第224話友達は三十秒で―――
海弟が友達を増やしていきます。
腹が減っているのに……頭がガンガンする。
そうか、免疫力が下がって―――
この体って、人間じゃないんだよね?
と言う感じに、雑念を雑念で潰しながら、一緒にゴミを潰して三十分。
いやぁ、生き残ったのは俺とあの人だけか。
「い、一応、助かった。これで休めるな」
「暴れるのが仕事なんて……、貴方の体、大丈夫ですか? 毎日、こんなことやってるんでしょう?」
「慣れだよ、慣れ」
……この人、悩みなさそうだな……。
何か、羨ましい。
こっちの世界に来てからというもの……女という体に悩まされっぱなしだ。
いつもの調子が出ない……。
「それじゃ、あたしは次があるから」
そう言って、去っていくあの人。
最後まであの人はあの人だったな。名前ぐらい聞いてもよかったかも知れないな。
その時、鳴る俺の腹の音。
「……腹減った……」
頭も痛いし……、何か甘い物……。
甘い物!
「……ん? そういえば……」
屋台とか、全く見当たらないな、この公園。
結構広い公園だし、こんな科学の発達した世界だ。一つぐらいあってもいいはず何だけど……。
そういや、ファミレスとかも見当たらない。
外食って文化が消えたのか?
いや、それは無いだろ。
って言うか、もっと盛んになっていたほうが正しいはずだ。
人々が自炊をしなくなるほどに、それぐらい盛んになっていても……。
「そういや、俺が攻撃してきても反撃する奴、居なかったな」
極力、関わりたくないという感じだった。
「一人が好きなのか?」
……なら、ここは孤児の町なんかじゃねぇ。孤独の町だ。
人と馴れ合う事を拒絶する奴等が住む町。
ほんの少しの勇気も持たない奴が住む町だ。
いや、勇気を持っている奴はいるかも知れない。けど、周りが動かない。
「んじゃあ、おれが特大の勇気を分けてやるか」
ふふふ、それで一躍有名人。
最高の計画じゃないか。
「よっしゃー、まずは人の集まりそうな……―――」
……何処にこの町の人は集まるんだ?
☆
思考時間三十秒。移動時間、五分。
俺は、本屋に来てました。
「このまち唯一の本屋、でかいんだよなー、ここ」
本は人の心を安らかにする?
はっは、迷信迷信。
本は人の独創性しか高めてくれないよ。考え方の幅を広げるためのものさ。
「さて、やはりここで正解だったか」
たくさんの人が溢れているが、物静かで、足音すら聞こえる。
……ここで叫んだら……面白そうだな。
まぁ、これは後のお楽しみとして。
「よしっ、知り合いから友達まで、合計百人作ってやる」
まずは、目の前に居る……パジャマ(?)のお姉さんからだ。
って言うか、人との繋がり、これじゃあ出来ないよな。
「こんにちわー、その、少し話しませんか?」
「…………」
……無言で去っていく、お姉さん。
何か、悲しいな……。
「……次いこ……」
☆
ダメだ。さすがに俺の元気ももう持たないよ……。
桜奈みたいなのは少ないのか?
……外道的な作戦をするだけの行動力も無いし。
えぇい、こうなったら作戦名『叫ぶ』の出番だ!!
「あーあー、皆さんこんにちわー!!」
店の人に迷惑?
知るか。
「友達ぼしゅーッ!! 誰か、はんのーしてぇぇぇぇぇーッ!!」
グォングォンと響く俺の声。
さすがに、こちらを見る人々。ふふふ、俺の作戦は成功したも同然だ。
「よし、反応した人、全員友達ねッ!!」
ポカーンとした空気が流れる。
しかし、構わない。
そう、もはやこの場に居る全員は俺の友達なのだから!!
警察が来たって問題ない。
友達に俺は声を掛けただけなのだから!!
クハハハ、やっぱこっちの方が俺には似合ってるな。
「物的証拠として、カメラがあるから逃げられはしないぞッ!!」
本屋に似合わないどよめきが起こる。
勿論、俺は後のことなんて知らないので適当なところで逃げる。
「さて、無事に友達百人を三十秒ほどで手に入れたおれなのだが……、まだまだ増やすぜ!!」
道行く人々に挨拶をしていく。
返してくれるのはやはり少数。しかも、反射的だから営業の人だろう。
「こんなんじゃダメだ。おれは内側からこの町を変えてやるー!!」
クハハハハ、さて夜までがんば―――
「あ、やっぱ家に帰ることにしよ……」
腹減った……。
……ん? 理屈なんてものは時と共に変わるんです。だから、気にしない気にしない。
ちなみに、作者は無理とか不可能とか言う言葉が好きです。その近くに居ればいっぱい負け犬を見れますから(外道!?)。
いきなりですが。
海弟ほど、マイペースな主人公居ないでしょうね。
負けるとわかったら逃げ、他力本願でぶっ潰し。
勝てるとわかったらとことん殴る。えぇ、魔法さえ使いません。
ん? 何が言いたいかって?
作者にも海弟の動きがコントロールできなくなってきたって事ですよ。
なので、この先何が起ころうと驚かないでくださいね。うん、そこんところ頼みます。




