするんだが……、極端でなければ。
……そのままでいいか。
「おれは、風詠―――」
ん? 待て。海弟って思いっきり男の名前じゃないか?
ちょっと忘れてたけど、今は女。女の名前を考えなくては……。
母さんの名前……わからないな。どうしよ。
母さん=勇者って、ナニソレーな方程式があるから意味不明な理解により―――俺は何を考えてるかすらわからなくなってきた。
「風詠……」
風詠……考えろ。女の名前。
……ん? 待てよ?
「風詠海です。呼び方はどうぞお勝手に」
……海弟から、弟を取り海だけにする。
するとどうだろう。女っぽい名前にならない?
……そうか、ギリギリか。まぁ、海弟って名乗るよりマシだろ。
桜奈、舞子、佐奈、海。
奈が二つ。並べると何か気になる。
まぁ、こんな小さな接点があったからこそ、桜奈は佐奈と仲良くなって部屋を行き来する関係になってたりするんですがー。
ってな訳で、そろそろバトルを書かないと作者の不満が爆発するので(自己満足なのです)書きます。